「また会えたね!」怪我のキツネを助けた69歳男性、たぐいまれな友情物語が話題に

  • 文:青葉やまと

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SWNS-YouTube

病気を抱えていた野生のキツネと、それを救った人間の男性。言葉では通じ合わない1人と1匹のあいだに、特別な友情が生まれた。キツネはいまでは森で男性を見かけると、尻尾をぶんぶんと振りながら駆け寄ってくる。一緒に森の散歩を楽しむ仲だ。

男性は69歳のボブ・ダンロップさんだ。イギリス南部、ケンブリッジシャー郡・リトルポートの小さな村で暮らす。人口1万人に満たない、田園の中ののどかな村落だ。

昨年12月のある日、野生動物の行動を観察しようとダンロップさんが設置した自宅屋外のカメラに、1匹の若いキツネが映り込んだ。キツネは、どこか苦しそうだ。地元紙のケンブリッシャー・ニュースによると、尻尾にできた疥癬に苦しんでいたという。疥癬は寄生虫による皮膚病で、激しいかゆみを生じる。

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手を差し伸べたダンロップさん「好きで面倒を見ていました」

哀れに思ったダンロップさんは、ホメオパシー療法の治療薬を与え、キツネの面倒を見た。ホメオパシーは、自然由来の成分やミネラルなどにより自然治癒力を高める療法だ。現代医学のような科学的裏付けがないため、効果のほどについては否定的な見解もあるが、イギリス王室では現代でも利用されている。

ダンロップさんは自分でキツネ用のホメオパシー薬を調達できなかったものの、全米キツネ福祉協会に相談すると無料で送ってくれた。

英ミラー紙の取材に対し、ダンロップさんは治療の様子をこう振り返る。「好きでやっている仕事でした。毎日カメラで見て、餌を与えたんです。パンに治療薬を垂らして、ドライフードと一緒に食べさせていました」

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いまでは見れば駆け寄ってくる仲に

ダンロップさんの薬が功を奏してか、キツネはみるみる快復した。治療を通じ、徐々に特別な絆が生まれたという。

いまでは毎日、ダンロップさんが森を散歩するたび、遠くからめざとく見つけては足下へと駆け寄ってくる。愛らしいキツネの姿を、英メディアのSWNSが動画で伝えている。動画では、木が生い茂る小径でダンロップさんを発見したキツネが、ぶんぶんと尻尾を振りながら近寄ってくる。

迎えるダンロップさんも気分が高まっているようだ。「やあ、またあの君だね! 僕に会おうって戻ってきたのかい?」と優しいトーンで語りかける。

ダンロップさんが散歩するといつも姿を現し、大きく尻尾を振りながらすり寄ったり、服を甘噛みしたりと、身体いっぱいの仕草で愛情を表現する。泥道に寝そべったり、後ろ足と尻尾をばたばたと動かしたりと、まるでダンロップさんを遊びに誘っているかのようだ。

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エキノコックスの心配は?

イギリスでは1970年代からキツネを見る機会が増え、いまではロンドン近郊に1万匹がいるといわれる。イギリスではエキノコックスの根絶に成功しており、近年エキノコックス症の報告例はない。参考までに、日本では寒冷地などの野生のキツネが、内臓をむしばむ寄生虫のエキノコックスを宿していることがある。キツネや糞に接触しないよう留意したい。

ダンロップさんがキツネの面倒を見るようになったのには、寄生虫の心配がないだけでなく、特別なわけがあった。

「前からこの辺りに住んでいたキツネの家族のうち、最後に残った子だと思うんです」。ゆえに、放っておけなかったという。「そうだとすれば、きっと1歳くらいのはずです。もし彼女が(親ギツネに)見捨てられて、これほど人間に懐いているのであれば、放置しておいても自然に帰ることはなかったでしょう」

「彼女はとても特別な動物なんです。別れは辛くなりますね」と語るダンロップさんだが、近いうちに人間の元を離れられるよう、徐々に接触を減らしているという。餌を与えることはすでに控えている。

病気に苦しんでいたキツネを救ったダンロップさんは、希な友情を手にした。いまは残された、かけがえのない時間を噛みしめている。

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【動画】ダンロップさんを見ると、キツネは尻尾を振って駆け寄る。