「大人の名品図鑑」チェック編 #4
秋冬の季節になると俄然見る機会が増える「チェック柄」。着こなしのアクセントになり、カジュアルな雰囲気を醸し出せるのが強みだ。今季のファッションはクラシック回帰の傾向もあり、柄のバリエーションも豊富に揃う。今回は代表的なチェック柄のアイテムを取り上げ、その歴史や逸話を探ってみる。
「ギンガム・チェック」は、男性にも女性にも人気のチェック柄だ。白などの薄い地色に、一色の格子柄を重ねた模様で、縦横とも同じ太さの縞模様で構成されている。「ギンガム・チェック」をネットで検索してみると、「ギンガム・チェック」は本来は柄ではなく、生地を指す名称と解説されていることも多い。
1991年に発行された『男の服飾事典』(婦人画報社)によれば、「ギンガム・チェックの“ギンガム”とは先染め布の一種であって、ふつうたて・よこに20〜40番手の単色染糸と晒糸を使用して平織りとした、薄手の綿織物を指している」とある。「英国のマンチェスターで織られていた平織りの綿織物全般を指す言葉であった」と解説するサイトもあり、ストライプ柄を「ギンガム」と呼んでいたこともあったと書かれている。いずれにしても素材名から転じて、チェック柄の名称になったことは間違いないだろう。
「ギンガム・チェック」は英語で「Gingham」と綴るが、語源にも2つの説がある。ひとつはマレー語で縞綿布を意味する「genggang」が語源という説。もう一つが、昔から平織り布地の産地であったフランス・ブルターニュ地方のGuingamp(ガンガンと読む)が語源という説。前述の『男の服飾事典』には、登場は17世紀初頭で、1615年に発行された英国の辞典にも「ギンガム・チェック」という言葉が掲載されていると書かれている。
「ギンガム・チェック」の特徴は若々しく、明るく、清潔感を感じさせることだ。「ギンガム・チェック」がエプロンやテーブルクロスなどのインテリア用品などにも多く使われるのは、この清潔感によるところが大きいだろう。女性が「ギンガム・チェック」のアイテムを着ると、チェック柄に備わった若々しさに加えて、華やかさが香る。
女性の場合はシャツやブラウス、あるいはワンピースなどのアイテムに「ギンガム・チェック」を用いることが多いが、最近の話題作『バービー』(2023年)でもバービーを演じたマーゴット・ロビーは、ピンクの「ギンガム・チェック」のワンピースをずっと着ている。また、ミュージカル映画の傑作『オズの魔法使』(1939年)で主人公ドロシーを演じたジュディ・ガーランドが着ていたのは、ブルーのジャンパースカート。女性が「ギンガム・チェック」を着ると、とても可憐に見える。
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アメリカの老舗、インディビジュアライズドシャツ
一方、男性が「ギンガム・チェック」を着る場合は、シャツにこの柄を用いる人が圧倒的に多い。この柄はフレッシュさを感じさせるので、カジュアルだけでなく、ドレス、例えばスーツやジャケットにも合わせやすいチェック柄だ。どんな人にも似合うが、年配の人が着用すると、とても洒落て見えるのもこの柄の特徴だろう。そんな男性用の「ギンガム・チェック」のシャツの中から今回紹介するのは、アメリカで生まれたインディビジュアライズドシャツのボタンダウンシャツだ。このブランドは1961年創業で、かつてはブルックス ブラザーズのカスタムメイド、つまり注文で仕立てるシャツを手がけ、その分野のシャツとしては現在でもアメリカ国内シェア1位を誇るブランドだ。
東京・神宮前にあるユーソニアングッズストアは、世界で唯一のインディビジュアライズドシャツの専門店。アメリカ同様にカスタムメイドのシャツの注文も可能だが、すぐ着用できる既製のシャツもたくさん揃っている。その中にもちろん「ギンガム・チェック」のシャツが用意されている。平織りの滑らかなコットン素材を用い、タイドアップしてもノータイでも着られるトラディショナルなデザインだ。「ギンガム・チェック」でも大柄にしたモデルまで用意されているところは、カスタムメイドに出自をもつシャツメーカーとしての矜持を感じる。
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