ガラス作家・山野アンダーソン陽子らを中心とした大規模な巡回展がスタート【Penが選んだ今月のデザイン】

  • 文:猪飼尚司(デザインジャーナリスト)
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三部正博『伊庭靖子のアトリエに佇むガラス食器』2021年

スウェーデン在住の日本人ガラス作家、山野アンダーソン陽子。宙吹きでかたちづくる山野のガラス器は、どれもシンプルなフォルムながら、大らかさと豊かさを兼ね備えた存在のオブジェとして知られる。そんな彼女が国内初となる大規模な展覧会を開催。その展示構成は実にユニークで興味深い。

山野の発案で、写真家の三部正博とデザイナーの須山悠里とともにアートブックの制作プロジェクトがスタート。その一環として、ガラスにまつわる風景を異なるアングルから見るために、山野が国内外の18名の画家をセレクト。その画家たちが描いてみたいと思うガラス器を山野に言葉で伝え、そのメッセージをもとに山野が制作。さらに仕上がったガラス器を見ながら、再び画家が絵画を描くという。アトリエに佇むモチーフとしてのガラス食器と静物画を三部が撮影し、須山が展覧会と本のかたちへと収めていった。往復書簡のようなやりとりのなかで、それぞれが「ガラス」という存在を改めて感じ、知り、表現していく。

「高熱でドロドロに溶けたガラスは思い通りにかたちづくることができない変幻自在なもの。一方で、日常生活のなかでは、あたりを見回せばガラスはどこにでもあって、それぞれが好きに使いこなしている。ガラスがいかに自由なもので、その存在を個々がどのように捉えているのか。そんな様子を新たな手法で伝えたいと思ったのです」と山野。

本展は広島を皮切りに、東京、熊本と3つの美術館で連続的に開催されるが、巡回のたびに内容も変わり、独立した展覧会として成立するようになっている。

「アートやクラフトという文脈にとらわれずに肩の力を抜いて、鑑賞する人たちがそれぞれの思考と感覚で触れ合っていただければうれしいです」

『ガラスの器と静物画 山野アンダーソン陽子と18人の画家』

開催期間:~2024/1/8
会場:広島市現代美術館
TEL:082-264-1121 
開館時間:10時~17時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(1/8は開館)、12/27~24/1/1
料金:一般¥1,100
www.hiroshima-moca.jp/exhibition/glass_tableware_in_still_life

※この記事はPen 2024年1月号より再編集した記事です。