異文化体験を通して知る、時代も言語も超えた関係性

  • 文:住吉智恵(アートプロデューサー)

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『NEW HORIZON』 2023年 photo: Kuniya Oyamada

1985年生まれの荒木悠は、幼少期から日本とアメリカを行き来し、日米の文化を等価値に見て育った。これまで彼は日本と欧米諸国の文化交流の歴史を丹念に調査し、異国の文化が伝搬される過程で生じる曲解や摩擦、ひずみをテーマに、おもに映像の表現を使った領域で活動してきた。

そんな荒木の個展が青森県で開催されている。西沢立衛(りゅうえ)の設計による十和田市現代美術館は、選りすぐられた常設作品が大きな開口部のある展示室や屋外に設置され、深雪の季節も鮮やかに映える、街に開かれた現代美術館だ。

企画展スペースで行われている本展で、荒木は4点の新作映像を含む8作品を発表。なかでも現地で制作した44分の映像作品『NEW HORIZON』は見応えがある。地域の小中学校で英語を教える6人の外国語指導助手(ALT)へのインタビュー映像が本作の縦糸をなす。アメリカやカナダ、南アフリカなどから派遣されたALTは、多くがアニメなど日本文化に興味があり、日本を赴任地に希望している。それでも東北の地方都市での暮らしは、慣習や国際意識の差異、依然としてガラパゴス的な日本の英語教育への違和感といったカルチャーギャップに満ちている。

一方で横糸を織りなすのが、江戸時代に鎖国状態の日本に密入国し、やがて通訳者育成に貢献したアメリカ人、ラナルド・マクドナルドのモノローグだ。ここで語られる異文化体験の強烈さや珍妙さは時代背景が変わっても大差ない。同時に感銘を受けるのは、19世紀と21世紀の異邦人がともに教え子や住民たちと心を通わせる喜びを語る場面だ。人と人との関係性が言語・非言語を超えた知性と感性に培われること、そして荒木が彼らと自身の人生を重ね合わせていることを知るのである。

『荒木悠 LONELY PLANETS』

開催期間:~3/31
会場:十和田市現代美術館
TEL:0176-20-1127
開館時間:9時~17時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(祝日の場合はその翌日)
料金:一般¥1,800(常設展含む)
https://towadaartcenter.com/exhibitions/araki-yu

※この記事はPen 2024年3月号より再編集した記事です。