静岡県田方郡函南町の熱海峠から伊豆市の天城高原まで、伊豆半島の内陸部にある高原を走る伊豆スカイライン。全長40.6kmには大小のカーブがリズムよく続き、富士山や駿河湾などを望むことができる。海と山を堪能できる絶景のコースを通って、伊豆市湯ヶ島にある登録文化財の温泉宿『おちあいろう』までクラウン(クロスオーバー)を走らせた、国内外で活躍する建築家の重松象平さん。久しぶりに日本の道を運転し、走りの実力を確かめられるワインディングロードでクラウンとともに豊かな時間を過ごす旅へと出かけた。今回重松さんが旅をともにしたクラウンは特別仕様車CROSSOVER RS “THE 70th”。クラウンの歴史において欠かすことのできない、日本の風景と響き合うバイトーンのボディカラーと、インテリアを華やかに彩った一台だ。

建築家 重松象平 Shohei SHIGEMATSU●1973年福岡県出身。1996年九州大学工学部建築学科卒業後オランダに渡り、1998年から国際的な設計事務所OMAに所属。2008年から同パートナーに就任する。主な作品にコーネル大学建築芸術学部新校舎(アメリカ)、ケベック国立美術館(カナダ)、ティファニーの五番街旗艦店(アメリカ)、天神ビジネスセンター(日本)、都立現代美術館「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展の空間デザイン(日本)、大阪万博フランス館内ルイ・ヴィトンの空間デザイン(日本)などがある。また、虎ノ門ヒルズステーションタワーで超高層ビルの新しい公共性を実現したほか、現在、江戸東京博物館における魅力向上空間デザインや、ルイ・ヴィトンの世界巡回展「ヴィジョナリー・ジャーニーズ」のセノグラフィーなどが進行中である。
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海と山が近接する日本らしい風景を感じながら、ワインディングを楽しむ

熱海峠の料金所を出発し、いくつかのカーブをクリアすると、伊豆スカイラインで最も道路標高が高い720mの玄岳の駐車場に到着する。
クラウン(クロスオーバー)から降り立った重松さんの前方には、美しくダイナミックな風景が展開する。右手彼方には相模灘のパノラマが広がり、その手前にはたった今走ってきた伊豆スカイラインのワインディングを望める。

「私が住んでいるアメリカは、都市部では格子状の道と高速道路(フリーウェイ)が複雑に共存していたり、郊外では、広大な平地で地平線の彼方まで一本の道が走っていたり、山間部や海岸沿いなどの大自然を縫うように走る道があったりと、多様です。この伊豆スカイラインは、海と山が隣接している地形を走る道なので、両方を同時にいろいろな角度から眺めることができて、とても日本らしい地形と風景を体験できる道だと思います」
そんな魅力が凝縮した絶景に、クラウン(クロスオーバー)のスタイリングが絶妙にマッチすると重松さんは語る。
「僕の記憶に残っているクラウンは、もっと四角く堅いイメージのクルマでした。政治家や社長などが公用車として、あるいはいろいろなクルマを乗りこなしてきた人や家族が最後に行きつく究極のクルマであるというイメージがありました。今回新しいクラウンを初めて実際に見て、若い世代にも幅広く選ばれるようなデザインになり、一元的な高級車としてのイメージから進化した印象です。例えば、ルーフからテールへのライン(Cピラー)が流麗でとても美しい。そして、ショルダーラインの後半が流線形になっているのも特徴的。こういう処理は新しいクラウンの現代的なイメージを的確に表現しているといえるでしょう。そして、それほど微細でこだわりのあるデザインなのにそれを敢えて前面に押し出していないところがある意味日本的であると思います」

