レース途中にこっそり車で...ウルトラマラソン・ランナー、12カ月の出場禁止処分

  • 文:大村朱里

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Shutterstock-alexfan32 ※画像はイメージです

スコットランド出身の女性ランナーが、ウルトラマラソン大会で入賞。しかし後日、レース途中で車を使用したことが発覚し、英国陸上競技連盟(UKA)から12カ月の競技禁止処分が言い渡された。

追跡データから発覚「ありえない速さで完走」

始まりは、遡ること今年の4月。オーストラリア在住のジョアシア・ザクシェフスキさんは、今までにもさまざまな大会に出場した入賞歴の多いベテランランナーだ。彼女は、英国・マンチェスターからリバプールまでの50マイル(80km)ウルトラマラソン・レースに出場。見事に3位で完走し、メダルとトロフィーを受け取った。

しかし、彼女のレース追跡データを不審に抱いた運営が調査。すると、4.8km以上の距離を車で移動していたことが明らかになった。BBCによると、なんと追跡データでは、彼女が約1.6kmをわずか1分40秒で走っていたことを示していたという。

「不正するつもりはなかった」と主張をするも…

ことの経緯が明らかになると、ザクシェフスキさんは9月に、当時のレース一部で車に同乗したことを認め、受け取った賞を返却。UKAの懲罰委員会に提出された書簡の中で「車に乗って移動し、その後完走。ゴールラインを通過し、メダルとトロフィーを不適切に受け取りました」と述べた。しかし、その後のBBCの取材に対し「不正をするつもりも、レースの一部を車で完走した事実を隠すつもりもなかった」主張している。

BBCによると、ザクシェフスキさんはコースの40km地点あたりで道に迷い、足が痛くなったため、次のチェックポイントまで友人の運転する車に乗り込んだと語っている。そこで棄権することを関係者に伝えると、“ここでやめたら自分が嫌いになるよ "と言われたため、レースを完走することにしたという。また賞を受け取ったことについて、3位のトロフィーを受け取ったのは "大きな間違いであった”と話し、大会前夜にオーストラリアから到着した疲労と時差ボケの影響だと釈明した。

「写真を撮らずにメダルを返すべきだったのですが、(疲労と時差ボケで)体調が悪くぼーっとしていて、よく考えることができなかったのです」と語っている。

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「返す時間はあったのでは?」委員会は許さず...

ザクシェフスキさんは“不正をするつもりはなく、車で移動したという事実を隠していなかった”として、行動規範に違反していないと主張した。しかし、懲罰委員会は10月に声明を発表し、「レースの翌週にでも、トロフィーを返せたはずだ 」と指摘。

「たとえレース当日に脳が朦朧としていたとしても、レース後1週間は自分の行動に気づき、トロフィーを返却する時間があったはず。また、彼女はSNSにレースについて投稿していたが、一連の経緯について一切触れていなかった」と続けた。これらの言い分に同意することはできなかったようだ。

英国陸上競技連盟は、ザクレシェフスキさんに対して同連盟の管轄下にある、いかなる競技会への出場や英国代表としての出場を12カ月間禁止する裁定を下し、同期間にコーチや審判、マネジャーを務めることも禁止した。

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ザクレシェフスキさんの写真。