
国内外のアーティストがゴジラを多様な作品にて表現する『ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展』が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて開かれている。誰もが知るゴジラが、かつてないかたちにて登場する展覧会の見どころとは?
横尾忠則や福田美蘭が新たなゴジラの姿を提示

歪んだ鉄骨やコンクリートの破片などが散らばる、ゴジラによって潰滅した廃墟を思わせる空間を抜けると、目に飛び込んでくるのが横尾忠則の作品だ。ここでは過去に発表されたゴジラにまつわる16枚組の作品を再制作。しかも3点制作されたうち、1点を当時の正位置のままに、残り2点は配置を崩して構成するという、半ば破壊的行為によって新たなゴジラの姿を提示している。
一方、AI兵器による第三次世界大戦の危機を想定し、架空のゴジラの映画ポスターを絵画とともに手掛けた福田美蘭は、1954年の映画『ゴジラ』が持つ娯楽性の中の恐怖の物語を、現代のさまざまな問題と照らし合わせて表現している。当時のポスターを引用して手を加えつつ、実際に街に貼り出すことも意識してつくったという。
兵士と対決⁉ 小谷元彦の人型ゴジラとは

恐ろしい姿でありながら、クールでかっこよくさえ見える、小谷元彦の人型ゴジラが圧巻の光景をつくり上げている。自然災害や放射能エネルギーなどのテーマを抱えるゴジラは、小谷にとって「この国のかたち」と語るほど普遍的なモチーフ。ゴジラは近代の亡霊であるという自身のイメージから「戦争」や「霊的なもの」などをキーワードに、巨大な人のかたちをしたゴジラを制作している。
その人型ゴジラと対峙するのは、銃を構えたひとりの小さな兵士。しかし、よく見ると大きなパイプをくわえた米兵と旧日本兵が融合した姿として表されている。ゴジラという怪獣対人間ではなく、人間同士の戦い、つまり戦争を思わせる構図をジオラマ的につくっているのも面白い。---fadeinPager---
東宝映像美術とコラボ! ジオラマからスペシャルムービーまで

ゴジラ映画シリーズの魅力のひとつといえば特撮。そうした技術や建築セットに影響を受けたという東京ビルドは、東宝映像美術による実際の造形物とコラボし、経年劣化した建物などを再現した都市のミニチュアを公開している。雨風にさらされ、色褪せたビルの壁をはじめ、錆びついた階段など、極めてリアルなディテールには驚かされてしまう。
また東宝映画美術の手掛けたゴジラとアートの融合したジオラマや、歴代ゴジラの登場するスペシャルムービーも公開。ゴジラが暴れ回るシーンを目にしながら、それぞれ時代を象徴しつつ、脚本や監督などで異なる存在として描かれたゴジラの世界に入り込める。
アートを通して「ゴジラとは、なにか」に迫る

30代の若手から第1作ゴジラをリアルタイムで知っている世代など、28組のアーティストが絵画、写真、彫刻などを公開する本展。それに加えて、2023年から翌年にかけて渋谷PARCOにて行われた『GODZILLA THE ART by PARCO』での出品作の一部も展示し、映画を超えた多様な表現によるゴジラ像も見ることができる。
1954年の製作発表の際、「“ゲテもの映画界をまかり通る”原子怪物、東京に上陸」と、ゴシップ風に報じられたという『ゴジラ』。しかし近年も『シン・ゴジラ』や『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』がヒットするなど、時代を超えて多くの人々から愛され続けている。ゴジラの新たな魅力に迫る『ゴジラ・THE・アート展』にて、一人ひとりにとっての大切なゴジラ像を見つけたい。
『ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展』
開催期間:開催中〜2025年6月29日(日)
開催場所:森アーツセンターギャラリー
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 52F
開館時間:10時〜19時 ※金、土は20時まで
※入館は閉館30分前まで
入場料:一般 ¥2,200(月~金)、¥2,500(土、日、祝)
https://godzillatheart.com/exhibition