目利きのキュレーションが楽しい! 新時代のデザインショップ

  • 写真:齋藤誠一、榊 水麗
  • 文:猪飼尚司

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インテリアをはじめ、日用品からアートオブジェまで、感覚を刺激し、日々の暮らしを豊かにしてくれるデザインを求めて、東京の街を探訪してみよう。

Pen最新号は『東京がおもしろい!』。都市は新陳代謝を繰り返し、常に変化し続ける。世界屈指のメガシティ、東京はなおさらだ。アフターコロナのいま、気がつけばあちこちで新しい動きが起きていた。世界中の人々を惹きつける新旧混じり合うこの都市で、いまどこへ行くべきか? 2020年以降オープンのショップからクリエイターたちのお気に入りまで、東京の“ いま”がここにある。 

『東京がおもしろい!』
Pen 2024年3月号 ¥880(税込)
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インテリアを買うには家具屋、アートオブジェを見るならギャラリー、グリーンを探すには園芸店というように、欲しいものに応じて専門店を訪れることが一般的だったが、デザインショップも近年は多様化している。

テーマごとにいいものを集めるセレクト型がこれまでのデザインショップの主流ならば、いまはオーナーやバイヤーが経験で得た知識やネットワークをフルに活かしながら、ジャンルをまたぎ、自由な感性で“いま気になるもの”に再編集をかけていくキュレーション型の時代。店内に取り揃えるアイテムもさらに厳選され、企画展の開催やオリジナルプロダクトの開発など、独自性をもって積極的に活動している。

また、コロナ禍によって生活環境を意識し、よりよくしたいと考える人が増加。そのニーズに応えるように、大手インテリアショップや主要ブランドによる新店舗のオープンやリニューアルのニュースも続々と届いている。

アトリエ・エムオー【青山】

柳原照弘がデザインした、感性を刺激するショップ

東京メトロ・青山一丁目駅に直結するビルの1階に、2023年11月15日にオープンしたアトリエ・エムオー。店内には、ミッドセンチュリーの名作家具や貴重なアートオブジェに加えて、国内外の実力派作家による現代陶芸やデザイン性の高いワードローブなど、ジャンルや時代を超えた力強い作品が並ぶ。卓越したものづくりの根底にある満ちあふれた創造力、自然と共生するシンプルな暮らしへの意識にフォーカス。ゆっくりと時間をかけて対峙し、さらに自由にイマジネーションを広げていくことができるギャラリーショップとしての活動を目指している。店舗デザインは、ヴァーグ 神戸のディレクターであり、デザイナーとしてヨーロッパでも活躍する柳原照弘が担当。外の景色と連動しながら、経年変化によってより情感あふれる空間となるよう、ディテールにまで意識を及ぼしながらていねいに仕上げている。月に1度のペースで展示替えを行い、今後はアーティストによるワークショップなども行っていく予定だ。

 

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アトリエ・エムオーの店内。裁断したレンガの小口が見せる不規則な床の模様が、空間をより印象的に。窓の外には青山通り越しに赤坂御所の緑が借景として映える。

 

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木の特性を活かした構造美を目指したジョージ・ナカシマ。1940年代に制作された、背板とスポークのバランスが特徴的な「グラス・シーテッド・チェア」(価格要問合せ)www.ateliermo.co.jp

 

OFS.TOKYO【池尻】

キギのギャラリー&ショップが、角打ちスペースを追加してリニューアル

グラフィックデザイナーの植原亮輔と渡邉良重が主宰するクリエイティブユニット、キギ(KIGI)が有志のクリエイターと共同で運営するOUR FAVOURITE SHOPがオープンから9年を経て、池尻大橋に移転。OFS.TOKYOとして生まれ変わった。従来メインで扱っていたキギのオリジナルデザインによるアイテムに加え、ジュエリーやプロダクト、ワインやフードのセレクトも充実。さらに飲食スペースも併設され、日中はコーヒーやソフトドリンク、毎週金曜18時からは角打ちスタイルでアルコールや一品料理を提供する「金角」をスタート。一方、ギャラリーもこれまで通り約5週に1度のペースで企画展を開催。グラフィック、プロダクト、アート、写真など、幅広く紹介する。会期中は出展作家が一日店長としてバーに立ち、来場した人々と自由に交流したり、キギを交えたトークセッションを実施するなど、より身近にクリエイティブの世界が感じられるようなイベントも積極的に行っている。

 

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店に入り右手にあるショップスペース。店舗デザインはキギが設計施工会社タンクと協業し、内装のディテールにもこだわりを見せている。

 

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左手は白壁が広がるギャラリースペース。2/25まで『円都市場〜岩井俊二の世界を五感で遊ぶ「キリエのうた」までを巡るPOP UP SHOP〜』を開催中。https://ofs.tokyo

 

ロウカ【幡ヶ谷】

香りとグリーンに特化した、心落ち着くコンセプトストア

京王新線幡ヶ谷駅から徒歩5分、甲州街道から水道道路に抜ける昔ながらの商店街の中に、コンセプトストア、ロウカがオープンしたのは2023年10月末のこと。同店が揃えるのは、香りにまつわるアイテムと観葉植物だ。ファッションバイヤーとして経験を重ねてきたオーナーが、衣服とは別のアングルから暮らしに潤いを与え、感覚を刺激するものを紹介したいと、嗅覚と視覚にフォーカス。帰宅した瞬間に心が落ち着き、自分自身に戻れるようなセルフケアアイテムとしてのフレグランスとグリーンを集めた。香りは国内外から15ブランドを厳選。植物はボタニカルアトリエのルスルスと協業し、室内で育てやすいものを扱っている。

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築60年の商店を建築ユニットのアリイイリエアーキテクツが改装。

 

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SAILやSCENT OF YORK.など、注目の国内ブランドが揃う。Instagram:@louka_hatagaya

 

モギ フォークアート【高円寺】

元ビームスの敏腕バイヤーが、民藝とファッションを融合

ロンドンを拠点にビームスのバイイングを長年担当し、クラフトレーベル、フェニカの立ち上げにも深く関わったテリー・エリスと北村恵子が活動拠点を東京に移し、2022年10月、高円寺にショップをオープン。目利きのふたりが自ら店頭に立ち、民藝を軸とした日本各地の焼き物のほか、世界を旅して集めたクラフト、ヴィンテージとオリジナルをミックスした服などを直接案内してくれる。ところ狭しと並ぶ逸品の数々は、思わず目移りしてしまうものばかり。24年3月には、いまの店から100mほど先に、作家にフォーカスした展示を行ったり女性服を紹介するギャラリーをオープン予定。高円寺に出かける楽しみがまたひとつ増えそうだ。

 

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市松模様のタイルフロアは、ふたりが以前住んでいたロンドンの家の浴室をイメージ。

 

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左から、1950年代のアメリカンヴィンテージを上質な日本製で復刻したオリジナルスウェット¥17,600。日本古来の蓑をモチーフにデザインされたオリジナルニット¥40,700 https://mogi-shop.com

 

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