いまチェックすべき、個性あふれる東京の都市型蒸留所5選

  • 写真:榊 水麗、澤木亮平、齋藤誠一
  • 文:西田嘉孝
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いまや200銘柄以上がリリースされる日本のクラフトジン。全国各地に蒸留所が誕生しているが、なかでも注目すべき東京の都市型蒸留所から、個性あふれる5つの蒸留所を紹介。

Pen最新号は『東京がおもしろい!』。都市は新陳代謝を繰り返し、常に変化し続ける。世界屈指のメガシティ、東京はなおさらだ。アフターコロナのいま、気がつけばあちこちで新しい動きが起きていた。世界中の人々を惹きつける新旧混じり合うこの都市で、いまどこへ行くべきか? 2020年以降オープンのショップからクリエイターたちのお気に入りまで、東京の“ いま”がここにある。 

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世界的なブームが続くクラフトジン。2018年から開催される「ジンフェスティバル東京」の主宰者であり、日本のジンカルチャーを牽引してきたトーキョーファミリーレストランの三浦武明は、クラフトジンを「ジュニパーベリーを季語とした俳句のようなもの」と表現する。EUではベーススピリッツについての規定こそあるものの、風味づけにジュニパーベリーを使うこと以外に大きな縛りがなく、つくり手たちが土地土地のボタニカル(草根木皮)を使って自由に表現するフレーバーが、クラフトジンの楽しさだ。

日本では15年に、初のジン専門蒸留所が京都で誕生。近年は焼酎蔵や大手メーカーなどのクラフトジン市場への参入も相次ぐが、いまチェックすべきは東京を中心に急増する都市型蒸留所だ。

ジンが蒸留される様子を街中で見ることができる上、カルチャーの中心ゆえのさまざまなコラボレーションなども、東京の都市型蒸留所の魅力。東京発のクラフトジンに、ぜひご注目を。

深川蒸留所【深川】

古さと新しさが混在する、深川の地に誕生した新名所

2023年春に開業した深川蒸留所。その最たる特徴が、薩摩の焼酎づくりなどに使われていた古式蒸留器を現代風に蘇らせた、ニューツブロ蒸留器だ。開発者の関谷幸樹は、1933年創業の理化学ガラス問屋の三代目。「蒸留文化を通じて理化学ガラス職人の仕事を広げたい」―そんな想いを抱えていた関谷が、ジンに特化したバーを営む“深川仲間”の小林幸太と出会い、オリジナル蒸留器の開発と同地での蒸留所開設計画をスタートさせた。
“木場”として栄えた深川の特色を表現した定番をはじめ、個性的な新作ジンも次々に発表。オープンデーでは唯一無二の蒸留器を眺めながら、ジンの飲み比べが楽しめる。

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青森ヒバなどを使った定番の「フエキ」(左)のほか、苺やカモミール、ラベンダー、コーヒー(出し殻)などを使ったジンもリリース。

 

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「自分たちのジンをまず地元で浸透させたい」と話す関谷(左)と小林。ふたりに共通するのは、深川への愛とリスペクトだ。

 

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200ℓのガラス製フラスコを中心に、4つの部品で構成されるニューツブロ蒸留器。扱いやすく清掃も容易という画期的な蒸留器だ。

東京都江東区平野2-3-15
https://fukagawa-distillery.tokyo

 

東京八王子蒸溜所【八王子】

クラシックなスタイルで、八王子から世界を目指す

樹脂製品を製造する大信工業三代目の中澤眞太郎が、2021年に開設した東京八王子蒸溜所。中澤は、“飲む香水”と称されるパリ産のジンに出合ってジンの魅力に開眼。その後、シカゴで最新鋭の機器での蒸溜を学び、帰国後に会社の敷地内で蒸溜所を立ち上げた。「自分が楽器を弾くこともあり、基礎を大切にしようと思った」―そう話す中澤が目指したのは、ジュニパーの風味が効いた伝統的なドライジン。EU基準を満たすスピリッツや王道のボタニカルでつくる「トーキョーハチオウジン」は、いまやホテルバーなどにも置かれ、世界市場にも展開されている。地元の酒好きから酒のプロまでを魅了する、八王子が誇るご当地クラフトジンだ。

