世界的に評価される、タイ・バンコクのファインダイニング。最注目の3店はここだ!

  • 写真:松井聡美
  • 編集&文:藤村はるな
  • 通訳:高杉美和(P2、P4)
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アートや建築以上に、バンコクがいま世界から注目を集めているのが食文化だ。「アジアのベストレストラン50」の上位を独占するなど、独創的なファインダイニングが急増している背景にあるのは、多様な食文化が融合した地域性と“タイらしさ”の追究だ。本記事では、その中でも特筆すべき3つのレストランを紹介する。

Pen最新号は『バンコク最新案内』。再開発が進み、新たな価値を創造するタイの首都・バンコク。本特集では、各分野の最前線で活躍するキーパーソンに話を訊くとともに、訪れるべき旬のスポットを紹介。驚くべきスピードで進化を続けるバンコクには、「いま」しか見られない姿がたくさんある。

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バーン・テパ

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料理はコースの一例。南部で採れた川海老をオイルで焼き、海老味噌やナンプラーなどのソースをかけた独創性あふれるひと皿。イントロダクションコース5,296バーツ(税・サービス料込)

洗練されたひと皿に息づく、奥深きタイの食文化

バンコクのファインダイニングといえば以前はフレンチやイタリアンが中心だったが、近年はモダンにアレンジしたプログレッシブタイ料理が増えている。背景にあるのは若い世代のシェフによる“タイらしさ”の探求だ。なかでも注目のレストランが、タイ各地の食材や伝統的な調理法を取り入れた「バーン・テパ」。その料理を味わうため、世界各国からバンコクを訪れる人も少なくない。シェフのシュダーリー‘タム’テパカムは、バンコクのフードシーンの変化をどう見ているのか。

「近年、海外で修業経験のあるタイ人シェフや外国人シェフが、タイの地域性や食材の個性を再発見し、それを活かす環境が育ってきました。結果、従来なかったアイデアが誕生し、新たなイノベーションが生まれていると感じます」

タム自身も、ロンドンで栄養学を学んだ後、ニューヨークの人気レストラン「ブルーヒル」で修業した経験を、店づくりに活かしている。たとえば、彼女が同店で食のサステイナビリティに触れたことから生まれたのが、敷地内で育てるオーガニックハーブ農園だ。

「バンコクの中心部に住んでいる人は、食材そのものを見る機会が少ない。農園で育った野菜がどう調理されテーブルに届くのか知ってもらうため、キッチンのバックヤードツアーやガーデンツアーも行っています。他にはない体験として多くの人に喜ばれています」

また、店を語る上で欠かせないのがタイ料理への強いこだわり。

「タイ料理は、北部、東北部、東部、南部、中央部という5つの地域によって、素材や調理法、調味料の使い方が全然違います。店で提供する料理には、各地で私が学んだことが詰め込まれている。料理の中に息づくタイを感じてもらえればうれしいです」

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左:バンコク郊外にある店舗は、タムの祖母の家を改築して使用。敷地内には農園を営んでおり、そこで育てられた野菜やハーブ類は料理にも使われる。料理はコースのみ。 右:シュダーリー‘タム’テパカム●2023年12月にはミシュラン2つ星を獲得。タム自身もヤングシェフアワードを受賞した。海外シェフとのコラボも多数行う。
●561 Ramkhamhaeng Rd, Bangkapi, Bangkok
TEL:09-8696-9074
営業時間:18時~と19時30分~の2部制
定休日:月、火
https://baantepabkk.com

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ポトン

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2週間熟成させたアヒル肉のロースト。台座は中華料理店の回転式の円卓に着想を得て、独自開発したもの。調味料もすべて自家製。

築120年の家屋で供される、独創的なタイ・チャイニーズ

バンコクで最も予約が取りづらい店のひとつとなった「ポトン」。中華系移民という祖先のルーツを凝縮した料理で表現するシェフのピチャヤー‘パム’スントーンヤーナキットは、華系タイ人の5代目というバックグラウンドをもつ。

「昔はバンコクのファインダイニングといえば、ホテルのレストランが中心でした。昨今は、ジャンルやカタチにとらわれない店も増え、食の多様性が広がっている。それが、バンコクがフードトリップの旅先として世界中から注目される要因ではないでしょうか」

