ボタンひとつで屋根から発進…ドローン搭載EVが中国でトレンドに!?

  • 文:青葉やまと

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XDrones VFX-YouTube

中国の高級自動車ブランドが、カメラ搭載の小型ドローンを搭載した電気自動車(EV)を発表した。EVとドローンの組み合わせで、先端技術に心惹かれるガジェット好き高所得層の心をわしづかみにしたいねらいだ。

新たな試みをリードするのは、世界最大のEV企業であるBYDだ。同社は中国市場において、テスラの強力な対抗馬でもあり、新しいもの好きたちから支持を得ている。BYDの高級オフロードSUVである「Yangwang(ヤンワン、仰望) U8」に、ドローンを格納するオプションを用意した。

このオプションでは、車体のルーフ(屋根)内部に専用ドックを確保し、ドローンを常時収容する。ドローン使用時は車載インフォテイメント(運転席横のタッチ画面)上のボタンに触れると、ルーフの後ろ半分が後部へとスライドし、大型ハッチが出現。母艦から航空機が発進するかのように、ドック内部で待機していたドローンがクルマから上空へと飛び立つ。

愛車の勇姿を手軽に記録

ドローンを放つことで、走行中の自車の映像を上空からの俯瞰で撮影することが可能だ。愛車がオフロードを征く勇姿を手軽に映像に残せたら……という需要は少なからずあるだろう。

米シアトル・タイムズ紙によると、ドローンはクルマの走路を追跡するモードがあらかじめ設けられており、高解像度の画像および動画を記録できる。また、周囲の空撮画像をリアルタイムでインフォテイメントから確認することも可能となっている。

発進だけでなく、帰艦も自動でこなす。デモの様子を収めた動画では、上空を飛行しているDJIドローンが停車中のU8の位置を正確に捉え、ルーフに開いたハッチへと戻ってゆく。

映像クリエーターや、趣味でTikTokなどのソーシャルメディアに動画をアップロードしている人々にとって、愛車を非日常的な角度から捉えた新鮮なショットを撮影する機会となりそうだ。

カメラ・写真関連メディアのペタピクセルは、ドローン搭載EVのアピールポイントとして、BYDが「車を運転する自分の姿をクールに撮影できるようにし、顧客を呼び込もうとしている」のではないかとみる。

発進準備のプロセスも一興

ドック内には小型カメラが用意されている。発艦作業中、薄暗いドック内をシャフトに載ったドローンが水平に運ばれ、ハッチが開放され飛び立ってゆく様を、インフォテイメント画面からリアルタイムで確認できる。

金属パーツの入り組んだドック内をドローンが移動する様子は、ちょっとしたSFや特撮映画を見ているかのような錯覚をもたらす。遊び心あふれる演出だ。

ドック内には3つの予備バッテリーが用意され、常時充電される。発艦時にルーフ内部でアームが動作し、充電済みのバッテリーが1つ装填されるしくみだ。飛行時間の短いドローンにおいて、バッテリー切れの心配を軽減する。

搭載するドローン本体は中国DJI社製だ。ドローン市場で世界シェア7割以上を占める同社との提携で実現した。日本で実売20万円台後半の高級ドローン「Mavic 3 Pro」を搭載する。

なお、U8自体もBYDのラインナップでプレミアムモデルに位置づけられる。ベース価格は109万8000元(約2300万円)となっている。

ほかにも進むドローン対応

U8のほか、米テックメディアのワイアードは、中国・吉利(ジーリー)傘下で若年層向け自動車に注力するLynk & Coがドローンへの対応を進めていると紹介。

プラグインハイブリッド(PHEV)のコンパクト5ドアSUV「06 EM-P」において、近日配布された車載システムのアップデートにより、インフォテイメントからDJI製ドローンの操作が可能になった。

こちらは車体から発艦するわけではないが、対応のドローンを車体ボンネットに置いて起動することで連携がスタート。水上に架かる橋を爽快にドライブする様子や、曲がりくねった山道を抜ける一場面など、遠出中のワンシーンを上空から映像に残す。

あえて醒めた見方をするならば、ドローンはクルマに必須の機能ではないともいえる。しかし、EVやハイブリッドの普及が進みつつあるいま、なにかひとつ抜きん出た個性を追求し、各社は差別化を図っているようだ。

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【動画】U8のルーフからDJIドローンが飛び立つ。

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【動画】帰還も自動で。停車中のU8の位置を正確に捉える。

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【動画】06 EM-Pもドローンとの連携に対応した。