もろくてたくましい「野草」のようなアートがテーマ…『第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」が開催

  • 文:青野尚子(アートライター)
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ヨアル・ナンゴ『GIRJEGUMPI: The Sámi Architecture Library in Jokkmokk』2018年 photo: Astrid Fadnes

2001年に始まり、今回で8回目になる「横浜トリエンナーレ」。アーティスティック・ディレクターを務めるのは北京をベースにするリウ・ディンとキャロル・インホワ・ルーだ。彼らは中国の詩人、魯迅がいまから約100年前に書いた詩集『野草』から「野草:いま、ここで生きてる」とのテーマを定めた。人間と同様にもろくて無防備だけれど荒野でも生き残り、繁殖する野草のたくましさがこめられている。会場は約3年間の改修閉館を経て再開館する横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKOなど。あわせて横浜駅から山手地区にかけての広いエリアで「アートもりもり!」と称された展示やプログラムが行われる。

参加作家には日本で初めて紹介されるアーティストも多い。そのうちのひとり、ノルウェーのヨアル・ナンゴはトナカイ遊牧民サーミ族の血をひく。現地の素材を取り入れた仮設の構築物は、環境問題を資源の循環によって解決することはできないか、という提案だ。アメリカ人トランスジェンダーであるピッパ・ガーナーは、広告が打ち出す男らしさ・女らしさの“規範”によって生じる「生きづらさ」を感じてきた自らの経験をもとに作品を制作している。ルンギスワ・グンタは南アフリカにおける家父長制や植民地主義に起因する不平等をあぶり出す。

今回のトリエンナーレは現代アートだけでなく、戦後の東アジア復興から生まれた作家たちの想像力や1960年代の政治運動、80年代のポストモダニズムにも目を向ける。この100年に私たちが見てきたこと、そしてこの数年に経験してきたパンデミックや戦争をアーティストはどのように読むのか。「アートの名のもとに友情でつながる世界を想像する」というアーティスティック・ディレクターが見せる世界の姿を確かめよう。

『第8回横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」』

開催期間:3/15~6/9
会場:横浜美術館、旧第一銀行横浜支店、BankART KAIKO、クイーンズスクエア横浜、元町・中華街駅連絡通路
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(6/6~9は20時まで) ※入場は閉場の30分前まで
定休日:木曜日(4/4、5/2、6/6を除く)
料金:一般¥2,300
www.yokohamatriennale.jp

※この記事はPen 2024年4月号より再編集した記事です。