世界中で愛されているインドカレーの中でも人気の高いバターチキンカレーだが、「誰が考案したか」でインドのレストランがライバル店に損害賠償を求める訴えを起こし、法廷バトルが繰り広げられている。
デリーを拠点にする有名レストラン・チェーン「モティ・マハル」は1930年代、ペシャワール(現在はパキスタンに属する)で創業。その後、インドとパキスタンが分離した1947年に拠点をデリーに移し、ダリアガンジという場所で新たにモティ・マハルを開業した。アメリカのリチャード・ニクソン大統領(当時)やインドのジャワハルラール・ネルー初代首相(同)など、世界の政治家を客として迎えてきた由緒正しきレストランだ。
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デリーの著名店、ライバル店に損害賠償求める
同店がデリーの高等裁判所に提出した2752ページにおよぶ裁判資料によると、同店創業者のクンダン・ラル・グジュラル氏が、バターチキンカレーとダルマカニ(豆を使った濃厚なカレー)の2つを考案したとしている。
しかし同じくデリーにあるライバル店ダリアガンジは、この2つの料理を考案したのはダリアガンジ創業者の祖父にあたるクンダン・ラル・ジャギ氏だと主張している。2019年創業と比較的新しい同店は、バターチキンカレーがモティ・マハルで考案されたことは認めているものの、モティ・マハルは1947年に3人のパートナーによって開店しており、そのパートナーの1人が、ジャギ氏だったというのだ。そのため、2つの料理の考案を主張する権利があると述べているという。
CBSニュースによると、モティ・マハルはダリアガンジが、モティ・マハルの創業場所であるダリアガンジを名乗ることであたかもモティ・マハルと関係があるように見せ、「一般消費者に誤解を与えるような主張をしていること」や、「ウェブサイトのレイアウトや雰囲気が酷似している」などとして、24万ドル(約3500万円)の損害賠償を求めている。
ロイター通信によると、モティ・マハルの代表、モニッシュ・グジュラル氏は、「他人の伝統を奪うことなどできない。この料理は祖父がパキスタンにいた頃に考案したものだ」と主張している。
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TVやSNSなどインド国中を巻き込む議論へ
モティ・マハルはウェブサイトで、バターチキンカレーが生まれたエピソードとして、クンダン・ラル・グジュラル氏が、余り物のタンドリーチキンの乾燥を防ぐにはどうすればいいかを考え、バターをたっぷり使ったソースに入れたことがきっかけだったとしている。
一方でダリアガンジ側が主張するバターチキン誕生秘話は、インドとパキスタンが分離した際、複数人の難民が閉店間際のモティ・マハルにたどり着き、食べ物を求めた。しかしジャギ氏の手元にあったのはタンドリーチキンだけだったため、トマトとバター、スパイスを混ぜ、その中にタンドリーチキンを入れたのが始まりだとしている。
インドでは、テレビでバターチキンカレーとダルマカニの起源を掘り下げるコーナーを設けたり、SNSでは熱い議論がなされたりするなど、この2つの料理を誰が考案したかについて国中を巻き込んでの論争に発展している。しかしCBSニュースによると、インドの裁判所の貴重な時間を無駄にしている、との不満の声もあるようだ。
デリーの高等裁判所は、ダリアガンジが反論する書類を提出する期限として4週間を設定。5月末に改めて審問が行われる予定だ。
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