「フィットネス」から「アートメイク」まで…多様化する「ウェルネス」のビジュアル描写。 「メンタルヘルス」に関心高い一方で、オープンな議論に消極的な日本【後編】

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    前半では、ゲッティイメージズで人気の「ウェルネス」をテーマにしたビジュアル描写が多様化していることや、消費者が生活の中で大切にしている事項について調査データをもとに考察しました。後半では、「メンタルヘルス」に対する人々の意識を踏まえながら、企業やブランドの「ウェルネス」に関するビジュアルコミュニケーションについて考えていきます。

    ■LGBTQI+コミュニティ独⾃の「メンタルヘルス」の課題に関⼼寄せる⼈が7割

    次に、メンタルヘルスに関する認識と優先事項についての調査結果を分析していきます。こちらも、グローバル、APAC、⽇本の各地域で実施しましたが、いくつかの違いが浮き彫りになりました。メンタルヘルスの問題をサポートすることの重要性については広く理解されているところで、いずれの地域でも、 LGBTQI+の⼈々が直⾯する独⾃のメンタルヘルスの課題について、全体の7割程度の⼈々が学ぶべきであると考えており、関⼼の⾼さがわかりました。⼀⽅⽇本では、職場での議論やメディアによるメンタルヘルスの描写に対する⾒⽅が消極的であることがわかりました。

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    1390072922,Edwin Tan,Getty Images

    グローバル:消費者の90%が、メンタルヘルス問題を抱える⼈々への⽀援を強化する必要性を感じています。メンタルヘルスに関して敏感で、特に職場では8割以上がメンタルヘルスについてオープンに議論されるべき(84%)だと考えています。また、メディアが孤

    独や社会的孤⽴を正確に描写していないと感じる割合が8割にのぼったほか、LGBTQI+コミュニティが直⾯する独⾃の課題に対する認識の向上が求められていることもわかりました(68%)。


    APAC:メンタルヘルス問題へのサポートや、問題に敏感になることの重要性は、グローバルの結果よりは若⼲低いものの、多くの⼈が感じています。職場におけるメンタルヘルスに関するオープンな議論の必要性についてもグローバルの結果よりは低いですが、8割程度となっています(79%)。メディアでのこの問題に対する表現の改善や、LGBTQI+コミュニティのメンタルヘルスの課題に対する理解を改善することへの要望も⾼くなっています(69%)。


    ⽇本:グローバルやAPAC と⽐較して、メンタルヘルス問題に対してより消極的な姿勢を⽰していることがわかりました。メンタルヘルスサポートの必要性について⾼いレベルで⼀致しているものの、職場でのメンタルヘルスに関するオープンな議論を⽀持する傾向は、他地域と⽐較すると7割程度にとどまることがわかりました(69%)。また、メンタルヘルスの話題を他⼈と語り合ったり、職場でオープンにすることへの抵抗感が世界平均(43%)よりも⾼く(61%)、セラピーを肯定的に⾒る視点もやや低いことが特徴です。

    この調査から、⽇本ではメンタルヘルスに対して慎重でありながら深い関⼼があり、プライベートな対応を好む傾向がありそうです。最新のVisualGPS の調査によると、多くの⽇本の消費者はメンタルヘルスを優先し、ストレスを軽減するために料理や美味しい⾷事を楽しむこと、趣味に没頭すること、映画やテレビ番組を観ることを好んでおり、メンタルの健康を保つ独⾃の⽂化的アプローチが⾒られます。⽇本におけるメンタルヘルスの改善には、余暇活動や趣味を通じて、個⼈の幸福をより豊かにし、⽂化的に配慮した⽅法でメンタルヘルスの問題に対する認識を⾼めることが必要かもしれません。

    1410728623,recep-bg,Getty Images

    ■個⼈の健康や幸福の価値観に合わせ多様なニーズを反映したビジュアル選定を

    今回公表した結果から、⽇本では「ウェルネス」が、個⼈の幸福感や、健康、経済的安定、感情的な幸福感など、さまざまな側⾯と深く関わっていることがわかりました。このような状況を踏まえると、⽇本市場をターゲットとする政策や製品、サービスは、効果的なビジュアルコミュニケーションを通じて、これらの多⾯的なニーズに対応することが不可⽋です。このアプローチには、ワークライフバランス、経済的なウェルネス、個⼈の健康の重要性を強調するビジュアルキャンペーンをデザインすることが含まれます。

    1768532009,visualspace,Getty Images

    「メンタルヘルス」について⽇本の消費者の意識傾向も明らかになりました。⽇本ではメンタルヘルスについてオープンに話すことが難しいとされるため、カウンセリングやセラピーシーンを強調する代わりに、個⼈のメンタルケアの⽅法をビジュアルに取り⼊れることが効果的です。また企業はビジュアルを使って、従業員への配慮や、貢献を表現することが⼤切です。例えば、リスキリング、チームビルディング、多様性推進、メンタルヘルス⽀援、柔軟な働き⽅など、従業員の幸福につながる取り組みを紹介することで、企業の社会的責任を強調することが可能になるでしょう。

    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

    遠藤由理

    Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー

    ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。