セミオーダーできるお洒落デニムのトムワークス、デザイナーが自ら縫う温かな服づくり【着る/知る Vol.192】

  • 写真・文:一史
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トムワークスのアイコニックなリジッドデニム生地のワイドパンツ。膝を補強するニーパッチが大胆に主張する。¥40,700

曲線のラインが最高に美しいデニムパンツ。各パーツのエッジが大きくカーブを描き、脚幅が太いワイドシルエットを引き立てている。歴史的なワークウェアとトレンドのスタイルが融合したデザインだ。古典的なアメカジとも、ヨーロッパのデザイナーズとも異なる独特なセンス。一目見て「こんなデニムを穿きたかった!」とワクワクする人は多いのではないだろうか。
さらに心躍るのが、この服が自分体型でオーダーできる受注生産品であること。裾をカットするとシルエットが台無しになるフレアパンツでも、体型補正してバランスを整えられる。ウエストサイズだけ変える補正も可能だ。
そんな客の希望を叶えるブランドがトムワークス(TOM WORKS)。裁断から縫製まで自分たちで手掛ける完全受注生産の服づくり。だからこそ相談しだいで融通が効くのである。
この記事では彼らのアイコンアイテム、注文方法、運営するクリエイターデュオ、制作アトリエまで全貌を紹介。パーソナルな服が愛されるいまの時代にふさわしい魅力と価値をお届けする。

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グラフィカルなデザインがスタイリッシュ。裁断も縫製もすべてアトリエでの手仕事によるもの。打ち抜きリベットやサイズ調整の尾錠などはビンテージデニムの流儀だ。

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トラッカージャケットも自分体型で

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流行が広がる短い着丈のトップスと呼応するように人気が高まるトラッカージャケット(ジージャン)。パンツと同様の受注生産品。各色ともに¥42,900

トムワークスの購入は公式ECサイトにて。原則として彼らが用意したサイズの中から注文する形式だ。体型補正などの要望を伝えたいときは公式インスタグラムへのDMやメール連絡などで相談する。条件やオプション料金が記載されたフォームはないのでご注意を。納期は時期により異なるが早くて約1ヶ月が目安だ。
ブランドの運営者が服づくりの思想を次のように語った。
「せっかくオーダーしてくださる方には、できる限り希望を叶えてあげたいと努めています。バイトで貯めたお金を握りしめて注文してくださるお客様もいらっしゃいます。安い服とは思っていませんし、見合う満足を得ていただきたいのです」
この思いもあり、補正してもオプション料金は派生しない。彼らが「これなら可能」と考える範囲であれば通常価格で対応してくれる。例えばジャケットなら袖を短くする、着丈を調整するといったアレンジなら問題ないようだ。
ただしデザインの基本形には、トムワークスが心を込めて生み出した誇りがある。ワイドパンツをスリムにするような大幅な変更はリクエストしないことをお薦めしたい。

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ファッション学校で出会った運営のふたり

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右は小松美優さん、左はシマジリサトシさん。トムワークスのデザイン、製造、経営まで一手に担うクリエイターデュオ。

トムワークスの運営は男女のクリエイターデュオが手掛ける。小松美優さんは劇団四季の衣裳部の勤務経験があり、シマジリサトシさんは元バンドマン。両名ともに異色の経歴の持ち主だ。ふたりはファッション学校の文化服装学院に通い、在学時代に友人になった。シマジリさんがブランド立ち上げの企画を信頼する小松さんに伝え、共同で2020年にトムワークスを設立した。
アメカジやストリートの文脈とは異なるふたりの出自が独自のスタイルを生み出したのだろう。オートクチュールのドレスを縫える小松さんの高い技術力と、ロックな感性を持つシマジリさんとのシナジー効果。彼らのエレガントなデニムは先端モードの感性も漂わせる。

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シルエットで時代感を愉しむ

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ジャケットとパンツの同素材セットアップをシマジリさんに着てもらった。上下揃えて着ても馴染むのがトムワークスの個性のひとつ。ジャケット ¥42,900、パンツ¥40,700

 

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バックスタイルにも気を配ったデザイン。タックや銅の補強リベットで布に動きを与えている。

トムワークスを着るなら、彼らが得意とするフィット&フレアなAラインの全身シルエットを意識したい。トップスはタイトめに、パンツは裾フレアかワイドに。同ブランドのパンツは腰回りが細く脚が太めの70年代調が多い。オーバーサイズを選びウエストを絞って穿けばルーズな印象になる。タイトなトップスが苦手な人は、同様にオーバーサイズでゆったりと羽織るのもいい。その場合に袖丈が長すぎると感じたら、小松さんとシマジリさんに変更を相談してみよう。

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両サイドにポケットを取り付けたカーゴパンツ。裾もドローコードで絞れる。生地はグリーン系の色のデニム。¥40,700

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東京・阿佐ヶ谷のアトリエ

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縫製ミシンに向うシマジリさんと小松さん。リベット打ち抜きなどのデニム製造に必要な特殊マシンも活用している。
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アトリエで裁断して組み上げていく。センスが必要なカーブの裁断と縫製を工場発注するのは難しい。

小松さんとシマジリさんは自らデザインして、パターンを引き裁断して縫う。東京・阿佐ヶ谷に構えたアトリエでこの作業が日々行われている。顧客をこの場に招き、身体を採寸することもある。小松さんとシマジリさんはスーツの注文服でいうところの「テーラー(縫製担当)」であり、「カッター(採寸、型紙、裁断担当)」でもあるのだ。
不定期に開催する全国のオーダー会では、ふたりが会場で接客も行う。客からの要望にその場で瞬時に判断できるのが強みだ。

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型紙づくりの技術を持つふたりだからこそ、微調整にも素早く対応。カジュアルなワークウェアでも発想の根源はテーラリングだ。

「この人たちになら服を託せる」、そのように信頼させる温かな空気をまとう小松さんとシマジリさん。ブランド立ち上げから5年経つが、評判の広がりは口コミによるもの。男性のみならずミュージシャンのカネコアヤノやモデルの森星のように女性の愛用者も増えている。
この記事で紹介したオーダーシステムや価格は、2025年2月現在のものだ。より廉価で手にしやすい既製服をラインナップに加える計画もある。彼らのビジネスは日々移り変わっているのでどうぞご留意を。
希少性があり体型にフィットするトムワークスは、ずっと長く愛用できるパーソナルな服。さらに、つくり手の顔が見える工芸的な品でもある。手持ちのワードローブのなかでも一際輝く宝物になるに違いない。

TOM WORKS

https://tomworks.jp/
www.instagram.com/tomworks_official/

 

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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