マイスターシュテュック100周年、 モンブランの新作が発表に!

  • 文:髙田昌枝(パリ支局長)

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アルプスの山々を背景にした、象徴的なデスクのインスタレーション。

モンブランの象徴であるマイスターシュテュックが、今年、誕生から100年を迎える。100周年の幕開けを告げるモンブランの新作発表展示会が、1月、19世紀の昔にスペイン王室の邸宅だったパリのラ・ギャラリー・ブルボンで開催された。

凱旋門からセーヌに向かって南へ伸びるアヴニュー・マルソー。19世紀の邸宅の中庭に足を踏み入れると、モンブランのマークとマイスターシュテュック100周年のロゴを掲げたキヨスクに迎えられた。館内には、アルプスの山々を背景に抱いたデスクと、2023年のキャンペーン「ライブラリースピリット」を踏襲する図書室のインスタレーションが広がっている。

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モンブランのロゴ入りキヨスクがお出迎え。

 

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図書室風のインスタレーション。
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デスク上のスタイリング。

 

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「この展示会場を見た時、映画のセットが思い浮かんだ」と、アーティスティックディレクターのマルコ・トマセッタが言うように、展示会場は、物語のあるデザインであふれていた。メゾンのクリエイションを担って4年目を迎えた彼に、モンブランへの想いをきいた。

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アーティスティックディレクターのマルコ・トマセッタ。

――モンブランの最初の思い出はいつのことでしたか?

子どもの頃に父のデスクで見たペンです。誰にとっても、父親のデスクは迂闊に触れない特別な場所だと思いますが、モンブランは一目でわかるペンだったことを覚えています。
僕の最初のモンブランは、レオナルドのスケッチペンでした。2002年に、フェンディで働いていた当時、アレッサンドロ・ミケーレがプレゼントしてくれたもの。20年以上たったいまでも使っています。これはデッサン用ですが、文章もたくさん書きます。僕は小さい頃から映画が好きで、実は作家になりたかった。結局モードの世界を選んだのは、さまざまな表現ができる分野だと思ったからです。映画はいまもとても好きで、僕のコレクションはいつもどこか映画的なエスプリがあると思っています。この展示会も、ちょっと映画のセットのようでしょう?

――会場のデザインにもメッセージや物語が感じられますね。

この会場を見た時に、映画のセットが思い浮かんだのです。モンブランというブランドに映画のエスプリを取り入れようと思いました。コレクションを紹介するシナリオは映画的です。今年はマイスターシュテュックの100周年。ですから映画でブランドを語るのにいいチャンスだと思っています。映画は時間を超えたアート。昔の映画を見て、いまのアイデアを得ることもあります。
これから、モンブランを語る、時を超えた映画をつくりたいと思っています。映画は、今後100年に向けてのブランドのビジョンを語るシナリオというわけです。モンブランというブランドが普遍であるのと同じように。マイスターシュテュックはこれからの100年も歴史を刻み続けていかなくてはならないものです。なぜなら、書くことは人類にとって非常に大切なことだからです。

――デスクのインスタレーションにはどんな思いがありますか。

デスクは非常に重要なメッセージです。現代人は、ペンもスマートフォンもコンピュータも持っていて、デスクにはテクノロジーと伝統の両方が置かれています。モンブランは現代と対話する歴史的なブランドですから、デスクの上で、全コレクションをプレゼンテーションすることができます。また、デスクは人それぞれのパーソナリティを表現します。家族の写真、本、花やキャンドル、コンピューターやペンがある。誰もが持っている、小さな自分の個人的なスペースです。

――クリエイションのインスピレーションはどこから得ていますか?

ブランドを尊重する意味で、アーカイブをとても大事にしています。モンブランには100年の歴史を持つ素晴らしいアーカイブがあり、コレクションの準備のために、年2回は必ず訪れています。中でも最もインスピレーションを与えてくれるものと言われれば、このマイスターシュテュックのフォルム。とてもエレガントで、アイコニックです。手にとってサインすることを、重要なジェスチャーにしてくれます。

――マイスターシュテュック100周年への想いを、今回のコレクションにどう表現されたのでしょうか。

特にレザーグッズに、100周年を祝うデザインを取り入れました。マイスターシュテュックはこのコレクションの出発点。ニブ(ペン先)のフォルムをコレクション全体に表現しています。ニブは、モンブランのシグネチャーなのです。

 

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モンブラン 4810 コレクション。今秋入荷予定。 

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モンブラン マイスターシュテュック コレクション。4月入荷予定(一部未入荷)。

 

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――フェンディ、プラダ、グッチ、ルイ・ヴィトンなど、ファッション系のハイブランドでの経験が豊富なマルコさんですが、モンブランという老舗ブランドに何をもたらそうと考えていますか?

たくさんのブランドの仕事をしてきましたが、常にアーカイブを大切にしてきました。アーカイブは、ブランドにタイムレスな心を与えるものです。僕は、ファッションはリズムだと思っています。そして、ファッションという考えはブランドからアイデンティティを奪うこともあります。歴史あるブランドでアーカイブやコードを持っているのに、ブランドの何かを変えなくてはいけないと考えて混乱させてしまう。モンブランは偉大なイメージ、文化的な側面と素晴らしいアーカイブを持つブランドで、ファッションではありません。僕はブランドが過去に既に持っていたクリエイティブの力を復活させているだけなのです。
たとえばエクストリームは非常に若いコレクションですが、世代を超えています。スーツ姿で自転車に乗っているニューヨーカーが、エクストリームのバックパックを持っている。僕がやっているのは、モンブランの各アイテムにさらに広いビジョンを与え、可能性を広げることだと思っています。


――万年筆から始まったモンブランにとって、レザーグッズとはどんな存在なのでしょうか。

1920年代のアーカイブに、モンブランにとっての最初のレザーグッズが登場しています。それはマイスターシュテュックを守るためのケースでした。僕はその伝統を受け継いで、現代化しています。レザーグッズはモンブランにはずっと存在し、これからも存在し続ける。いま、バッグを持たない暮らしは考えられません。レザーグッズは、デスクにあるもの全てをプロテクトする存在なのです。
レザーグッズをデザインする者にとって、時を超えてアイコンとなるようなバッグをデザインするのは大事なことです。僕は、自分が作るものはすべてタイムレスだと思っています。ワンシーズン限りのものではありません。現在のところ、モンブランのアイコンは万年筆。僕がつくるレザーグッズの中で、どれがアイコンになっていくかは、これからお客さまが決めてくれるでしょう。

問い合わせ先/モンブランお客様サポート 
TEL:0800-333-0102
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