椅子研究家・織田憲嗣が厳選した100脚からデザインの歴史を紐解く『椅子とめぐる20世紀のデザイン展』が開催【Penが選んだ今月のデザイン】

  • 文:高橋美礼(デザインジャーナリスト)
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展示は1900年代からスタートし、その時代を象徴する名作椅子を中心に5つの部屋をまじえて構成される。左:「バルセロナ・チェア ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ 1929」 右:「チェアLCW チャールズ&レイ・イームズ 1945」 photos: Kentauros Yasunaga

椅子研究家である織田憲嗣が長年かけて収集、研究を重ねたコレクションから厳選した、100脚の名作椅子を軸にデザインの歴史をひも解く『椅子とめぐる20世紀のデザイン展』。アール・ヌーヴォーに始まり、バウハウスでのデザイン革命を経て、ミッド・センチュリー、イタリアン・モダンへと広がり、ポストモダニズムの興隆に至る100年間を総覧できる、貴重な企画展となっている。展示では椅子だけでなく、食器、インテリア製品、キッチン用品、家電、事務用機器などをまじえ、年代順に追いながらデザインと生活の関係性が解き明かされてゆく。

昨年、同会場にて開催された『ていねいに美しく暮らす 北欧デザイン展』も記憶に新しいが、今回はその時に出品された400点とはまったく異なる構成であることにも期待が高まる。

展示構成にも携わる織田は、「前回会期中に今年も別の企画を、という依頼を受け、準備期間がほぼないながらも、開催する以上は来場者にがっかりされないよう工夫しました」と話す。

「北欧展では全体の1/3が椅子でしたが今回はそれを逆転させ、2/3を椅子に。椅子のデザインにはその時代の精神や科学技術の進展が反映されています。特に20世紀は多くの美術運動とともに、最もデザインの花が開いた世紀。戦時下では軍需として新素材や加工技術が生れ、戦後に家具や幅広い生活デザインへと転用されるようにもなりました。100年間でいかに多様なデザインが開花したか、実物を見て感じ取ってください」

実はワンセット、昨年の色違いを出品している展示物がある。それはフィンランドのデザイナー、カイ・フランクの代表作で、日本でも人気の食器「キルタ(後のティーマ)」。果たしてその色とは? そんなマニアックな見方で楽しむのもよさそうだ。

『椅子とめぐる20世紀のデザイン展』

会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
開催期間:2/29~3/18 
開館時間:10時30分~19時30分(最終日は~18時) ※入場は閉場30分前まで
料金:一般¥1,200 
www.takashimaya.co.jp/store/special/20thcenturychair/index.html

※この記事はPen 2024年4月号より再編集した記事です。