床が綺麗になる様子を可視化…ARヘッドセットのアイデア活用法、掃除タイムがすっきり爽快に

  • 文:青葉やまと

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Boumen Japet-Shutterstock

ARヘッドセットを活用し、掃除をより効率的かつ楽しくするアプリが誕生した。ARヘッドセットの視界上に、掃除機を走らせた場所を視覚的に表示。みるみるうちに床の色がきれいになっていく様子がなんとも爽快だ。

「スペーシャル・バキューミング(空間バキューミング)」と名付けられたこのアプリは、Meta社のVR/ARヘッドセット「Oculus Quest」用に開発された、実験的アプリだ。起動すると家の中の床を自動で認識し、まずは床面全体がグリーンに塗られた状態で表示される。

続いてDysonなどのスティック型掃除機を走らせると、掃除機できた箇所は床面のグリーンが解除され、通常の床の色に。まるでペンキ汚れが落ちるように、ぐんぐんと減っていくグリーンが楽しい。インクを放つ清々しさで人気となったゲーム『スプラトゥーン』の逆版といったところだろうか。

掃除のムラをなくす実用性

使って楽しいだけではなく、実用性も高い。どこの掃除が済んだのかはっきりとわかるようになっているため、部屋の片隅を掃除し忘れたり、すでに綺麗な場所を何度も重複してかけたりといったムダを防いでくれる。

開発したのはカナダのeコマース企業「Shopify」でAR/VRエンジニアとして働く、ダニエル・ビューチャム氏だ。現時点でアプリは個人的なプロジェクトであり、一般に配布されているわけではないのだが、家での掃除時間をより楽しくしようと精力的に取り組んだ。

ビューチャム氏が「吸い残しは過去のもの!」としてXに動画を公開すると、たちまち話題に。公開から5週間で2000万回以上再生される注目を集めている。

テック・カルチャーサイトの「トレンド・ハンター」は本アプリを、「ARの助けにより、日常的な雑用を変えることができるという、その方法の一端を垣間見せてくれた」と評価している。

また、楽しみながら用事をこなせる「ゲーミフィケーション」の意味でも有効だ。テックサイトのニュー・アトラスは、「VR/ARヘッドセットがますます一般的になるにつれ、現実世界で起きていることを“ゲーム化”するさまざまな道が開かれるだろう」と述べ、今後このようなARアプリが多く登場するのではないかとの見方を示している。

原理は? ヒントは動画の中にあった!

動画にはテクノロジーに興味を持つ人々からの賛辞や質問など、1000件以上のコメントが押し寄せた。

元建築家で、XR(VR/ARと現実世界との融合)技術を研究するアレックス・コロンビー氏は、原理が気になったようだ。「先端のトラッキングはどうやっているの?」との質問を投げかけている。

ビューチャム氏が「よく見て……」とヒントを出すと、別のユーザーが動画をたんねんに確認。その結果、掃除機の持ち手の部分にQuestのコントローラーが固定されていることがわかった。コントローラーのモーションセンサーを通じて掃除機の姿勢を解析し、ヘッドの走行位置を推定しているようだ。

原理としては掃除機のヘッドを画像認識しているわけではないが、ヘッドの「通った」「通っていない」の判定は十分に正確にできている。さすがはARエンジニアといったところだろうか、正確に姿勢認識できる特性をうまく活用したアプリとなった。

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Ver 2.0も出た

ソーシャルメディアでの大反響を受けてビューチャム氏は、バージョン2.0を開発した。以前のバージョンでは床面がグリーンに塗られていたが、新バージョンでは床一面に輝くコインが撒かれている。

ゲーム内でよく見かけるコインのように、派手なゴールドに輝きながら回転しており、おもわず片っ端から集めたくなってしまうような見た目だ。掃除機のヘッドを走らせると、付近にあるコインが吸引力に引き寄せられてずるずると集まってくる。

そのままヘッドを走らせると、通過した場所のコインがごっそりと収穫される。ヘッド付近には、これまでに獲得したコインの総数がスコアとして表示される。

すべてのコインを集めようと夢中になっているうちに、いつのまにか床面すべてが吸い残しなくクリーンになっているというアイデアだ。

一般配布への期待が高まる

米テック系ジャーナリストであり、Appleの未発表製品情報などを的中させているヴァディム・ユーリエフ氏は、このプロジェクトの実現に期待を寄せているようだ。「どこでダウンロードできます? TestFlight(ベータ版配布プラットフォーム)に上がっていますか?」など質問を寄せている。

また、コインを使った2.0のバージョンに対しては、AR/VR開発スタジオの共同創業者であるデイヴィッド・マラク氏が興味を示した。「ソニックのスキン(外観変更セット)もほしい!」とのコメントを寄せている。

スペーシャル・バキューミングのARアプリは、現在のところはビューチャム氏の個人プロジェクトに留まる。もし将来的に製品化され、コインのほかにもさまざまなスキンが登場するようになれば、毎週のようにスキンを変えて新鮮な掃除体験が楽しめることだろう。

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新アプリで床掃除が爽快体験に。

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コインを集める新バージョンも発表された。