日本SF界の重鎮による、職人芸と呼ぶべき掌篇小説集

  • 文:印南敦史(作家・書評家)

Share:

【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『カーテンコール』

02.jpg
筒井康隆 著 新潮社 ¥1,870

著者は本作について、「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」と語っているようだ。その真意はともかくも、これぞまさしく職人芸。名作『時をかける少女』の主人公である芳山和子を筆頭とする過去の作品関連人物が続々と登場する「プレイバック」など、「いったい、どうすればこういう発想ができるのだろう?」と感心させられ、同時にププッと笑わずにはいられない。すなわち、読者を魅了する筒井康隆的世界観はいまなお健在なのである。日本SF界の重鎮にしか書けない、職人芸と呼ぶにふさわしい掌篇小説集。

※この記事はPen 2024年2月号より再編集した記事です。