撮った風景からオリジナルの詩を紡いでくれる、世界初の「ポエムカメラ(Poetry Camera)」が登場した。思い出に残したい瞬間を画角に収めると、写真を出力する代わりに、クリエイティビティを刺激する味わいある文章を紡ぎ出す。
ポエムカメラは、アメリカのデザイナーでありプログラマーでもあるケリン・カロリン・ジャン氏と、工業デザイナーのライアン・メイザー氏がタッグを組んで開発。カメラ本体は片手で持てるサイズで、一昔前のInstagramのアイコンのような遊び心あるデザインになっている。白と赤のエネルギッシュなカラーリングだ。
メイザー氏は完成したばかりのポエムカメラを持って、公園でフィールドテストを実施。ベンチに集う4人の若者に声を掛けてシャッターを切ると、カメラ前面の出力口から写真の代わりに、感熱紙にプリントされた出来たてのポエムが出力された。
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想像力をかき立てるポエム
出力されたレシート大の紙片には、日付と時刻、そしてポエム本文が印字されている。ポエムはミステリアスで想像力をかき立てる前半から、情緒ある後半へとなだれ込む。実際の詩を意訳すると、このようになる:
“木の板に並ぶ 色とりどりの魂
ひかえめなグリーンの地面に 縦列駐車
笑いのみじん切りを ディップしたなら
葉っぱの天井に小包を通し パンくずをふるい分け
まだらに踊る葉たちを 日差しは抜けて
冷たい鉄の腕を 裸の脚が撫でる
盗まれた帽子が 軽やかに渦巻く
風の中でからかうように
友情は一瞬の影 銀色の輝きに注いで”
不思議な面持ちで聞いていた4人だが、最後まで読み上げるととても気に入ったようだ。「すごく愛らしい!」「これは面白いね!」と拍手を送る。
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冬の日の情景をうまく再現
4人はダウンジャケットやマフラーを着込んでおり、まだ肌寒い冬のある日の撮影だった。日暮れが迫る公園の空気感を、詩全体にうまくちりばめた。
カメラは前面に搭載した画像センサーで状況を分析し、特徴的な物体や状況を検出。Chat-GPT(GPT-4)にリクエストを送り、それら目立つ物体をヒントに独自の詩を読むようプログラミングされている。
今回の例では、ベンチに集う4人の友人を縦列駐車された魂と喩え、背景の木立を料理のメタファーと組み合わせたようだ。文章は1文字も入力していないが、それらしい詩ができあがった。
一般にAIの文章は独特であり、分かりそうでいて具体性がない、それでいて捉えようによっては深みを感じさせる言い回しを好んで用いる。そんな特徴が、実は詩に向いているのかもしれない。
「みじん切り」のくだりでは、聞き耳を立てていた女の子2人が「?」の表情で固まる場面もあったが、情景から友情へ導く終盤で心を動かされたようだ。
また、ダメージジーンズから覗く脚の素肌や帽子など、写ったアイテムをうまく取り込んでいる。自分のファッションが即興でポエムに反映された4人は盛り上がり、メイザー氏との会話も盛り上がった。
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発売予定は?
米メディアのテック・クランチはポエムカメラを取り上げ、「遭遇したビジュアルをもとに示唆に富む詩を生成し、写真の概念を新たな高みへと引き上げる」と述べている。先進技術と芸術的ビジョンを融合させ、両分野の可能性を広げるプロジェクトだとの評価だ。
ポエムカメラはまた、アプリを必要とせず、カメラ単独で動作するのが特徴だ。プロジェクトのウェブサイトは、「思い出の新しいつくりかた。画面も通知もアプリも必要ありません」と謳う。
一般販売されていないが、制作方法はオープンソースで公開されている。電子工作に使われるRaspberry Piと、ChatGPTのAPIの心得があれば、同じものをDIY可能だ。
写真情報サイトのペタピクセルによるとメイザー氏らのもとには、市販してほしいとの問い合わせが相次いでいる。あくまでアートプロジェクトであり、資本主義を排除したいとして「ノー」と100回ほど返答し続けたという両氏。とはいえ、101回目からは少しだけ心が揺らいでいるという。
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【動画】実際にポエムカメラを使う様子。公園で即興の詩ができあがる。
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【動画】ケリン氏も実践。「夢はタイヤに染みついて」とバイクの男性を描写。