70周年記念モデルのCROSSOVER RS “THE 70th”は、日本の風景と響き合う特別色プレシャスメタル×ブラックのバイトーンが特徴的だ。重松さんは建築家の立場から、そのボディカラーを評価する。
「日本の道は有機的でカーブが多く、風景が機微に変化するため、車体に当たる自然光の強さや角度も頻繁に変わります。また、四季によって風景が劇的に変化することは言うまでもありません。このバイトーンのボディカラーと巧妙で三次元的なディテールとが、そうした環境の変化を美しく写し込み、車体と風景が一体化しているのがいいですね」
重松さんは虎ノ門ヒルズステーションタワーの設計において、動線の鍵となるエスカレーターを一つの色に決めるのではなく、多色でさらにグラデーション加工されたガラスや金属を仕上げとして適用した。また、建物内の公共性の高いエリアにおいて鏡面性を持った素材を仕上げとして使うことで、まわりの風景や人を映り込ませて、空間の色合いや明るさが常に変化するようにした。クラウンと建築の空間に“変わりゆく風景を写し込ませる”という共通項があることを見てとったようだ。

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多様性が求められる時代に則したクラウン(クロスオーバー)

ひとしきり眺望を楽しんだ後、再びステアリングを握って中速コーナーと適度なアップダウンが続くワインディングを快走。「実は運転するのは久しぶりなんです」と話しながらも、クラウン(クロスオーバー)を軽快かつ滑らかに走らせていく。
「先ほどの玄岳の駐車場を出てから、コーナーをクリアするごとに、クルマが自分の身体に馴染んでいくのがわかり、ステアリングを切れば自分が思い描いたとおりのラインで曲がります。こうしてクルマと一体となってドライブできることは、都市と自然の両方で運転を楽しむことが必要な現代人にはとても重要な性能だと思います。また、運転する時間の意義として僕が認識していることの一つに、運転中はスマホをいじることはできないため、外部と遮断された状態であるということがあります。運転中はもちろん安全のため神経を研ぎ澄ませていますが、風景を最大限に取り入れ、好きな音楽を聴きながら、いろいろなことに思いを巡らせて、ある意味「無」になることができます。そうやって自分のことを見つめ直すことができる時間と空間は、多様な情報が飛び交い、なかなかゆっくりと自分と向き合う機会がない現代社会においてとても貴重なものです」
重松さんがドライブするクラウン(クロスオーバー)は、16代目クラウンの70周年記念モデルのCROSSOVER RS “THE 70th”。2.4Lターボ デュアルブーストハイブリッドシステムが発揮する余裕のパワーを、しなやかでスポーティなサスペンションが確実に路面へ伝達する。ドライバーの意のままの走りとともに、上質な乗り心地を実現している。

クラウン(クロスオーバー)のドライブに楽しさを実感し、「ワインディングだけじゃなく、街なかでも運転したいですね」とも語る。
実は、伊豆スカイラインは海と山だけでなく、熱海や修善寺などの街と自然を繋ぐ道でもある。そして、クラウン(クロスオーバー)は都市に似合うプレミアムセダンと、アウトドアにも適するSUVを文字どおりクロスオーバーさせたクルマ。つまり、重松さんが「街なかでも乗りたい」と感じたのは、まさしく的を射た感想と言える。

日本初の純国産車として誕生して以来、日本、そしてお客様の豊かな暮らしを想い、革新と挑戦を続けてきたクラウン。世界に誇る日本のクラウンとして16代目モデルが登場、全世界的にSUVが支持される昨今、より快適性を求めたり、さらに乗り方・楽しみ方の幅を広げたり…といったニーズに対応した結果が、このクラウン(クロスオーバー)。そして、2025年4月には70周年記念モデルが誕生した。

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トラディショナルとコンテンポラリーの調和が人を魅了する

伊豆スカイラインの亀石峠I.Cで降りたクラウン(クロスオーバー)は、山間を抜け、田畑や農村の間を走行。そして、大仁の市街地を通って到着したのは、明治7年創業、国の有形文化財に登録されている温泉宿『おちあいろう』だ。
杉の皮を約5000枚も使用した屋根の門をくぐると、瓦葺きの大屋根と色鮮やかな暖簾が迎えてくれる。玄関横にある水に濡れると蒼く変化する大きな石盤に始まり、黒柿や紫檀などの銘木奇木を用いた柱や梁など、すべてのディテールとその作りが訪れたゲストを魅了する。
「『おちあいろう』に入ったとたん快適に感じられるのは、クラウンの車内空間に通じるもの。人間は自分の領域が確立されており、それでいて外部とも適度に繋がっている状態に居ると、静粛性や快適性を感じられるのです。この『おちあいろう』のラウンジや客室とクラウンの車内空間は、それを見事に実現していると思います」

