あふれる情熱とこだわりも楽しい、東京カフェの最前線

  • 写真:河内 彩
  • 編集&文:岡野孝次
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産地に赴いて仕入れるコーヒー豆や茶葉に、ドリンクとの相性を考え構築されたスイーツまで。味はもちろんつくり手のこだわりが感じられる、東京の新しいカフェに出かけよう。

Pen最新号は『東京がおもしろい!』。都市は新陳代謝を繰り返し、常に変化し続ける。世界屈指のメガシティ、東京はなおさらだ。アフターコロナのいま、気がつけばあちこちで新しい動きが起きていた。世界中の人々を惹きつける新旧混じり合うこの都市で、いまどこへ行くべきか? 2020年以降オープンのショップからクリエイターたちのお気に入りまで、東京の“ いま”がここにある。 

『東京がおもしろい!』
Pen 2024年3月号 ¥880(税込)
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スペシャルティコーヒーとティーの新潮流

【中目黒】 チャバ

爽やかな朝のスタートに、ヒマラヤの風を感じるティーを

東京のモダンネパール料理ブームの先駆者であるレストラン、アディ。シェフのアディカリ・カンチャンが母国ネパールのヒマラヤ山脈の麓で出合った茶葉に感激してティーのブランドを立ち上げたのは、アディ開業の3年前、2017年にまで遡る。「周囲の山々から、風で植生の栄養分が運ばれてきて堆積した豊かな土壌。ここのお茶を飲めば、ヒマラヤの大自然の清々しい香りまでもが感じられるんです」と、そのテロワールをじっくり楽しんでほしいという願いから、22年3月にオープンしたのがティースタンド、チャバ。いちばんの人気メニューは茶葉とスパイス、牛乳をじっくりと寸胴鍋で煮出しては漉すを繰り返して完成させる「マサラチャイ」だ。これにオーガニックコーヒーを加えた「チャイプレッソ」も、朝のスタートの一杯として評判だ。

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まっすぐに延びるダークブラウンのカウンター。棚に並ぶのはブリキの茶缶。
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「チャイプレッソ」¥750 ヴィーガンライスドーナツ¥440。他にストレートティーも多数揃える。

東京都目黒区上目黒2-45-12
TEL:03-6388-5249
Instagram:@chiya_ba

【経堂】 ロー シュガー ロースト

農園ごとに異なるテロワールを、精緻な焙煎によって引き出す

英国や豪州で焙煎、コーヒー店のコンサルティングの経験を積んだ小田政志と、ポール・バセットでバリスタを務め、神保町グリッチコーヒー&ロースターズの開業に携わった小坂田祐哉。ふたりは2021年にロー シュガー ローストを創業し、羽田空港近くで焙煎所を開設、翌年に経堂へ移転してこのカフェを開業した。産地訪問とカッピングを重ねて厳選したスペシャルティコーヒーは、アフリカ、南米産が中心。農園単位でポテンシャルの高い豆を仕入れ、風味特性を引き出すべく、すべて浅煎りで提供。また「豆の精製方法で風味が異なることを知ってほしい」(小坂田)と、発酵の作用を積極的に利用するアナエロビックファーメンテーションの工程を経た、独特な甘味やフレーバーをもつ豆も多数ラインアップ。熱心なコーヒー党からも支持を受ける。

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診療所だった場所をほぼそのまま活用。木製カウンターやスピーカーは小田セレクトのヴィンテージ。
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上品で華やか、奥行きのあるアロマが特徴。「コロンビアエルパライソ農園ゲイシャ レッティ」¥1,540、バスクチーズケーキ¥600

東京都世田谷区宮坂3-9-4
TEL:03-6413-5057
Instagram:@rawsugar_roast

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コーヒーの個性も煌めくデザートとのペアリング

【池ノ上】 コーヒーカウンティ トウキョウ

焼きたてのカヌレには浅煎り、しっとり食感には中深煎りを

福岡・久留米発の人気ロースタリーが、2023年夏に東京へ初進出。オーナーの森崇顕は久留米店開業直前の13年にニカラグアの農園で住み込みで働きつつ、中米のコーヒー産地を巡ったと話す。その経験から、直接訪ねた農家の豆を中心にラインアップ。基本は浅煎りで提供するが、豆を通して生産者の人柄や土地の風土まで伝えられるよう、焙煎度合いを調整する。オープン直後に店を訪れたなら、ぜひカヌレを。焼きたての生地から立ち上がるバニラビーンズやラム酒の軽やかな香りには、爽やかな柑橘感のある浅煎りを合わせたい。一方、時間を置いて生地が馴染んだカヌレには、シグネチャーの中深煎り「ザ・エチオピア・ロースト」を。鮮やかな果実味と奥行きある飲み口が、生地の芳醇な甘味と香味をしっかりと受け止める。

