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『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー兼アニメーションディレクターであり、漫画家としても活躍する安彦良和。彼の人生と創作活動を展望する回顧展『描く人、安彦良和』が、2024年6月8日(土)~9月1日(日)の期間、兵庫県立美術館にて開催している。ガンダムを描いたアニメーター時代の資料はもちろん、漫画家としてのライフワークとも言うべき、東アジアの近代・古代史をテーマにした『虹色のトロツキー』『王道の狗』などの漫画原稿も含めた約1400点の作品が、少年期、青年期の歩みから、現在の創作まで6章に分かれて展示される。
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安彦良和 漫画家、アニメーター●1947年生まれ、北海道出身。『機動戦士ガンダム』でキャラクターデザインとアニメーションディレクターを担当。『クラッシャージョウ』で劇場版アニメの監督を務め、テレビアニメ作品では自身が原作の『巨神ゴーグ』を生み出す。後漫画家に転身し『アリオン』『ヴイナス戦記』『クルドの星』『虹色のトロツキー』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』他を精力的に発表。現在『乾と巽-ザバイカル戦記-』執筆中。
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やわらかいタッチで描かれる、リアルな世界観
安彦良和の絵の魅力は、やわらかい絵柄ながら、リアリズムを追求した世界観とマッチする圧倒的な画力に尽きる。
それまでのアニメは、手塚治虫が編み出した、キャラクターを記号的表現で描く表現が主流であった。これは、漫画ではキャラクターに感情と動きを与えて、日本漫画の表現におけるスタンダードとなったが、そのわかりやすいキャラクター造形がアニメーションに転用されたとき、逆にリアリズムを阻害していた。
安彦良和は、こうした従来のキャラクターデザインのやわらかさを残しつつ、繊密なタッチで、華麗かつ色っぽささえ醸し出す、絵画のような絵をアニメーションに取り入れることに成功した。
こうした独自の絵柄は、1947年に北海道の紋別郡遠軽町で生まれ育った少年期に、手塚治虫の技法を模倣しつつ、我流に仕上げていったという。彼の画風の変化は今回展示されている『遙かなるタホ河の流れ』など少年時代に描かれた作品からも感じることができる。
その後、学生運動に参加して弘前大学を除籍された後、生活のために虫プロダクションへ入社。アニメーターの道を歩み始め、『宇宙戦艦ヤマト』(74)などのメインアニメーターとして、頭角を現していく。
そして、徹底したリアリズムと複雑な人間関係を描いた『機動戦士ガンダム』では、これまで男の子向けだったロボットアニメを優しいタッチで描き、女性や大人のファンを獲得。カリスマアニメーターの一人となった。こうした幼少期からアニメーターとなった後に至るまでの作品が、各時期に合わせて展示されている。
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77年の人生で貫く「人を描く」こと
彼の作品で一貫して描かれるテーマは、繊細ながらも自らを模索し続ける人の姿である。
かつて学生運動に身を投じた経験から、政治や戦争に翻弄されながらもアイデンティティを模索し続ける若者を主人公にした作品を創作し続けてきた。
そのテーマは平成に入り漫画家に転身してからは、古代史、近代史を緻密な時代考証の上に豊かなイマジネーションを加えた魅力あふれるフィクションとして仕上がる事となる。
特に、『虹色のトロツキー』『王道の狗』『天の血脈』の日本近代史の三部作では、明治~昭和期の朝鮮半島や満州を舞台に、不安定な当時の国際情勢の中で、自分は何者かを追求する人を描き切っている。
こうした歴史大作は、漫画版原作・アニメ版総監督として携わった『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(2015)で集大成となる。これまで手掛けてきた、東アジアの近代史の作品での経験を活かし、ガンダムという架空の世界に一つの歴史を創り出した。ウクライナやガザなど、戦争が日常的にメディアで流される現代こそ、安彦良和が伝えたいものが響くかもしれない。
『機動戦士ガンダム』が放映45周年となる2024年。安彦良和のアニメーター・漫画家としての軌跡を追う本展で、今の時代に訴えかけるものをくみ取ってほしい。
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左:『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』 カラーイラスト原画(『機動戦士ガンダム THE ORIGIN Blu-ray Disc』5巻 初回限定生産盤) ©創通・サンライズ
『描く人、安彦良和』
開催期間:2024年6月8日(土)~9月1日(日)開催場所:兵庫県立美術館
〒651-0073神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1[HAT神戸内]
開館時間:午前10時~午後6時※入場は閉館の30分前まで
www.mbs.jp/yasuhikoten/