タイを含むインドシナ地域ではその名の通り、インドと中国の文化的影響を受けており、その国の料理の骨格をなしていることも少なくない。事実、カオマンガイやカオパッド(炒飯)のように中国とタイの料理が融合し、独自に発展した「タイ中華」というジャンルもある。

「店のコンセプトは、タイ・チャイニーズの文化をはじめ、私を取り巻く歴史を多くの人に〝体験〞してもらうこと。この店はヤワラート(中華街)の路地にあるのですが、ファインダイニングとしては珍しい立地です。築120年のこの建物は先祖がタイに移り住んだ時から住み続けた家で、以前は祖父が薬局を営んでいました。家族の歴史が詰まった建物です」

提供される料理も、パムが家族で食べたアヒルのローストや幼少期の好物だった蟹など、家族のストーリーが色濃く反映されたタイ中華が中心だ。そこにフレンチの名店「ジャン・ジョルジュ」などニューヨークでの修業で得た、自身の知見を見事に融合させている。

「先祖代々の家で、思い出の料理や受け継がれてきた家庭のレシピを、モダンにアレンジして再現する。そんな食の体験を通じて、文化や歴史についても理解を深めてほしいと思います」 

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左:中華街の卸問屋街の雑踏にある店舗は、中国とポルトガルの要素を組み合わせたシノ・ポルトギース建築を改築。 右:ピチャヤー‘パム’スントーンヤーナキット●2020年10月に開店。2年後にタイでは最年少でミシュラン1つ星を獲得。23年「アジアのベストレストラン50」で35位に選出。
●422, Vanich 1 Rd, Samphanthawong, Bangkok
TEL:08-2979-3950
営業時間:16時30分~20時最終入店(30分ごとの8部制)
定休日:火、水
www.restaurantpotong.com

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ル・ドゥ 

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上: 米や野菜などを海老の調味料と混ぜて食す「カオクルックカピ」をもとにしたひと皿。開業時から存在する、唯一のアラカルトメニュー。コースは4,590バーツ(税・サービス料込)から。

アジアNo.1の称号を手に、タイ文化を世界に発信

タイのローカルフードをファインダイニングに昇華させ、2023年「アジアのベストレストラン50」で1位を獲得した「ル・ドゥ」。2013年の創業以来、モダン・タイ料理の草分けとして、世界的にも活躍するティティッ‘トン’タッサナーカチョンは、バンコクの食の進化をこう分析する。

「いまバンコクは、香港や東京に次ぐ食の都として注目されています。理由は人の流入の増加や、他国より安い開業コストに目をつけた投資家が増えているからです」

また、タイ国内でシェフという職業への意識が変化し、多様なバックグラウンドをもつシェフが生まれているのも要因だという。

「私自身、家族に料理の道に進むことを反対されたことから、大学で経営学を学び、銀行に就職した経歴をもっています。でも、やはり料理への想いが諦められず、この業界に入り直しました。以来、『シェフを名誉ある仕事にしたい』と、努力を重ねてきました」

バンコクのレストラン業界をリードし、世界的に高い評価を集める「ル・ドゥ」。店名は、タイ語で「季節」を意味し、店では季節の食材、それも国産しか使用しない。そのコンセプトの裏にあるのは「タイの味を伝えること」だ。

「大切にしているのが、タイの味覚のベースとなる『塩味』『甘味』『酸味』『辛味』『苦味』のバランスです。店の料理には、タイのローカルフードをベースに、世界各国で出合った調理法を盛り込んでいますが、どんなモダンな見た目や味付けでも、いざタイ人が食べた時に、『これはタイ料理だな』と感じられる味つけを心がけていますね。伝統は発展しなければ続きません。私の料理を通じてタイの魅力を知り、『タイに来たい』と思ってくれる人が増えることを、心から願っています」

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左:創業10年を記念し、店内をリニューアル。天井からつり下がるライトは、タイ人にとって最も身近な食材である米を育む水田をイメージして設置したとか。 右:ティティッ‘トン’タッサナーカチョン●タイの名門チュラロンコン大学を卒業後、米国の有名料理学校CIAに留学。さらにMBAも取得するなど、異色の経歴をもつ。
●399/3 Silom Soi 7, Bang Rak, Bangkok
TEL:09-2919-9969
営業時間:18時~22時(月~水) 12時~15時、18時~22時(木~土)
定休日:日
www.ledubkk.com

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