東京・京橋のアーティゾン美術館で開催中の展覧会『空間と作品』。「作品が見てきた景色をさぐる」をテーマに、古今東西、さまざまな分野の作品からなる石橋財団コレクション144点が公開されている。展示を鑑賞するのにおさえたい5つのポイントとは?
注文主や持ち主の気分を想像しながら絵を楽しむ

まずピサロの4点の《四季》に目を向けたい。そこには畑を耕し、麦が実り、積み上げられた田園風景が描かれているが、注文主の銀行家はダイニングを飾るための絵をピサロに依頼したという。よって展示では中央にダイニングテーブルを設置し、持ち主の気分を味わえるように工夫している。またピカソの《腕を組んですわるサルタンバンク》を、かつてピアニストのホロヴィッツが所有していたことを紹介。「ホロヴィッツは絵を見て、何を思いながら演奏していたのだろう?」と想像しながら見ていくのも楽しい。
日本家屋に入り込む外光も再現。靴を脱いで畳の上から襖絵を見よう

円山応挙の《竹に狗子波に鴨図襖》の展示は、日本の襖が建物の一部、調度品であったことを改めて示している。ここでは応挙の手がけた襖を、畳敷きの大広間をイメージした空間にて公開。さらに特別にガラスケースを外すだけでなく、作品の向かい側に照明を設置することで、古い日本家屋に差し込んでいた横方向からの外の光を再現している。靴を脱いで畳の上に座りながら、遮るものがない状態にて、竹の下で戯れるかわいい子犬の描かれた襖をじっくりと鑑賞したい。
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コレクションとインテリアがコラボ!

「自分だったらこんな美術品に囲まれたリビングでくつろぎたい…」そんな贅沢な願いを実現させたのが、インテリアスタイリストの石井佳苗の協力のもと、コレクションの作品とインテリアを組み合わせた展示だ。佐伯祐三やセザンヌ、それにドローネーらの作品を椅子やランプなどと並べて、プライベートな書斎やリビングを演出。さらにソットサスのサイドボードなどを三岸節子や山口長男の絵画と合わせ、スタイリッシュなダイニングを作り上げている。
時代によって移り変わる額の様式とは?

画面から「まわり」に少し視界を広げると、何が見えてくる…? 画面を守るだけでなく、画面と空間をつなぐ役割を果たす額縁に注目してほしい。シスレー、ブーダン、モリゾ、モネの4点の絵画が並ぶコーナーでは、ルイ13世からルイ16世までの時代によって移り変わる額の様式を紹介。また多様な額に支えられたマティスをはじめ、「劉生縁」という呼称があるほど額にこだわった岸田劉生、それにロートレックやジャコメッティなどの美術館によって額を新たに設えた作品についても、そのエピソードとともに展示している。
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スマホ必携!リニューアルした「アーティゾン美術館公式アプリ」

スマートフォンにてコレクションの音声ガイドを楽しめる「アーティゾン美術館公式アプリ」をぜひ利用したい。同館では本展にあわせアプリをリニューアル。新たな画像認識技術により、鑑賞者が美術作品にスマートフォンのカメラをかざし撮影する方法で、音声ガイドを視聴したい作品を選択する機能が加わった。また館内のフリーWi-Fiに接続して、QRコードを読み込むと、来館者限定の「ひと言解説」を読むこともできる。モネ、マティスから琳派、岸田劉生、そして抽象絵画までと充実したコレクションを新たな切り口で紹介する『空間と作品』へ訪れてみてほしい。
『空間と作品』
開催場所:アーティゾン美術館
東京都中央区京橋1-7-2
開催期間:開催中〜2024年10月14日(月・祝)
https://www.artizon.museum/