建物と自然との融合を図り、日本とも縁が深かった建築家

  • 文:河内タカ(アートライター)

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1_《 クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス 》.jpg
フランク・ロイド・ライト『 クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス』 1912年頃 豊田市美術館蔵

フランク・ロイド・ライトは、近代建築の三大巨匠のひとりだが、僕がライトのことを知ったのはサイモン&ガーファンクルの楽曲からだった。コロンビア大学で建築学を専攻していたアート・ガーファンクルが、ポール・サイモンにライトについての歌を書いてくれないかと頼んだことで、「フランク・ロイド・ライトに捧げる歌」というボサノバ調の曲が出来上がったのだ。ずっと好きな歌だったものの、正直ライトのことはよく知らないまま長い年月が流れた。しかしNYのグッゲンハイム美術館がライトの設計によるものだと知り、それまで深掘しなかったことを恥じてしまうほど偉大な建築家であることを知った。

ライトが設計した建築物は約1114にものぼり、その内532もの作品を実現させ、また日本との縁も深く、早くから浮世絵を収集し始め、日本の神道や宗教思想にも通じていた。さらに帝国ホテル二代目本館の設計を任されたことで二度目の来日を果たし、西池袋の自由学園明日館と芦屋のヨドコウ迎賓館も手がけた。実はアメリカ以外でライトの作品が残っているのは日本だけで、ル・コルビュジエの国立西洋美術館と並ぶほど歴史的価値は高い。そんなライトの代名詞が「プレイリースタイル」である。プリイリーとは「大平原」を意味し、屋根を低く抑え地面に伸び広がる水平ラインを強調したデザインだ。建物を単なる四角い箱から開放し自然との調和をはかろうとしたのだが、このような革新的なスタイルは、その後世界中の建築家たちに多大な影響を及ぼしていった。

本展では、そんな偉大な建築家のドローイングが日本初公開となる。また100年前の帝国ホテルの模型を3Dプリントのレプリカで展示。原寸モデルの住宅も設置され、ライト建築が体験できるという。

開館20周年記念展 帝国ホテル二代目本館100周年
『フランク・ロイド・ライト―世界を結ぶ建築』

開催期間:2024/1/11~3/10
会場:パナソニック汐留美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~18時(2/2、3/1、8、9は20時まで) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:水曜日(3/6は開館)
料金:一般¥1,200
https://panasonic.co.jp/ew/museum
※3/20~5/12まで青森県立美術館へ巡回予定

※この記事はPen 2024年2月号より再編集した記事です。