推定樹齢2000年の紫檀で作られた床柱が特徴的な「紫檀の間」。108畳の広さを誇る伝統的な和の空間は訪れる人を圧倒する。
手吹き円筒砲で作られた僅かに歪みがある窓ガラス、あるいは108畳の大広間にある推定樹齢2000年の紫檀で作られた床柱など、職人の卓越した伝統技術による装飾や細工に、重松さんは熱心に見入っていた。
「伝統的な日本の職人技はいつみても素晴らしいですね。客室の窓ガラスに見られるアーチ状の細工や宝石のようなステンドグラスの欄間には特に感銘を受けました。また、3階建ての貸切別邸 石楠花のリニューアルも注目に値します。歴史ある既存の柱や梁などの躯体や室内の主要な装飾はそのままにして、現代的な設備や素材をうまく調和させています。歴史と革新がバランスよく統合されているいい事例です。最近は特にごく一部のテクノロジー企業の影響もあってイノベーションというと短期間で起こるというイメージがありますが、僕はすべてがそんなに早い周期で起こらないし、起こってはいけないと思っています。この旅館のように、まず最初にとても質の高い建築がつくられ、その遺産をリスペクトしつつも各時代の社会のニーズやテクノロジーの進化などに伴って徐々に改善され、長い時間をかけてゆっくりとイノベーションが起きていく。そのような時間軸は、人間が環境と共生していくうえでとても大事な概念だと思いますし、クルマづくりも建築も最終的にはエンジニアリングなので、そのような共通の美徳をもっている気がします」

創業140年以上の『おちあいろう』も16代目のクラウンも、長く歴史を紡いでいるからこそイノベーション=革新が起こる。そして、どちらにも時代に合わせて常に進化していこうという姿勢=挑戦がある。その結果、トラディショナルとコンテンポラリーという、ともすると相反しがちな要素が調和し、傑作を生み出すのだ。

余裕のパワーとしなやかでスポーティな足回りのおかげで、クラウン(クロスオーバー)の走りはすこぶる快適。アップダウンの多い伊豆スカイラインも難なく走破する。
『おちあいろう』を出た重松さんは、棚田やわさび田の間を通る峠道を登り、再び伊豆スカイラインへ。ステアリングを握りながら、クラウン(クロスオーバー)のインプレッションを語る。
「先ほどクラウン(クロスオーバー)のデザインや走行性能を“日本車らしい”と表現しましたが、この“日本らしさ”の定義はデザインにおいては特に難しい。僕も設計する際に、『日本らしさとは?』と自問するときもありますが、日本人だからいわゆる日本的な建築を作る…という安易なことはしたくない。何よりも大事にしているのは、世界中で設計する際に、与えられた敷地、機能、気候など、そのプロジェクトの特殊性をなるべくたくさん抽出して、その場所にしかありえない、最適な建築をつくろうという姿勢です。そのような特殊性や文脈を大事にする姿勢と、計画に対する僕の視点、想い、感性、心遣いなど個人的な表現とが良い化学反応を起こし、その結果、時代性をもち、独自性の高い建築がうまれると思っています。それを僕らしい建築、あるいは日本人の建築家ならではの建築ととらえるかは最終的には社会が判断することだと思います。でももちろんそこでクラウンがもっているイメージのように、僕の建築を日本らしいと感じてもらえたら嬉しいですね」
クラウンも「日本人が頭と腕で作り上げた初の国産乗用車」だ。そして16代目にして“世界に誇る日本のクラウン”となった。現在のライフスタイルや風潮に適し、かつデザイン性・機能性に優れたクルマであることを重松さんの言葉が物語ってくれた旅となった。

トヨタ クラウン 特別仕様車
CROSSOVER RS “THE 70th”
https://toyota.jp/info/crowncrossover/special_70th/47 ROADS BY CROWN
クラウンの豊かな移動時間と日本の魅力を体感いただける、生誕70周年記念プロジェクト「47 ROADS BY CROWN」 特設サイト。世界で活躍するナビゲーターが道を駆け抜けて感じた日本の魅力や豊かな移動時間を疑似体験できる記事コンテンツを順次公開予定。