水没の街をクルーズして難を逃れる…“ボートのように”水に浮くTesla、ドバイ大洪水で役立っていた

  • 文:青葉やまと
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Model Y-Shutterstock

前例のない洪水に見舞われた今年4月のドバイで、水に浮くTeslaが役立っていた。

ソーシャルメディアで公開された動画から、街のあちこちで水没する車を尻目に、洪水で一変した道路をまるでボートのようにスムーズに移動するTesla モデルYの姿が判明。このところ問題続きのTeslaだが、非常時の対応能力を発揮する形となった。

アラブ首長国連邦の首都・ドバイでは4月16日、記録的な洪水が発生。米CNNは、わずか12時間で1年分の降水量に相当する雨が降り注いだと報じている。結果、「道路は川と化し、急流は家や会社にまで浸水」する事態となった。

空港は駐機場が水没し、同日10時までに全便の欠航が決定。ある乗客は「文字通り一杯で、誰も行くところがない」とCNNに語っている。道路も広い範囲で冠水し、タイヤ丈まで水に浸かりながらかろうじて走る車や、完全に水没し動けなくなる車も見られた。

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水面をスムーズに航行

そんななか、短時間であれば水上を走行できるというTeslaを、実際に試すユーザーが現れた。洪水を切り抜ける動画が公開されている。

Xに4月17日に投稿されたこの動画は、路上で冠水し行き場をなくした多数の車両を捉えている。多くはボンネットやサイドミラーの高さまで冠水し、身動きが取れなくなっている。

これらの車両を抜き去りながら、スムーズに動画のカメラは進んでおり、まるで水上を進むボートの上から撮影されたかのようだ。だが、カメラがパンして正面を向くと、目の前には運転席と助手席に座る同乗者の姿が。Teslaの車内後席から撮影されていたことが明かされる。

よどんだ水の貯まる路上にさざ波を立てながら、Teslaはつつがなく進行。動けなくなっているバンなどを次々と交わし、高速道路の高架をくぐり、人工島「パーム・ジュメイラ」付近の道路を悠々と進む。

車体は水の動きを受けてゆるやかに左右に揺れているが、それ以外はとくに問題ないようだ。ハンドルで進路変更が可能で、ナビも通常どおり動作している。水没区域を抜けると、車両はシームレスに路上走行へと戻った。

投稿者は「ドバイでは、他のあらゆる車が洪水で立ち往生している。@teslaを除いて」「私たちは文字通り、車ごと浮いていました」と述べている。

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マスク氏「勧めはしないが水に浮く」

Teslaのイーロン・マスクCEOは以前、モデルSについてTwitter(現X)に、「われわれは【間違いなく】推奨しないが、モデルSは短時間であればボートのように浮く。車輪の回転が推力になる」と投稿していた。その実力が証明された形だ。

ちなみにエルサレム・ポスト紙は、今回の洪水で車種により明暗が分かれたと報じている。

記事によるとドバイ周辺の高速道路では、何時間にも及ぶ渋滞が発生。ドライバーたちが水没した車を乗り捨てる光景がみられたという。ロールスロイスやベントレーなど高級車は、エンジンに水が入り立ち往生するケースが多かったようだ。

一方、アラブで人気のトヨタ・ランドクルーザーや日産パトロールなどのオフロード車は、比較的順調に走り続けていたという。また、EVが予想外に健闘した模様だ。同紙は「水が1メートルの高さまで溜まった場所でも、Tesla・モデル3やポルシェ・タイカンなどのEVは走り続けていた」と報じている。

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車体重量の大きさが奏功?

ただし、水没したEVは一般に、感電の危険こそないとされるものの、腐食による水没後の火災が懸念される。浸水は好ましくなく、水没した状態での走行が推奨されるわけでもない。

これらを踏まえたうえで同紙は、洪水中は重い車体重量が良い方向に働いたと分析している。ハイドロプレーニング現象によるスリップを免れ、車体が水に浮いてタイヤが接地しなくなる事態も防止されたのではないか、との見方だ。

災害時は外出を控えるのが最善だが、万一洪水の中に取り残された場合、Teslaが脱出の術になることがあるようだ。

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【動画】完遂したドバイの街路を進むTesla モデルY。

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 「短時間であれば水に浮く」と語るマスク氏。