世界最大規模のジェットコースターが駆ける…7900億円の海上テーマパーク、サウジで建設中

  • 文:青葉やまと
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Public Investment Fund-YouTube

世界でも屈指のユニークなテーマパーク計画が、サウジアラビアで進んでいる。運用が終わった油田プラットフォームを利用して作られる、「ザ・リグ(The Rig)」と呼ばれる海上パークだ。サウジアラビアの東岸沖、約40キロの地点に浮かぶプラットフォームに、世界最大級のジェットコースターを中核とするテーマパークを作り上げる。

建築面積は、東京ドームの建築面積の3倍以上となる15万㎡。述べ床面積は30万㎡に及ぶ計画だ。3軒のホテルに計800室の客室を用意し、4つのエリアに設ける11のレストランと70以上のアトラクションで、1日あたり最大1万人のゲストを収容する。年間では100万人の集客を目指す。

目玉のジェットコースターは、元プラットフォームの鉄骨の隙間を縫うように、複数の階層にまたがって走る。公式動画によるとジェットコースターのほか、ウォーターバーク、バンジージャンプ、観覧車、ゴーカートなどを会場施設に展開する。海上の立地を生かし、各種マリンスポーツも用意。ジェットスキーやスイミング、ダイビングや海上ジップラインに加え、小型潜水艇などを設ける。

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掘削装置は没入型シアターに生まれ変わる

ザ・リグの4つのエリアのうち、3つは海上に架かる足場で接続している。残る1つ「ジャッキアップ」は、やや離れた海面に独立して突き出す。このエリアは、もともとはジャッキアップ・リグと呼ばれる移動式の掘削装置だった。浮遊式の船体部分に掘削機を備え、海底に向けて下ろした複数の脚で船体の位置を固定している。

高さ106mのこのジャッキアップは、没入型シアターにリニューアルする計画だ。ザ・リグのライド・バハルジCEOは、アラブの英字紙『ナショナル』に対し、「世界初の完全没入型シアターとなり、来場者はショーを見るのではなく、ショーの一部になることができます」と説明している。

リグに足を踏み入れると同時にアクション・アドベンチャーのストーリーが展開し、テクノロジーを通じた体験の場になるという。俳優たちが迎えるほか、ARやVRを活用したコンテンツを用意する。バハルジCEOは、「座ってショーを見るだけでなく、よりライブで、より参加型の体験ができるのです」と独自性をアピールする。

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7900億円の水上パーク

本プロジェクトは、サウジアラビアが推進する「ビジョン2030」計画の一環として進められている。サウジアラビアの政府系ファンドである公的投資基金(PIF)が2021年、ザ・リグの計画を公表していた。

バハルジCEOはプロジェクト費用の明言を避けたが、英メトロ紙は「40億ポンド(7900億円)の水上テーマパーク」であり、そのスケールに「本当に度肝を抜かれる」報じた。参考として、オリエンタルランドは東京ディズニーランド(シー含まず)の総事業費を1800億円と公表している。

建設にあたり、世界のエンジニアがプロジェクトに携わっている。今年4月時点のエンジニアリングの段階で、およそ1000人が現場に投入されている。建設が本格化するに従い、さらに増える見込みだ。完成後は来場者の7割を湾岸諸国から見込む一方、国際客も3割を予定している。

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観光立国へと転換のサウジ

ナショナル紙は、サウジアラビアが原油採掘への依存から脱却するうえで、必要不可欠なプロジェクトであると指摘。サウジ経済の多様化を図るうえで重要な位置を担うと分析している。アハメド・アル・カティーブ観光相は昨年、今後10年間で観光に8000億ドル(約125兆円)を投資する方針を打ち出した。国内総生産(GDP)に占める観光の割合を、2019年の3%から、2030年までに10%に引き上げたい計画だ。

ザ・リグが完成すれば、かつて産油国の象徴であった海上プラットフォームを利用し、原油依存に別れを告げたサウジの新たな象徴となる。

サウジのメガプロジェクトについては4月上旬、線形のガラス張り都市の建造計画「ザ・ライン(The Line)」が当初計画比で98%以上縮小されると報じられた。4月下旬になって、サウジアラビアのファイサル・アル・イブラヒム経済相が米NBCに対し、当初計画から変更はないとして報道を否定している。

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【動画】ザ・リグ公式動画。海上に4つのエリアを建設する。