目利きにセンスあり!いま行くべき個性派書店とブックホテル

  • 写真:河内 彩、齋藤誠一、吉田 塩
  • 文:𠮷川明子

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書店が年々減りつつある一方で、ユニークな選書が特徴の独立系書店も誕生している。最近オープンまたはリニューアルした注目の書店とブックホテルを紹介する。

Pen最新号は『東京がおもしろい!』。都市は新陳代謝を繰り返し、常に変化し続ける。世界屈指のメガシティ、東京はなおさらだ。アフターコロナのいま、気がつけばあちこちで新しい動きが起きていた。世界中の人々を惹きつける新旧混じり合うこの都市で、いまどこへ行くべきか? 2020年以降オープンのショップからクリエイターたちのお気に入りまで、東京の“ いま”がここにある。 

『東京がおもしろい!』
Pen 2024年3月号 ¥880(税込)
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<最近オープン、リニューアルした注目の書店>

【北千住】ツェルト ブックストア

「生きるための本」を並べ、地域の交流の場にも

空間設計の柴山修平と、画家でイラストレーターの伊藤眸(ひとみ)が2023年6月から運営し、「生きるための道具」をテーマに選んだ書籍や雑貨などを販売。「私は出不精だけど、本屋だけは気兼ねなく行けます。それに、本は誰かの知恵や人生を自分のものにでき、読んだ人の“生命力”を上げられる媒体。そこで、このコンセプトに決めました」と伊藤。20年の転居時はボロボロだった元履物屋の物件を住みながらリノベーションしていき、ステッキと布だけでつくる簡易テント「ツェルト」を店名に掲げた。当初はデザイン関係の客が多かったが、最近は近所の人も訪れ、交流の場としても機能し始めている。

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水野製陶園でオーダーした黒いタイルがアクセント。棚には買い取りした古書も並ぶ。

東京都足立区本木1-19-4 1F
TEL:03-6555-3925
https://ze-lt.com

【曙橋】サカナブックス

出版社が本気を出した、魚にまつわる専門書店

約60年の歴史がある「週刊つりニュース」を発行する週刊つりニュース社が、社屋の1階に魚にまつわる本や雑貨を集めた「サカナブックス」をオープンしたのは22年7月のこと。もとは応接スペースだったが、コロナで来客も減り、なにかしたいと3代目社長の船津紘秋が発案。「釣りの本はそう多くなくても、魚に広げるとたくさんあるし、魚好きは大勢いるはず」と始めたところ、SNS効果もあり予想以上の客が訪れることに。もともとあった釣竿や魚籠を展示する釣り文化資料館の見学も合わせて、長く滞在する人も多い。個人の熱い思いあふれるZINE、魚料理の本、環境を考える本、絵本など選書は幅広い。

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「釣り文化や魚をとりまく環境は曲がり角に来ているので、魚のことをもっと知ってほしい」と、店長の船津。

東京都新宿区愛住町18-7
TEL:03-3355-6401(週刊つりニュース)
https://sakanabooks.jp

【外苑前】新建築書店|Post Architecture Books

建築専門出版社が協業で、アートブックを販売

建築専門出版社の新建築社と、アートブック専門店POSTを運営するlimArtの協業で、2022年8月にオープン。新建築社がオフィスとして使っていた場所だが、社長が「本屋をやりたい」と決断。環境、素材、人類学、都市などのキーワードごとに関連付けられた本すべてを建築書と捉え、選書をしている。「欧米ではインテリアにもなるコーヒーテーブルブックという文化があります。気に入ったものを買って部屋に置いてみては」(店頭スタッフ・小山飛日)

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外国風の住宅を建築家・乾久美子がリノベーション。白を基調とした店内にアートブックが映える。

東京都港区南青山2-19-14 新建築 青山ハウス1〜2F
TEL:050-3479-7660
https://post-architecture-books.com

【下北沢】日記屋 月日

古書から音符まで、日記を集めた専門書店

NUMABOOKS代表の内沼晋太郎が、2020年4月にボーナストラック内にオープン。店長の栗本凌太郎は、友人の鍵付き日記を読んだことで日記に興味をもつことに。スタッフ募集を呼びかけた内沼と話し、「嘘みたいにも思える日記の店を実直にやろうとしている」と感じた。日付の有無が選定基準だが、日付はないが日記的だったり、写真や音楽で表現したりしているものもある。「日記は日々を記録したものが自己表現になる面白いものなんです」と話す。

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「お客さんが日記を書き始めて本をつくり、持ってきてくれることが何回かありうれしかった」と、店長の栗本は話す。

東京都世田谷区代田2-36-12 (ボーナストラック内)
https://tsukihi.stores.jp

【代々木上原】シティライト ブック

新たな街の書店を目指し、独自レーベルの本も企画中

23年8月オープンの複合施設CABO(カボ)。プロデューサーの大谷省悟が、出版社トゥーヴァージンズから独立して書店を立ち上げようとしていた神永泰宏に声をかけ、街の書店としての機能をもつ店が誕生した。「かつてこの街にあった幸福書房のような、街の書店としてのスタンスが手本です。本を読む人が集まれる場所づくりをしたいですね」と神永。カウンターではラム酒やドリンクが味わえる。独自レーベル本の出版も目指している。

