前編では、ゲッティイメージズでダウンロードされている人気のビジュアルについて、2024年と2019年を比較し、世代別に女性を描いた人気のビジュアルにどういう変化があるのか、社会的な背景を踏まえながら分析してきました。後編では、消費者の共感を生む女性のビジュアル表現のポイントを解説します。
■日本の消費者は「リアルで親しみやすい」ビジュアルを求めている
日本の消費者は、「現実味のあるライフスタイルや文化を正確にとらえたビジュアル」を強く望んでいます。ストーリーを無視して、例えば単に表面上の「ダイバーシティ」を反映させた人々を登場させるのではなく、登場する人物一人ひとりのユニークなストーリーを、見る人の心に届くようなニュアンスで描くことが重要です。
また、消費者自身の実生活に即し、企業やブランドの商品やサービスが自分の生活にどのように溶け込んでいるかを感じられる、自分と同じような人々がリアルに描かれているビジュアルが好まれています。親しみやすくインクルーシブ、誠実なイメージであることが、購買決定に影響を与えることもわかっています。
さらに日本の消費者は、ビジュアルを見た際、単に憧れを抱くのではなく、純粋に「感情を揺さぶられる」ビジュアルに共感することも明らかになっています。これはどの世代にも言えることで、「人間関係の深さ」を反映したものや、年齢を重ねることの美しさ、日常生活にシームレスに溶け込んでいるといったビジュアルが好まれています。脈絡のないビジュアルや、複雑な感情を適切な背景なしに描いたビジュアルはあまり好まれません。
■「多様性が表現されている」と感じる日本の消費者はわずか3%
このような調査結果にも関わらず、実際に世の中に出回る広告などのビジュアルについて、日本の消費者はどう感じているのでしょうか。近年、「多様性を反映させたビジュアル」が好まれる傾向にありますが、メディアや広告において多様性が正確に表現されていると感じている人は、世界全体で10%、日本ではわずか3%に過ぎないこともわかりました。さらに、日本の消費者の約70%は、メディアや広告は「自分と同じような人々を反映していない」と感じており、世の中のビジュアルとそれを見る人との間に大きな隔たりがあることもわかりました。
また最近では、生成AIを使った女性を広告に起用するなど新たな動きも見られるようになってきました。企業がマーケティングやブランドコミュニケーションにAIが生成したビジュアルをますます活用し始める中で、消費者が女性のビジュアルで何を見たいのか、どんなビジュアルに共感するのかということを常に覚えておくことが重要だと思います。
■消費者の共感を生む、女性のビジュアル表現のポイント
最後に、企業やブランドの広告などで女性を描く際のチェックポイントを解説します。すべての世代の女性が正確に、またインクルーシブに表現されることが重要です。
1. 多様性を表現するクリエイターやコンテンツ制作者は、あらゆる年齢層における表現の多様化に積極的に取り組み、年齢を重ねた世代の経験や視点、社会へ貢献する姿がビジュアルコンテンツに忠実に描かれるようにしましょう。
2. エイジズムと闘う
シニア世代に対するステレオタイプや偏見に挑戦し、エイジズムとその社会への影響についての認識を高めましょう。年齢を重ねることを肯定的に捉え、X世代やブーマー世代の活力や知恵、功績を表現しましょう。
3. 世代を超えたストーリーテリング
異なる年齢層のつながりや共通の体験を強調する世代間のストーリーテリングを押し出しましょう。世代を超えた共感と理解を育むことで、メディアコンテンツはより結束力のあるインクルーシブな社会に貢献することができるでしょう。
4.「エイジフレンドリー」の活動を支援する
高齢者の特性を考慮し、すべての年齢層をよりインクルーシブに表現することを提唱する活動やキャンペーンに投資しましょう。ビジュアル描写とストーリーテリングの実践に前向きな変化をもたらすため、団体、擁護団体、業界関係者と協力していきましょう。
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Getty Images/iStock クリエイティブ・インサイト マネージャー
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。
ビジュアルメディアの学歴を持ち、映画業界に従事。2016年からはGetty Images/iStockのクリエイティブチームに所属。世界中のデータや事例をもとに、広告におけるビジュアルの動向をまとめた「Creative Insights」を発信。多くのクリエイターをサポートしながら、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。