再生可能エネルギーとして期待されている、太陽光発電や風力発電。その一方、普及が進むにつれて課題も見えてきた。

設置場所を海上にすれば、数々の課題を一挙に解決できるのではないか——。イタリアで野心的なプロジェクトが動き出した。プロジェクトは「コリリアーノ・プロジェクト」と呼ばれ、イタリア南部沿岸のイオニア海沖にて進行中だ。洋上にすることで、用地確保の問題をクリア。太陽光の発電効率も高まるのだという。

コリリアーノ・プロジェクトは、オランダ・ロッテルダムの海洋太陽光発電会社「SolarDuck」などが、総出力540MWのハイブリッド型浮体式太陽光・風力発電所を開発している。2028年の稼働開始を目指す。

既存施設の100倍規模

洋上に浮遊する太陽光発電は、「洋上浮体式太陽光発電（OFPV）」と呼ばれる。アメリカの隔月刊エネルギー誌『オフショア』によるとコリリアーノ・プロジェクトでは、浮体式浮体式太陽光発電で120MW、同風力発電で420MWを確保。総出力は540MWとなる。

海上での荒波に耐えるため、太陽光パネルは水面から3メートルの高さに保たれる。台座は浮遊し、水面に合わせて上下するしくみだ。北米誌『ノース・アメリカン・ウインドパワー』によると、浮遊式の風力タービンは28基を設ける。

世界経済フォーラムによると2022年7月、浮遊型の太陽光発電施設として当時ヨーロッパ最大となる施設がアルケバ貯水池に登場した。1万2000枚のパネルを組み合わせ、5MWを出力する。風力との合計で540MWを出力するコリリアーノ・プロジェクトは、この108倍の規模となる。

暑いと発電効率が落ちる…太陽光の弱点を解消

発電場所を洋上とするメリットはどこにあるのか。先行事例を紐解くことで、その利点がみえてくる。

先行事例として、オランダの湖に浮かぶPROTEVS太陽光発電施設がある。180枚のソーラーパネルが湖上に浮き、円形の施設を形成している。家庭用の太陽光パネル1枚で0.2kW程度のところ、PROTEVSはシステム全体で73kWを出力する。

発電施設としては比較的小規模の部類だ。だが、PROTEVSの本質は、従来太陽光発電が抱えていた課題を実験的に解決している点にある。

新技術を解説する海外YouTubeチャンネルのイノベーティブ・テックス（登録者45万人）は、PROTEVSの最大の利点は、発電効率にあると論じる。PROTEVSが効率良く動作するためには、従来のパネルと同様、温度の制限がある。

一般に太陽光パネルが最も効率良く動作するには、パネル本体の温度を15〜35℃の範囲内に保たなければならない。だが、最も発電量の上昇が期待できる晴天が続くと、温度は65℃にも達してしまう。せっかくのピーク時に、効率の良い発電が行えない状態だ。

そこでPROTEVSでは、周囲の豊富な海水を利用してパネル本体を冷却。温度の上昇を抑えることで、従来よりも発電量を15％向上するという。

水上を自在に回転、40％の効率向上

また、PROTEVSは円形かつ水面に浮いている特性から、施設全体を容易に回転できる。太陽の動きに追随し、全体がひまわりのように回転することで、その時々で最適な角度で太陽光を受光する。

個々のパネルにもセンサーとモーターが装備されており、パネルの上下角を自動調整する。こうしたしくみにより、固定式と比較して理論上25％発電量を向上できるという。海水による冷却効果と併せて、計40％の向上となる。

加えて、太陽光発電の普及に伴い、用地の問題が深刻化していると同チャンネルは指摘する。都市部はすでに過密状態であり、設置スペースは一部の屋根などに限られる。では森林を切り拓いてパネルを設置すれば良いかというと、サステイナブルな発電法として注目される太陽光発電の本質に反してしまう。

そこでPROTEVSは、未利用の海面に注目した。森林を破壊せず海上を有効活用することで、発電と環境対策を両立したいねらいだ。イタリアのコリリアーノ・プロジェクトは、同様の利点をより大規模に追求した計画といえるだろう。

洋上浮体式太陽光発電に関しては、日本でも東京都が「東京ベイeSGプロジェクト」と題し、中央防波堤エリアの海の森水上競技場で実証実験を行っている。昨年12月に設置が完了しており、耐久性や発電量等のデータを取得する予定だ。

洋上ではメンテナンス性など新たな課題も起きると考えられるが、再生可能エネルギーの新たな形として広まるだろうか。

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