ブランド名の頭文字「N」をふたつ並べて山の頂を象る──ノルケインのダブルNのロゴは、勇敢な登山家のようなチャレンジ精神を表している。2018年3月に創業し、そこから今日までの6年間、ノルケインはいくつものチャレンジを繰り返してきたことで、大躍進を遂げた。
ブランドを率いる若きリーダーの情熱が生み出す腕時計は、多くの挑戦者たちに支持されている。創業者でありCEOを務めるベン・カッファーと、弟で副社長のトビアス・カッファーに独占インタビューを実施。ふたりが語る新しい時代の時計づくりとは?

「スイスの機械式時計の文化を未来に継承していくことが、我々の使命」だと、ベン・カッファーCEOはインタビューの冒頭で力強く宣言した。
「高品質な完全スイスメイドの腕時計を適正な価格で提供し、若い世代に魅力を伝える。それを実現するためには、独立ブランドでなければならない。なぜなら自ら信じた道を、外野からの声を気にすることなく長期にわたって進んでいけるからです」
カッファー家は、一族の歴代が時計製作に携わってきた名門。ベン・カッファーも、ブライトリングでキャリアを積み、22歳でスイスの、その後はアジア圏のブランドマネージャーを務めてきた。そしてブライトリングがオーナー一族から離れたことをきっかけに、自分が理想とする時計を作るため、30歳でノルケインを設立した。

本社を置くのは、スイス時計産業の中心地のひとつであるビール/ビエンヌだ。
「ノルケインの協力サプライヤーのほとんどが、本社から半径60Km以内に集結しています。それらサプライヤーの経営者も世代交代が進み、我々と同世代のオーナーたちが、スイス時計の未来を拓くという情熱を共有し、一丸となってプロジェクトを進行しています」
ベンの熱い想いは半径60kmを超えた先にまで届き、2020年には頑強で高精度な量産型ムーブメントを製造するケニッシ社との長期的なパートナーシップが実現した。さらに2022年、ブランパンを再興し、ウブロを大成功に導いた時計界のレジェンド、ジャン-クロード・ビバーがノルケインの取締役会顧問に就任したことが、その年の時計界のビッグニュースとなった。
「ビバーは、自身が築き上げてきたノウハウを若い世代に伝えたいと考えていた。そし若いチームである我々は、指導者の必要性を感じていた。ビバーとノルケインとの出会いは、必然だったのでしょう。彼は、我々以上のチャレンジャー・ガイ。常に新しいイノベーションを求めています」
2022年に登場した「ワイルド ワン」は、ビバーのサポートのもとで誕生した。彼は、ノルケインに軽くて頑強な新素材の導入を求めたのだ。
「ワイルド ワンの開発プロジェクトは、我々とビバー、そして高品質な樹脂系素材を得意とするBIWI社との共同で推進しました。そしてBIWI社はノルケインが新たに望む、軽くて頑強で、さらに複数のカラーバリエーションがかなうカーボン複合材を新開発してくれたのです」
ノルケイン専用のカーボン複合材は、名付けて「NORTEQ(ノルテック)」。その比重は、スチールの約1/6、チタンの約1/3と極めて軽い。しかも生産工程で残った材料は100%リサイクル可能だという。
「実はBIWI社のマネージングディレクターは、私の幼馴染。彼もノルケインの情熱に、共感してくれたひとりです」



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ワイルド ワンのケースは、ムーブメントを格納したチタン製のコンテナを、ラバー製のショックアブソーバーに収め、その表と裏をノルテック製のパーツでサンドイッチする構造になっている。25個のパーツからなるレイヤードケースは、ビバーのアイデアである。
今回、ベン&トビアス兄弟は、ワイルド ワンのふたつの最新作を携え、来日した。1つはベンが身に着ける「ワイルド ワン ゴールド 42MM リミテッドエディション」。ノルケイン初のゴールドウォッチである。
「初めてのゴールドウォッチは、ノルケインのイノベーションの象徴であるワイルド ワンから出したかった。既存のノルテック製のダイヤル側パーツをレッドゴールド製に置き換えた以外は、ケース構造は既存モデルと同じ。優れた耐衝撃性は、しっかりと保持されています」
レイヤード構造のワイルド ワンのケースは、さまざまな素材の組み合わせが可能で、表現の幅を無限に広げる。ゴールドを用いたワイルド ワンは、ノルケインとしては異例の高額モデルとなったが、限定数99本は間もなく完売予定だという。
そしてもう1本の最新作は、トビアスが手に持つ「ワイルド ワン 42MM オールブラック」だ。
「非常に軽いカーボンウォッチであり、しかも70時間駆動でCOSCを取得するケニッシ社製の自動巻きを搭載しているにもかかわらず、価格が5000スイスフランを切っているのは、普通ではありえません。ダブルNのロゴを刻んだダイヤルは3層構造で、2時間かけてひとつずつレーザー加工しています。ノルケインの時計は、品質と価格の比が突出して優れていると自負しています」
そう、トビアスは胸を張る。

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そんなノルケインは、4月9日から開催するウォッチズ&ワンダー ジュネーブに初出展することを決めた。「大きな展示会に参加するの初めてなので、心が躍ります」と、ベンは4月の到来を待ちわびる。
創業した翌年、日本への上陸が決まった際でのインタビューで彼は、「バーゼル ワールドに出展することが夢」だと語っていた。しかしそれはパンデミックの影響もあり、かなわぬまま終わった。だからこそ、ウォッチズ&ワンダー ジュネーブにかける想いは、人一倍強い。
「会場では、まったく新しいコンセプトを発表する予定です」
スイス時計界の未来を拓く、若きインディペンデンス・ブランドの挑戦は、いつまでも続く。


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