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バースペースに立つ中澤。トロンボーン奏者としての顔も。

 

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左から、定番の「トーキョーハチオウジンCLASSIC」¥4,400、ボタニカルの構成を変えた「トーキョーハチオウジンELDER FLOWER」¥4,200、新商品の「トーキョースパイスジン」¥5,775(すべて参考価格)。

東京都八王子市椚田町1213-5
TEL:042-664-0578
https://hachioji-distillery.jp

 

虎ノ門蒸留所【虎ノ門】

東京のローカルを体現する、オフィス街の小さな蒸留所

2020年に開業した虎ノ門ビジネスタワーの名店街、虎ノ門横丁内にある虎ノ門蒸留所。酒食堂(居酒屋バー)併設の小さな蒸留所が掲げるコンセプトは“東京ローカルスピリッツ”。東京島嶼部の島焼酎をベースに、東京を中心とする日本各地のボタニカルを使い、東京出身の蒸留家である一場鉄平が、繊細な感性で一つひとつのジンを仕上げていく。定番品のほか、年間で十数種類がリリースされるシーズナルジンは、たとえば金木犀や月桃など、ボタニカルの香味がストレートに感じられ、ついいろいろと飲み比べてみたくなる。新たな日常酒としてのクラフトジンの楽しみ方を、東京に集う人々に広げるオフィス街の蒸留所だ。

 

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一場がひとりでジン造りを行う工房のような蒸留所。

 

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中央が定番品の「コモン(COMMON)」¥5,500。シーズナルジンのラベルを毎年異なるアーティストが手がけるなど、さまざまなコラボレーションも魅力。

東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー 3F 虎ノ門横丁 
TEL:03-6205-7285
www.toranomonhills.com

ブルーラビットディスティラリー【田園調布】

DIYで生み出された、驚きのクオリティ

スコットランド出身のマーク・ローレンス・スミスが約9坪の建物を改装し、2022年末に開いたブルーラビットディスティラリー。「設備は海外から輸入し、電気工事以外はすべてDIY。ホームセンターに通いながら2年がかりで完成させました」とスミスが話すラボのような蒸留所では、オランダ製の極小蒸留器などを使い、ジンやウオツカ、ラムまでもがつくられる。
英国と日本へのリスペクトから、英国産のヘザーの花や、柚子や煎茶といった和のボタニカルが使われるジンなど、ショップではリリースされる全商品の試飲・購入が可能。家族経営のアットホームな雰囲気も魅力的な、驚きと楽しみに満ちた住宅街の小さな蒸留所だ。

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オランダ製のスマート蒸留器「アイスティル(iStill)」。コンピューター制御での蒸留が可能。

 

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定番の「シグニチャージン」(左から2番目)をはじめ、ジンだけでも5アイテムをリリース。

東京都大田区田園調布本町57-2 大野ビル
TEL:03-3722-8616
www.bluerabbitdistillery.com

東京リバーサイド蒸溜所【蔵前】

蔵前から世界に発信される、新時代のジンカルチャー

廃棄予定の酒粕などをリユースし、新時代のジンを生産する蒸溜ベンチャーであるエシカル・スピリッツが、2021年に開いた世界初の再生型蒸溜所。業界内外で注目される若手蒸溜家・山口歩夢が、「家庭でもおいしく飲めるジン」をテーマに開発したジンシリーズ「ラスト」は、全国の百貨店やスーパーでも人気。コロナ禍で余ったビールやドーナツのロス生地、JALのラウンジで出たコーヒー粉など、エシカル素材を魅惑的なジンに仕立てるコラボも積極的に行う。
古いビルをリノベーションした蒸溜所にはショップやバーも併設。ジンを使ったカクテルと料理とのペアリングや限定ジンなども楽しめる、酒好きを魅了するスポットとなっている。

 

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オープンな蒸溜所で魅力的なジンを生む山口。

 

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左の2周年記念ジンは現在Stageのみで提供中。今年からリニューアルされるジンシリーズ「ラスト」。従来の「エレガント」(右)に、カクテルにも使いやすく香味設計された「エリジウム」が加わった。

東京都台東区蔵前3-9-3
https://ethicalspirits.jp

 

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