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強い火力で焼き切ることで、ビターチョコに包まれたイチゴのような濃厚な果実味が出る「ザ・エチオピア・ロースト」ホット¥600、カヌレ¥450
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茶色の土壁とレンガの模様が目を引く。

東京都世田谷区北沢1-30-3 1F
TEL:03-5790-9909
Instagram:@coffeecountytokyo

【茅場町】 コイン

香るキャロットケーキには、芳しいコーヒーで

2022年12月、旧銀行の建物をリノベーションして開業した、バンク。行列のできるパティスリー、イーズのシェフパティシエ大山恵介がプロデューサーを務める複合ショップで、ベーカリー、ビストロ、インテリアショップ、フラワーショップなどが入っている。B1のカフェ&バーコインは、夜でもコーヒー1杯から利用できるとあって、界隈では貴重な存在。大山監修のスイーツも楽しめ、特にキャロットケーキが好評だ。レーズンやマンゴーなどのドライフルーツの酸味が爽やかで、カルダモンやシナモンといったスパイスの香りも馥郁と漂う生地。これには香味に秀でた一杯を合わせたい。コーヒーは、静岡エートスコーヒーと、東京ロー シュガー ローストからセレクトしたその時期のおすすめの豆をオンメニューする。

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エートスコーヒーの「イナシオ・ウルバン・ブラジル」¥800、コクと酸味の利いたクリームチーズでコーティングされたキャロットケーキ¥880
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寛げるテーブル席もあり。

東京都中央区日本橋兜町6-7 B1
Instagram:@coin_cf.sp_tokyo

【錦糸町】 バース コーヒー ロースタリー ハル

酸味の利いたチーズケーキに、クリーミーな飲み口の一杯を

東京スカイツリーのお膝元に広がる住宅街で、2021年春に開業したロースタリーカフェ。事業責任者の西村結衣ほか、スタッフはすべて焙煎士で、自身が訪れたエルサルバドルなどの豆を中心に販売。フレッシュな風味を活かすべく、浅煎りで提供する。開業当初よりスイーツにも力を入れており、23年5月には浅草橋で専用の工房が始動した。「カボチャやキャラメルなど、季節でフレーバーが変わるチーズケーキは、ミルクチョコレートに似たクリーミーな口当たりが特徴のグアテマラと相性がいいですよ」と西村は言う。また昨年12月に復活したのが、カフェ開業時に連日完売だった「あんこカヌレ」。これもコクのある飲み口のグアテマラと合わせると、生地とあんが重なって生まれる濃厚な甘味がより引き立つ。 

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「グアテマラ・ベニート・ラモス」¥570、クッキー部分にコーヒーの粉末を忍ばせ、生地にブランデーを利かせた「キャラメルチーズケーキ」¥520
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カウンターとベンチシートを備える。

東京都墨田区横川2-7-2
Instagram:@berth_haru

【幡ヶ谷】 カシキ

コーヒーにもワインにも合う、香り高きアイスクリーム

2019年に誕生したアイスクリームブランド「カシキ」。ポップアップイベントでは完売続出、22年10月にオープンしたこちらの実店舗も、開店から閉店まで、常に客足が途絶えることのない人気ぶりだ。飲食店やケータリングで経験を積んだ代表の藤田澄香曰く、自由な表現こそがアイスクリームの魅力。「旬のフルーツを用いて料理をつくる感覚で味わいを構築します。香りを大切にしたいので、スパイスやハーブ、茶葉を多用しますが、それらの個性を真っ白なミルクのキャンバスが受け止めてくれるんです」。合わせるコーヒーは、福岡のコーヒーカウンティの旬の豆から果実感ある銘柄などを採用。また酸味や塩味などさまざまなフレーバーの詰まったアイスクリームは、ナチュラルワインのよきアテにもなる。 

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塩バニラオリーブオイルとみかんラムレーズンの「アイスダブル」¥850、コーヒー¥600

  

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グレージュを基調とした店内。

東京都渋谷区西原1-13-2
Instagram:@kasiki__

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