日本の北東北には、地元の大工や木地師らが木材を彫って制作した「民間仏(みんかんぶつ)」が数多く残る。民間仏は、素朴でユニークな造形と表情が特徴的で、江戸時代から地方の小さな村々にある民家の神棚やお堂に祀られ、日常のささやかな祈りの対象として大切にされてきた。
現在、東京ステーションギャラリーでは、北東北の暮らしが生んだ個性豊かな民間仏を紹介する『みちのく いとしい仏たち』展が開催中。高い技術をもつ工房で制作された、金色の端正な姿の本堂と違い、大工や木地師らの手によって彫られた木像のホトケさまの姿はどこかぎこちなく、親しみあふれるものばかり。煌びやかな装飾こそないものの、そのやさしくほっこりするような造形は単にユニークなだけではなく、厳しい風土を生きるみちのく(=東北地方)の人々の切なる思いがそのまま託された祈りのかたちでもある。
本展は、青森・岩手・秋田の地域の暮らしの中で、人びとの悩みや祈りに耳を傾けてきた約130点の民間仏を一堂に集め、その魅力を紹介するとともに、日本における信仰の本質を問い直そうとするものだ。8つのセクション、①「ホトケとカミ」、② 「山と村のカミ」、③ 「笑みをたたえる」、④ 「いのりのかたち 宝積寺六観音像」、⑤ 「ブイブイいわせる」、⑥ 「やさしくしかって」、⑦ 「大工 右衛門四良(えもんしろう)」、⑧ 「かわいくて かなしくて」といった、興味をそそるテーマで構成される。
みちのくの人々の心の拠り所として大切に受け継がれてきた、いとしさ満点のホトケさまたち。その歴史を感じさせる味わい深い佇まいに、あたたかな何かを感じるはず。ぜひお見逃しなく。
『みちのく いとしい仏たち』
開催期間:2023年12月2日(土)〜2024年2月12日(月・振休)
会場:東京ステーションギャラリー
TEL:03-3212-2485
開館時間:10時~18時(金曜は20時まで)※入場は閉館の30分前まで
定休日:月曜(1/8、2/5、2/12は開館)、12/29〜1/1、1/9
料金:一般¥1,400
www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition