
CIやVIといった呼び名でも知られるブランディング手法のひとつ、アイデンティティデザイン。企業やブランドのイメージを伝えるシステムとして定着しているが、理論的に構築されたのは20世紀初め頃、ドイツのデザイナーたちによって形づくられたことに遡る。京都dddギャラリーで開催中の本展は、その代表的なポスターやドイツ企業の独自のコンセプトが示されたデザインマニュアル、印刷サンプルなど、貴重な実物を包括的に紹介する企画展だ。
「時代の区切りを戦後としていますが、展示は1945年以前のデザインからスタートします。グリッドシステムと手描きによって考案されたロゴやパンフレット類が約150点、ポスター類は60点ほど。1972年ミュンヘンオリンピックのガイドラインや、レーヴァークーゼン市が市民のために発行したビジュアルツールなどは特に見応えがあります。システマティックなデザインの原則を実現してきたバウハウスから続く思想は何十年経っても変わらず、ものごとの本質を捉える姿勢となって現代の我々にも求められているのではないでしょうか」
同ギャラリーの担当者、谷川は本展について、そう話す。
展示品は主に、グラフィックデザイナーであり教育者のイェンス・ミュラーが設立した「A5コレクション デュッセルドルフ」から構成される。さらに同時期、兵庫県の西宮市大谷記念美術館で開催中の『戦後西ドイツのグラフィックデザイン展 モダニズム再発見』でも、このコレクションからポスター作品が中心に紹介されるので、両会場とも見逃せない。
デジタルメディアが主流のいま、現代に通じる考えのもとに紙と印刷によって生み出される風合いに、改めて豊かな質感を見出すことができるだろう。
『アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング』
開催期間:~2025/1/13会場:京都dddギャラリー
TEL:075-585-5370
開館時間:11時~19時(火~金) 11時~18時(土、日、祝)
休館日:月曜日(祝日・振替休日の場合は翌日)、祝日の翌日(土、日は開館)、年末年始
料金:入場無料
www.dnpfcp.jp/gallery/ddd
※この記事はPen 2024年12月号より再編集した記事です。