アスレジャーを先取りしていた? ボブ・マーリーがいつも着ていたアディダスのトラックスーツ

  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)
  • 写真:宇田川 淳
  • スタイリング:井藤成一
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「アディカラー クラシックス ファイヤーバード」のトラックジャケットとパンツの組み合わせ。「ファイヤーバード」は1980年代に発売された同ブランドの名作トラックスーツのひとつだが、今季はモダンなルーズフィットで登場。胸に「トレフォイル」ロゴの刺しゅう。両脇に小物がしまえるジップポケットを備える。素材は機能的なポリエステル100%。ジャケット¥13,200、パンツ¥10,670/ともにアディダス オリジナルス

「大人の名品図鑑」ボブ・マーリー編 #3

伝説のレゲエミュージシャン、ボブ・マーリーの生涯を映画化した映画が公開される。『ボブ・マーリー:ONE LOVE』だ。すでに公開された全米などでの興行収入は初登場No.1を記録、日本でも話題になることは必至。今回はこの映画にも登場する、ボブ・マーリーが愛用した名品について解説する。

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アスレチック(Athletic)とレジャー(Leisure)を組み合わせた「アスレジャー」がカジュアルスタイルの主流となり、スポーツウェアを普段着として着用している人が多いが、これを早くから実践していたのがボブ・マーリーだ。映画『ボブ・マーリー:ONE LOVE』の舞台となったのは1970年代後半で、いまから50年近く前のこと。2024年3月にアップされた『Esquire』のウェブ版で、ボブ・マーリーのトラックスーツの話が掲載されている。そこには「私が知る限り、ヒップホップやラッパーがそのスタイルを取り入れるずっと前から、マーリーはグラウンドの外で頭からつま先までスポーツウェアを日常着に取り入れた最初の人物だった」とアディダス社のプロダクトチームの一人が語ったと書かれている。

「ボブ・マーリーは時代を先取りして、スポーツウェアに目がなかった。いろいろな場面で着用していた」と語るのは、この作品で衣装を担当したアンナ・B・シェパード。彼女は『シンドラーのリスト』(93年)や『戦場のピアニスト』(02年)、『マレフィセント』(14年)などで3度アカデミー衣装デザイン賞にノミネートされるという華々しい実績を持つ人物。彼女はボブの象徴でもあったアディダスのウェアについてくまなく調べ上げ、「サッカーするときや、ギターを抱えてソファでくつろぐときにもアディダスを着ていた。長ズボンのみのこともあれば、全身アディダスのときもあった」と話す。

映画の中でもボブを演じたキングズリー・ベン=アディルはレコーディングスタジオや居間で曲をつくるとき、あるいはクルマを運転するときに、はっきりと「スリーストライプス」とわかるアディダスのトラックスーツを着用している。

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多彩なラインナップが揃う、アディダスのトラックスーツ

「トラックスーツ」とは、アスリートがトレーニングや実際の競技の前後、たとえばウォームアップやクールダウンに使用するためのスポーツウェアの一種だ。トップスとパンツがセットでデザインされており、速乾性や動きやすさなどの機能性を考えて、ポリエステルやナイロンなどの素材を用いたものがほとんど。日本では昔は「ジャージ」と呼ばれていたが、本来ジャージとは伸縮性のある厚手のメリヤス編地のことだ。

『アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争』(バーバラ・スミット著 ランダムハウス講談社)ではアディダスの創業者アディ・ダスラーが衣料品を扱うことを渋ったため、この分野への進出が遅れたと解説されている。しかし「ドイツのサッカーコーチから再三依頼され、ようやくトレーニングパンツを作ることに同意したとある。さらに衣料分野にも進出したことで、アディダスはスポーツ産業を一新した」とも書かれている。

また、21年12月にアップされた『Esquire』のウェブ版の記事によると、アディダスがトラックスーツを製作するときに頼ったのが、ドイツ・サッカー界の帝王であるフランツ・ベッケンバウアー。「彼のために赤いパンツとジッパー付きの白いジャケットで構成されたトラックスーツをつくります」と記されている。サッカー好きのボブがこのトラックスーツを見逃すはずがないだろう。

今回はそんなボブが惚れ込んでいたアディダス オリジナルスのトラックスーツの名品を3つ紹介しよう。まずサッカーの帝王へのオマージュを込めた「ベッケンバウアー」モデル、ゆとりのあるシルエットを備えた「ファイヤーバード」モデル、そしてアディダス オリジナルスのトラックスーツの代表的モデルである「スーパースター」。いずれも機能的な素材を使い、着用するスタイルに合わせて、シルエットや素材を選べる多彩なトラックスーツを揃えているところは、スポーツブランドの老舗としての矜持を感じる。いずれも「スリーストライプス」や「トレフォイル」ロゴなど、一目でアディダス オリジナルスとわかるキャラクターを備えたトラックスーツだ。早くからトラックスーツを愛用していたボブがいま生きていたら、どのタイプを選ぶだろうか。

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アディダス オリジナルスのアイコンと言える「トレフォイル」のロゴ。古代、スポーツの勝者に授けられる月桂樹の冠をモチーフにしてデザインされた。

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ジッパーを開け閉めすることで、スタンドカラーにもなる実用的な襟のデザイン。

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パンツは裾にジッパーが付き、開けたままラフに着こなすのもいい。

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「アディカラー クラシックス スーパースター」というモデル名のトラックジャケットとパンツの組み合わせ。アーカイブデザインを忠実に再現したリブ仕上げの襟のトラックスーツ。スリムフィットで、ソフトな風合いの素材は、ポリエステル70%、綿30%。胸に「トレフォイル」ロゴ、袖には「スリーストライプス」が入る。パンツの裾はリブ付き。ジャケット¥13,200、パンツ¥9,900/ともにアディダス オリジナルス

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「ジャマイカ ベッケンバウアー 」のトラックジャケットとパンツの組み合わせ。「ベッケンバウアー」は同ブランドを象徴するモデルで、素材は綿とポリエステルを混紡したピケ。シルエットはスリムフィット。今回紹介するモデルは、ボブ・マーリーの故郷ジャマイカをイメージしたカラーリングとデザインだ。ジャケット¥14,300、パンツ¥13,200/ともにアディダス オリジナルス

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