普段、見慣れた場所も1日を通して滞在してみると新たな発見がある。ここに紹介するのは東京の街に溶け込んだスタイルのあるホテル。街に根付いた歴史やカルチャーを旅人気分で体験することで、明日からの毎日がちょっと変わるかもしれない。
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歴史ある建築を活かした「K5」は、静けさと賑わいが共存
日本経済の礎であり、ビジネス街として発展してきた日本橋兜町・茅場町エリア。2020年に誕生したホテルK5は、意表をつく立地とスタイリッシュな空間で話題となった。開業5周年を迎えた今年、1階のカフェとレストラン、バーを一新し、街のハブとしての魅力を発信している。

関東大震災も耐え抜いた100年の歴史ある建物の躯体を活かしながら、スウェーデンの建築ユニット、クラーソン・コイヴィスト・ルーネが内装を担当した客室は、日本らしさをモダンに解釈したスタイリッシュな空間だ。全20の客室にテレビはなく、選び抜かれたレコードと書籍、プレーヤーが置かれている。最上階の4階は4.5mという天井高のハイシーリングフロアとなっており、シグネチャーのスイートではプライベートパーティやイベントの利用も可能だ。

時間の重みを感じる静謐な客室から一転、グリーンあふれる「CAFE DANCE」では開放的な空気が流れる。ここでは宿泊客や近隣のワーカーらが入り混じり、朝から夜まで思い思いに過ごしている。隣のレストラン「MARUYAMA」は日本各地の食や酒、器をキュレーションしたハイエンドな居酒屋といった趣で、日本の食文化の魅力を再発見できるだろう。一方、レセプション右手にあるバーは、かつてここが日本で最初に設立された第一国立銀行の別館だった頃、初代頭取の渋沢栄一が書斎として使っていた場所で、隠れ家のように落ち着ける。地下1階にはビアホールも擁し、多彩なスタイルでの楽しみ方が可能だ。


兜町地域の再開発の先陣を切ったK5だが、現在は周辺にお洒落なカフェやレストラン、ベーカリー、ブックラウンジなどが次々に登場し、新たな人の流れを生み出している。街全体をホテルの延長として楽しんでほしいとの思いから、公式サイトで予約の宿泊客には周囲の店舗で使えるチケットを配布。今後はカフェでのポップアップも意欲的に行う予定だ。週末にちょっと気分を変えてデジタルデトックスしたり、歴史あるエリアを散策したり、ライフスタイルに合わせて自由に使いこなしたい。
K5[東京・日本橋]
東京都中央区日本橋兜町3-5
TEL:03-5962-3485
http://k5-tokyo.com
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街の新しい魅力を発見する「オールデイプレイス渋谷」
渋谷の裏道に佇むオールデイプレイス渋谷。原宿や青山へ徒歩圏にあるこのホテルは、宿泊者とローカルがカルチャーを共有する場所だ。1階のカフェやクラフトビールバー、2階のレストランは1日中誰でも気軽に利用できるが、朝・昼・晩で雰囲気が変化するのが面白い。朝は出社前のワーカーや散歩に立ち寄った地元の人がコーヒーを買ったり、昼はつくりたてのチーズやピザを求めてレストランは活気を帯び、夕方から夜にかけては感度の高い人々がテラスで緩やかに集う。

ショップや飲食店のひしめく渋谷だが、ここに滞在すればいつも素通りしていた景色も違って見えるから不思議だ。ホテルではそんな街の魅力を再発見してもらいたいとの思いから、ローカルガイド『all streets』を発信。観光ガイドには載らない裏路地のお薦めスポットを冊子にして館内に配布したり、スタッフが口頭で案内してくれる。また、毎月第4日曜日の午前中には清掃活動に参加し、街のクリーンナップを実施。さらに館内で回収された不要な衣類を近隣の服飾専門学校とコラボレーションしてリサイクル販売するイベントも行うなど、エコな取り組みにも意欲的だ。

ポップアップスペースで不定期に行われるイベントも、渋谷ならではのユニークなコンテンツが人気。レコードと古着の専門店が出店したり、アーティストによる似顔絵のワークショップを行ったりと、渋谷ならではの思い出に残る体験を提供している。客室はコンパクトで機能的なタイプが中心だが、中にはプロジェクターを完備し、最大15名まで収容できるパーティスイートや、こだわりのスピーカーや書籍を備えたウィークエンドスイートなど、「渋谷のお洒落な友人の家に泊まりに来た」というコンセプトで楽しめる部屋もある。


旅の思い出は、街と人との出会いにある。オールデイプレイス渋谷はそんな思わぬ発見ができる場所。いつもの街で新しい出会いを求めてふらりと立ち寄りたい。
オールデイプレイス渋谷[東京・渋谷]
東京都渋谷区渋谷1-17-1
TEL: 03-6452-6830
www.uds-hotels.com/all-day-place
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地元カルチャーを体感できる「マスタードホテル下北沢」
下北沢の再開発に伴い、線路跡地に出現した「マスタードホテル下北沢」。下北沢駅から徒歩5分ほどの場所にある商業施設・リロードの最奥に位置する2階建てのホテルは、周囲の景観に溶け込む閑静な趣だ。テラスに常設された10台のレンタサイクルは稼働率が高く、近所の代々木公園までお花見に出かけたり、渋谷周辺をサイクリングするゲストも多いという。昼間は賑やかな街へ出かけ、夜は落ち着いた環境でステイしたいという旅慣れたゲストのリクエストを満たしてくれるホテルとして予約が絶えない。

地元の人の散歩コースにもなっている遊歩道に面したホテルエントランス。テラスやカフェでは宿泊客とローカル客が混じり合う。
独自のカルチャーが根付く下北沢にふさわしく、全客室にレコードプレーヤーが完備されており、レセプションで好きなレコードを選ぶことができる。客室は白を基調としたシンプルな内装。遠くへ出かけることなくリフレッシュするために訪れる都内在住のゲストもいる。

1階ロビーではレコードのアートワークをテーマにした展示を行ったり、ECサイトをメインにした家具ブランドのポップアップを行ったりと、独自のセンスが光るイベントも好評だ。昨年は「シモキタプレイリスト」と題し、街で働くローカルな人々がキュレーターとなり、下北沢のお薦めスポットと音楽のプレイリストを掛け合わせたメディアをローンチ。音楽を通じてさまざまなバックグラウンドを持つ人とつながる場を提供している。
新しくなった下北沢を発見しながら暮らすように過ごせるマスタードホテルは、街の仕掛け人として今後も目が離せない。


デッドストックの家具や小物に独自のグラフィックをあしらったHOME ECONOMICS EXPERIMENTのポップアップストア。
マスタードホテル下北沢[東京・下北沢]
東京都世田谷区北沢3-9-19
TEL:03-6407-9077
https://mustardhotel.com