日本語の文字とデザインを俯瞰し、グラフィックの豊かさを再発見【Penが選んだ今月のデザイン】

  • 文:高橋美礼(デザインジャーナリスト)

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ギャラリー1ではまず、「日本語のかたちとデザイン」「戦後グラフィックデザインと文字」として近代以降の文字を軸とするグラフィックデザイン作品を紹介。写真のギャラリー2には現代のクリエイター54組による作品が、それぞれダイナミックに展示されている。

21_21 DESIGN SIGHTで開催中の『もじイメージGraphic 展』。展示空間を埋めつくすほどの言葉、タイポグラフィ、あるいは文字を扱ったさまざまなデザインが迫りくる場で体感できるのは、現代の日本語がもつ多様性や豊かさだろう。

漢字と仮名の併用、タテヨコ自在の書字、それによって広がる図像との自由な融合。均質化が進むグラフィックデザインにおいて、日本の文字文化が独特であることに可能性を見出す姿勢は、「辺境のグラフィックデザイン」という展覧会キャッチコピーから十分に伝わってくる。

日本語の文字とデザインの歴史を前提に、コンピューター上で出版物やグラフィック制作の工程の多くが行われてインターネット環境が社会インフラとして定着した1990年代以降。展示の中心となっているのは、そんなグラフィックデザインに注目して選出した、国内外54組のデザイナーやアーティストによる作品だ。書籍やポスター、看板まで含む事例を、「造形と感性」「キャラクターと文字」といった13のテーマで分類し、解説する。

展覧会ディレクターを担う編集者の室賀清徳は開会にあたり、「絵と文字が接近している文化や、振り仮名によって多義的な表現を行う文化が日本語にはある。そういった背景を大きく捉えてスターティングポイントとした」と話した。同じくディレクターを務めたのは、グラフィックの研究を行う後藤哲也とデザイナーの加藤賢策。90年代以降、コンピューターでデザインすることが当たり前になった彼らによる、等身大の視点で切り取ったグラフィックの事例そのものが興味深い。会場は、書籍のイメージと13のテーマへの扉がリンクした構成になっており、ビジュアルコミュニケーションの魅力を再発見できるに違いない。

『もじ イメージ Graphic 展』

開催期間:~2024/3/10
会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
TEL:03-3475-2121
開館時間:10時~19時 ※入館は閉館30分前まで
休館日:火曜日、12/27~24/1/3
料金:一般¥1,400
www.2121designsight.jp

※この記事はPen 2024年2月号より再編集した記事です。