【小山薫堂の湯道百選】第八九回“湯は、生きている。”

  • 写真:杉本 圭
  • 文:小山薫堂

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〈大分県別府市〉
別府温泉 保養ランド

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JR別府駅よりクルマで25分、1300年以上の歴史を誇る「紺屋地獄」は、自噴する鉱泥の温泉。1973年創業。

「別府温泉保養ランド」という平和な名前からは想像できないほどワイルドな光景が広がっていた。知る人ぞ知る泥湯の名湯。年季の入った建物の長い廊下を抜けると、泉質の違う温泉が広大な敷地に点在している。脱衣所で服を脱ぎ、まず現れるのが「コロイド湯」。コロイド硫黄を大量に含んでいる白濁した湯で、光の当たり方によってはコバルトブルーに見える。鮮やかな色の湯が打たせ湯となっている「滝湯」や「蒸し湯」などあるが、やはりここの目玉は二カ所ある泥湯である。

まずは屋内の地下鉱泥浴場に浸かる。乾くとパウダーになるほどの細かな泥が溶け込んだ湯は、比重が重く浮力が大きいため、宇宙遊泳をしているような気分で入浴できる。浴槽に手すりが張り巡らされ、この感覚が実に心地よい。リウマチ治療にも絶大な効果を発揮する湯は成分が強すぎるため、15分以上の長湯は禁物。小学生以下の入浴は禁止されている。

もうひとつの広大な露天風呂混浴だが、湯がここまで白濁していると、さほど抵抗なく入浴できる。歩くたびに、溜まった泥に足が“ぐにゅっ”と埋まる。最初はやや気持ち悪いのだが、慣れると逆に心地よい。実はこの鉱泥湯は、32℃前後で自噴している鉱泉、80℃で湧いている泥の源泉、そして高温で噴き出している蒸気の三つを組み合わせて最良の湯加減をつくり出しているだのという。日々違う温度で湧き出す湯は、まさに生き物。機嫌に合わせて調整する職人技あっての日本一の「泥湯」なのである。

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露天風呂の底には泥が溜まっている。

 

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屋内はコロイド硫黄泉。沸かし湯と比べて熱保有度が5倍高く、成分が濃厚で浸透が早いため、湯あたりに注意。療養目的で県外から訪れる人が多い。

別府温泉 保養ランド

住所:大分県別府市明礬5
TEL:0977-66-2221 
営業時間:9時~20時
料金:一般 ¥1,500(日帰り湯)、¥6,500(1泊素泊り)
https://hoyoland.net

※この記事はPen 2024年3月号より再編集した記事です。