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店長の神永(写真)はビート・ジェネレーションやカウンターカルチャー系の本が好み。

東京都渋谷区上原1-32-3 CABO 102
Instagram:@citylightbook

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<思いがけない出会いが待つ、古書専門店へ>

【祖師谷大蔵】ノストスブックス

より開かれた、アートやデザインの専門店

2013年から世田谷区の松陰神社で営業していた同店が、建物取り壊しのために移転したのが21年のこと。作家の展示ができる広いスペース、天井高などに惹かれてここに決めた。オーナーの中野貴志と店長の石井利佳はともにデザイナーで、アーチ型の大きな本棚にはグラフィックデザイン、アートや工芸、建築などの書籍が揃う。オンラインでの販売も行っているが、中身を確認したい、関連本を紹介してほしい、などの理由で、店に直接足を運ぶ客も少なくない。「洋書と和書、そして新旧の書籍をミックスすることが時代や場所を超えた発見のきっかけとなり、新たなインスピレーションを生み出してもらえたらいいなと思っています」(中野)。作家の展示やイベントも積極的に行っている。

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オーナーの中野貴志。コロナ禍でオンライン販売のみの時期もあっただけに「イベントも行える広い店にしたかった」という。

東京都世田谷区砧5-1-18 祖師谷大蔵サマリヤマンション102
TEL:03-5429-6969
https://nostos.jp

【江戸川橋】コ本や

アーティストたちが運営する、書店兼プロジェクトスペース

アーティストの青柳菜摘が主宰する、2016年に創立された古書店兼プロジェクトスペース。青柳が東京藝術大学在学中、アートの業界だけでなく、もっと街に開かれた場所をつくれないか仲間と考えているなかで、古本屋というアイデアが出てきた。いまの場所に移転してグランドオープンしたのは23年4月。選書は青柳を含むスタッフ7人で、アート、カルチャー、思想史、哲学、自然、食、生活、ZINEなど幅広い。選書の基準は、「アーティストがなにかをつくるきっかけになりそうな本」(青柳)。展覧会、上映会、トーク、ワークショップなどのイベントを頻繁に開催するため、棚の多くは可動式。店名を「コ」とカタカナにしたのは、「古、個などいろんな意味をもたせたかったから。カタカナ、ひらがな、漢字が揃った並びも不思議で気に入った」という。

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店主の青柳菜摘。23年に自身の詩集『そだつのをやめる』で中原中也賞を受賞。映像作家や詩人など、クリエイティブな活動を続けるスタッフが店頭に立つ。

東京都新宿区山吹町294 小久保ビル 2F
TEL:03-6907-2239
https://honkbooks.com

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<ホテルにこもって、読書三昧の滞在を>

【神保町】MANGA ART ROOM JIMBOCHO

マンガの世界に没入し、プライベートサウナで整う

2022年9月オープンの、マンガをテーマにしたコンセプト型ホテル。BOOK HOTEL神保町の12階にある2部屋のみで、客室にはスタッフ厳選のマンガが約50冊並び、プライベートサウナを設置。新たな出合いを提供したいという思いから、知られていないけれどいい作品を心がけて選んでいるという。人気マンガとの「コラボルーム」企画が行われたことも。予約時にブックマッチングサービス(¥300)を選択すると、お薦め本を提案してくれる。

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客室は写真の真っ白な「白の洞窟」と真っ黒な「黒の洞窟」の2室。サウナ・銭湯系、グルメ系、旅系などのマンガが充実している。

東京都千代田区神田神保町2-5-13 BOOK HOTEL 神保町 12F
https://mangaarthotel.com/marj

 

【御成門】芝パークホテル

好きな本を選んで、アフタヌーンティーも

1948年創業の老舗ホテルが、2020年に約1,500冊の本を有するライブラリーホテルへとリブランド。1階のライブラリーラウンジ、2階へと続く階段を囲うように設置された約7mの大書棚、2階ホワイエの書棚のほか、客室フロアにも各フロアごとに異なるテーマでセレクトされた書籍コーナーがある。選書は銀座 蔦屋書店が担当し、日本文化を軸に、アート、建築、写真、旅行、趣味などさまざまな本が揃う。宿泊者の8割以上は外国人。客室に持ち込めるので、日本人ゲストにも「本がたくさんあるから泊まってみたい」と好評だとか。同ホテルの敷地は江戸時代、増上寺の敷地の一部で、学びの場である「学寮」があり、開業後は社交場として大人のマナーや所作を学ぶ場となった。学びに縁があるこの場所が、知見を深めるきっかけになるだろう。

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エントランス前の大書棚。ホテル利用客は自由に手に取ることができ、レストラン「ザ ダイニング」でアフタヌーンティーを味わいながら読書もできる。

東京都港区芝公園1-5-10
TEL:03-3433-4141
www.shibaparkhotel.com

  

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