集団で動くカタツムリ型ロボット、かわいくてちょっとゾワッ! 粘液分泌タイプも登場  

  • 文:青葉やまと
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shutterstock_2307746331.jpgMarc Andreu-Shutterstock

カタツムリに着想を得た、群れて行動する小型ロボットが開発された。戦車のようなキャタピラと吸盤を本体下部に備え、険しい地形を乗り越えたり、他のカタツムリロボットの上を乗り越えて移動したりできる。

ロボットはリモコンで操作でき、キャタピラを使用する「フリーモード」と、吸盤を使用して他のロボットに付着しより難易度の高い障害物を乗り越える「ストロングモード」の2つを使い分ける。高さ数センチほどの球形だ。

群れになって行動する様子は愛らしくもあり、一方で集合体恐怖症の人にはやや刺激的かもしれない。ロボットは香港中文大学の研究チームが開発し、科学ジャーナル『ネイチャー・コミュニケーションズ』に研究論文が掲載された。

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なぜカタツムリ? 動物に着想の「バイオミミクリー」

通常、野生のカタツムリは1本の足で険しい地形を移動し、垂直面を登る能力を持つほか、繁殖などのために個体同士が寄り添うことがある。今回開発されたロボットはこれらの特性を取り入れ、他のロボットの鉄でてきた殻の複数の箇所に吸着でき、単体では乗り越えることが困難な地形を克服する。

野生の生物の特徴を取り入れて新たな能力をロボットに与える発想は、ロボット工学の一分野であり、バイオミミクリー(生物模倣)と呼ばれる。これまでは飛行型ロボットや水中ロボットを除き、縦方向への移動は困難であった、と科学誌『ポピュラー・サイエンス』は指摘する。

また、これまでも群れで行動するロボットは存在したが、一般的に1箇所のみで接続するため、機能が限られていた。新たなロボットカタツムリは、こうした限界を乗り越える可能性があると研究チームは述べている。

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磁石と吸盤でがっちり固定

各ロボットはゴム製のキャタピラを持ち、内部には小さな磁石が組み込まれている。ロボットは通常、戦車やブルドーザーのようにキャタピラで地表を移動する。

だが、困難な状況になるとリモコン操作により、「ストロングモード」を始動できる。真空の吸着カップを殻の下部に展開し、他のロボットの殻に吸い付いてよじ登る。ロボットは吸盤を固定したまま360度回転することも可能だ。

これによりロボットは、他のロボット上の任意の固定できる。ロボットの群れ全体がこの作業を繰り返し、1個体では高すぎる段差であっても、数珠つなぎになって乗り越えることが可能だ。

テスト運転では実際に、ロボットが段差を乗り越えるために階段を作ったり、隙間を渡るため橋を架けたり、さらには細長いロボットアームを形成することに成功した。

今後は自律行動が目標

研究チームは、捜索救助や環境探査での活用を見込む。論文でチームは、「個々のロボットの機動性を重視することで、全体の柔軟性と敏捷性を確保すること、さらには堅牢な接続機構を組み込むことが重要だ」と今後の課題を述べている。

また、将来的には宇宙カタツムリロボットが他の惑星を探索する可能性もある。直近の目標としては、ロボット同士が自律的にコミュニケーションをとり、計画を立て、建設する能力を持つよう、新バージョンの開発を予定しているという。

粘液分泌のタイプも登場

カタツムリ型ロボットに関してはこのほか、粘液を分泌するタイプも開発されている。

南デンマーク大学のサラヴァナ・プラシャンス・ムラリ・バブ氏率いる研究チームは、カタツムリの動きに注目。その動きを模倣するロボットを開発した。大きくて柔らかい一本足を再現し、それをロボットの基礎としている。

カタツムリは通常、粘液の薄い膜を使い、足から地面へと推進力を伝える。この独特な移動方法に、研究チームは注目した。

バブ氏は、「カタツムリは私にとってマイケル・ジャクソンのようなものです。どのように動いているかは見た目には分からないですが、なぜか滑って前進できているのです」と不思議な動きを形容している。

地面を滑るように移動する

ニュー・サイエンティストによると、カタツムリの足は、地面に接触し、離れ、再びぶつかるという動作を繰り返す。これにより足全体に波形が生まれ、粘液の上を滑るように前進する。

バブ氏のチームは粘液を分泌できるロボットを開発し、この「ペダル波」運動を再現。転倒することなく、前進や旋回が可能であることを確認した。

さらにはテスト運転の結果、急な傾斜面を上ることも可能だったという。今後は、体のほとんどが水でできているカタツムリにより近づけるよう、膨張式になっているロボットの足をさらに柔軟にするよう目指している。

この技術は、粘液の多い人体内を移動する医療用ロボットの開発に役立つ可能性があるという。独特な動きのカタツムリに注目したことで、従来のロボットでは困難だった動きが可能になっているようだ。

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【動画】2〜10匹ほどの群れで行動するカタツムリ型ロボ