【Penが選んだ、今月の音楽】
『Metamorphose』
髙木は誠実な演奏と人柄で、これまでクラシックに馴染んでこなかった人々をも惹きつけ、いま着実にファンを増やしているピアニストだ。既に何枚ものCDを出しているが、意外にもソロ名義としてはこれがデビュー盤。本場ヨーロッパでも失われつつある古きよき時代の偉大なピアニストたちの奏法を受け継いだ幅の広すぎる表現力が魅力で、決して小綺麗にまとまってしまうことがない。どれも見事なのだが、特にグリーグとドビュッシーの素晴らしさは傑出。いい意味で若さを感じない、熟しきった演奏だ。
※この記事はPen 2024年8月号より再編集した記事です。