人の体をデザインする未来へ、山中俊治が想像する近未来のプロダクトとは

  • 編集&文:井上倫子

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テクノロジーとプロダクトデザインは、切っても切れない関係にある。近年はVRやARのような仮想現実の発展が著しいが、こうしたバーチャルの発展もまたプロダクトデザインに影響を与えるようだ。長年、さまざまな工業製品をデザインし研究してきた山中俊治が、近未来のデザインについて語ってくれた。

Pen最新号は『いまここにある、SFが描いた未来』。SF作家たちは想像力の翼を広げ、夢のようなテクノロジーに囲まれた未来を思い描いてきた。突飛と思われたその発想も、気づけばいま次々に現実となりつつある。今特集では人類の夢を叶える最新テクノロジーにフォーカス。SFが夢見た世界が、ここにある。

『いまここにある、SFが描いた未来』
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デザインエンジニア 山中俊治
東京大学工学部卒業後、日産のカーデザイナーを経て1987年に独立。幅広い製品をデザインする一方、科学者と共同でロボットビークルやアスリート用義足など先進的なプロトタイプを開発。グッドデザイン賞など受賞多数。

受話器が必須の電話機が、板状のスマートフォンになるなんて、いったい誰が想像しただろうか?テクノロジーとともに変化し続けるのが、プロダクトデザイン。これからどんなプロダクトが登場するのか──。そんな好奇心を刺激する企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」が21_21 DESIGN SIGHTで開催中だ。

デザインエンジニア、山中俊治がディレクション。会場にはバイクやロボットなどのプロダクトから、いったいなにに使うのだろう? と思わせるものまでが揃い、見る者をワクワクさせてくれる。

20代の頃に多くのSF小説を読み、原点にもなっているという山中は、ジェイムズ・P・ホーガンなど精密な科学に基づき執筆する作家の作品を好んできたという。

「SFから、テクノロジーの登場で社会が変わっていくことを学びました。しかし未来を予測することは難しいですね。僕がSuicaの改札機をデザインした頃は、Suicaがお金として使われるとは思っていませんでしたから」

テクノロジーの登場によって価値観もガラッと変わる。近年でいえば、3Dプリンターだ。工場で大量につくらなくても、自宅で1点から製作ができるようになった。

「製造技術の進化は実は大きな変化をもたらします。これからは服でも椅子でも、一人ひとりの身体に合わせてつくられるようになるでしょう。義足のデザインはその予兆に過ぎませんが、その先には『人の体をデザインする(=身体拡張)』という未来があります」

今回展示している「自在肢」はまさに身体拡張のひとつ。3本目、4本目の腕として使うことができるのだ。このように運動能力を強化させるだけでなく、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)も含まれる。仮想現実の世界が広がっていくと、映画『レディ・プレイヤー1』で描かれていたように、現実の価値が下がってしまうことはないだろうか。

「インターネットが登場した当時、もう出かけなくてもいい、なんて話もありました。しかしデジタルの世界が盛り上がるほど、体験することの価値が高まっていくと思います。いつか『マトリックス』のように仮想現実が主流になる日が来るかもしれませんが、その前にそのバーチャルとリアルが混在する世界があるのです」

そして山中は、そのふたつがどう接続していくのかに興味を持っているという。

「身体拡張が発展していった未来の社会では、スマートフォンも身体の一部になるだろうから、少なくとも板状のかたちではなくなるでしょうね」

スマホが身体の一部になるなんて、どのような感覚なのだろうか。テクノロジーが叶える未来が、ますます楽しみになる。

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「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」での展示作品

山中研究室+稲見自在化身体プロジェクト
「自在肢」

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人間がロボットや人工知能などと「人機一体」となって動くことを支援し、人間の行動の可能性を広げる「自在化」技術の研究を行う稲見自在化身体プロジェクト。「自在肢」は山中研究室と同プロジェクトで共同開発した装着型ロボットアームシステム。装着者は、他者が身につけていた「腕」を受け取り、自身が身につけていた「腕」を他者に受け渡すこともできる。photo:Harumi Shimizu

山中研究室+新野俊樹+鉄道弘済会義肢装具 サポートセンター他
「Rami」

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2016年に山中が発表した陸上競技用義足。08年から「美しい義足」プロジェクトを立ち上げ、アスリート用を中心に機能的で美しい義足の開発を進めてきた。3Dプリンターによって一人ひとりに合わせたものが容易につくれるようになった。重量や剛性、重心などを細かく調整できる。現在は日用品や子ども用の義足にまで発展。photo:加藤 康

山中研究室+宇宙航空研究開発機構(JAXA)
「emblem」

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JAXAと山中が研究を進める飛行機械。災害救助の場面で使うことを想定し、エンジンを3つ背負い、手をふさがないよう足で操作するシステムだ。展覧会の会場にはモックアップが展示されている。

nomena+郡司芽久
「関節する」

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2021年東京オリンピックの聖火台のエンジニアリングを担当したnomenaと、東洋大学でキリンなど大型哺乳類の身体構造の進化を研究する郡司芽久による作品。通常、標本を触ることはできないが、これは自分の手で組み立て、実際に動かすことで、自分の関節も同じように動いていることが学べる。今回のために山中がふたりを引き合わせた。

「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」

会期:開催中~8/12
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン
www.2121designsight.jp

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