おばあちゃんの台所で発見された“幻の名画”がルーヴルへ! 約39億円で落札

  • 文:山川真智子

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Pandora Pictures-Shutterstock ※画像はイメージです

2019年に、フランスの老婦人の自宅の台所にあった絵画が、13世紀末のイタリアの画家、チマブーエの傑作だったことが判明。オークションで2400万ユーロ(約39億円)の値がつき話題となった。歴史上貴重な作品ということで、ルーヴル美術館が資金調達に成功し、最近この絵を購入。2025年に「国宝」として展示される運びとなった。

捨てようと思っていた…鑑定で名画と判明

話題の作品は、フィレンツェの画家、チマブーエ作の『嘲笑されるキリスト』だ。25cm×20cmほどの大きさで、十字架にかけられる前のイエスを嘲笑する様子が描かれている。ガーディアン紙によれば、1280年ごろに描かれた大きな2枚折りの作品を構成する8枚の板絵のうちの1枚で、5枚はいまだに行方が分かっていないという

絵は老婦人の台所のコンロの上方に掛けられており、家の整理を機に捨てられそうになっていた。家族が念のため専門家に鑑定を依頼したところ、40万ユーロ(約6500万円)の価値がありそうだと判明。パリの美術専門家に依頼したところ、本物のチマブーエのものだと鑑定された。

落札価格が予想外の高値! フランス政府が介入

絵はフランスのオークションハウスで競売にかけられ、落札価格は当初400万ユーロ(約6億5000万円)から600万ユーロ(約9億8000万円)と見積もられていたという。ルーヴル美術館も購入を望んでいたが、匿名の買い手が入札者たちの予想をはるかに上回る2400万ユーロ(約39億円)でこの絵を確保。史上最も高価な中世の絵画となってしまった。

ユーロニュースの当時の記事は、落札者はチリのコレクターだったとしている。そのためフランス政府が名画の国外流出を防ごうと、「国宝」に指定して30カ月間輸出を禁止した。

念願の買い取り完了! ルーヴルでの公開へ

2019年12月に輸出禁止措置が取られてから、ルーヴル美術館は買い取り資金調達のため動きだした。最近になり、フランスの文化大臣とルーヴル美術館館長が、オークションの落札者から無事この絵を購入したと発表している。

『嘲笑されるキリスト』は、現在修復中のルーヴル美術館所蔵のチマブーエの傑作『荘厳の聖母(マエスタ)』ととともに、2025年前半に展示される予定だという。

ちなみに元の所有者の老婦人は90代で、自宅から介護施設に移っていた。ユーロニュースによれば、オークションの2日後に亡くなったため、思いがけず入った大金を享受することはできなかったという。また、老婦人の相続人には、900万ユーロ(14億6000万円)の相続税の支払いが課せられたということだ。

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国宝となった『嘲笑されるキリスト』。

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取得を発表したルーヴル美術館の投稿。

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『嘲笑されるキリスト』と公開される『荘厳の聖母(マエスタ)』。

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ユーロニュースによる動画。オークションの様子も。