デビュー以来、メイド・イン・USAを守り続けている「1300JP」シリーズ。アメリカが世界に誇るプレミアムスニーカーを生み出す自社工場には、いまも昔と変わらない手仕事がある。
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生産ディレクターが語る、45年にわたるクラフツマンシップ
ニューバランスの自社工場は、アメリカ・マサチューセッツ州のボストンから車で4時間ほど北上した位置にある、メイン州スコヘーゲンという田舎町にある。赤レンガ造りのクラシックな屋舎は1888年に建てられたもので、ニューバランスは1981年にこの建物を獲得し、以来国内の製造拠点のひとつとしてきた。
メイン州スコヘーゲンにあるニューバランスの自社工場は、一見アイビー・リーグの大学のような雰囲気。初代「1300JP」の発売当時から勤めている職人をはじめ、熟練の職人たちから若手が技術とノウハウを受け継いでいる。
矯正靴メーカーとして創業し、常にシューズのフィット性を追求してきたニューバランスでは、モデルに合わせてさまざまなラストを使い分けている。「1300JP」は幅広で安定感の高い「SL-2」を採用。
現在ニューバランスのスニーカーはアメリカ、イギリス、アジアの3カ所で生産されており、85年にランニングシューズのフラグシップモデルとして発売された「1300 JP」は、デビュー以来シリーズ8世代すべてがこのスコヘーゲンの工場で生産されている。
「靴づくりは職人技であり、また職人技は、決して靴づくりからなくなるものではありません。誰かが『1300JP』を履いているところを見ると、その靴に込められたクラフツマンシップに誇りを感じます」と語るのは、国内生産ディレクターのレイ・ウェントワース。この工場で45年にわたって蓄積されたクラフツマンシップは世代を超え、いまもものづくりの礎として受け継がれている。 レザーの型抜きから、ミシン縫製、ソールの接着など、製造工程の大部分がいまも手作業で行われているこの工場では、つくりかけのスニーカーが職人たちの手から手へと渡るたび、それぞれの熱い魂が込められていく。
「5年ごとにみんながワクワクするんです。なぜなら、また新たな『1300JP』をつくることがわかっているから」と語る、ニューバランスで40年以上のキャリアを持つ国内生産ディレクターのレイ・ウェントワース。
一足ずつ手で糊を塗り込むハンドセメント技法によってソールを接着した後、ていねいに接着部分の後処理を行うのも職人による手仕事。
左:スコヘーゲンの工場では、最先端のテクノロジーと、昔ながらの手仕事をバランスよく融合させることで、ていねいなものづくりと生産性の向上の両立を実現している。 右:仕上がりのチェックのためにシューレースを通された2025年版「1300JP」
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オリジナルを忠実に再現した、名作の変遷をたどる
7回の復刻を繰り返してきた普遍のマスターピース「1300JP」。最新作でオリジナルのディテールが再現されるまでの、デザインの変遷をたどる。
2代目の1995年版から5年ごとに復刻されてきた「1300JP」シリーズの最新作、2025年版「1300JP」の全貌がついに公開。エンキャップやヴィブラムソールをはじめ、タンロゴやステッチにいたるまで、オリジナルの意匠を再現。¥59,400/ニューバランス(5月29日発売予定)。
ランニングシューズのフラグシップモデルとして、1985年にデビューした初代「1300JP」。ミッドソールにクッション性と安定性を両立した「エンキャップ」を初めて搭載したシューズで、デザイナーのラルフ・ローレンが「雲の上を歩いているようだ」と絶賛した逸話は有名。
初代「1300JP」発売当時、スニーカーは高くても50ドル程度だった時代のアメリカで、一足130ドル(当時の日本の価格で39,000円)という価格設定は、セレブリティやエリートたちの間で大きな話題となり、人気を集めた。発売時の広告には、「エンキャップ」の性能、新開発された「SL-2」ラスト、プロテクションと軽量性の両立、「メイド・イン・USA」であることなど、1300がこれまでにつくられたどのランニングシューズよりも高額で、かつ高性能である理由が説明されている。
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これまでのモデルと徹底比較! 最新作のディテール
2025年版/1995年版〜2005年版
左:「1300」の文字は2005年版から復活した特徴的なフォント。NBロゴは2010年版から復活した14本バーを採用。その代わり本作では®マークが省略されている。 右:1995年版〜2005年版まで、NBロゴの「N」は8本バー。1995年版と2000年版では「1300」の文字が丸みを帯びたフォントに。2000年版には「MADE IN USA」の表記が追加。
左:Nロゴ内部のステッチは、2010年版からオリジナルの雰囲気を再現した丸みのある縫い目に変更。この微妙なニュアンスの追求が、「1300JP」の表情に大きな影響を与える。 右:Nロゴ内部のステッチは、1995年版から2005年版には直線的に施されていた。Nロゴの太さに若干の変化が見られるモデルもあるが、基本的に太く大きいロゴが1300の特徴。
左:ヒールカウンターの縫い目は2005年版以降オリジナルと同じダブルステッチに変更された。TPUヒールスタビライザーに施されたNBロゴの「N」は全モデル共通で8本バー。 右:エンキャップ搭載のミッドソールと、TPUヒールスタビライザーは全モデルで共通するディテールだが、1995年版と2000年版ではヒールカウンターのステッチをシングルに変更。
左:アウトソールは2010年版以降オリジナルと同じヴィブラムソールに変更。NBロゴもオリジナルと同じ5本バーに変更された。グリッドのパターンは全モデル共通。 右:初代「1300JP」ではグリップ性能と耐久性に優れたヴィブラム社製のアウトソールを採用していたが、1995年版から2005年版までは別のものを使用。NBロゴも5本から8本へと変更。