いまのクルマは頻繁なモデルチェンジをしないと、消費者に飽きられてしまう、と語る自動車メーカーがある。いっぽう、アウディは着実だ。最新の「アウディQ8 e-tron」なんて好例だろう。
作りのよさがクルマの価値になる。1980年代に早くもアウディは、そのことを、私たち消費者に気づかせてくれた。
ボディパネルの隙間を極力細くし、ドアの閉まる音が気持ちよく聞こえるようにし(これは大変な作業)、インテリアの操作類の質感や音にも気をつかったクルマづくり。
アウディは、時代を経ても、そのポリシーを堅持してきた(と私は感じてきた)。2023年3月に日本で発表され、秋にデリバリーが始まった「Q8 e-tron」も、それが大きな魅力のひとつだと思う。
「Q8 e-tron」は、余裕あるサイズのSUV型ピュアEV。2019年に欧州で発売された「e-tron」を「大幅にアップデート」したとアウディジャパンではプレスリリースで謳う。
技術が急ピッチで進むEVの世界のおいても、19年発売という古さを感じさせず、同時にアウディならではのクオリティ感という”武器”をそなえている。
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2023年11月に、Q8 スポーツバック55 e-tron quattro S line(長い)に私は乗って、クルマには”進化”も必要だけれど、洗練がなにより大事なのだと、理解できたような気がする。
アウディジャパンが発売した「Q8 e-tron」は車型は「SUV」と「スポーツバック」のふたつ。パワートレインは、「50」と、より高性能な「55」と、やはりふたつ。
ただし、スポーツバックは「55」のみの設定だ。
駆動用バッテリーは従来よりプラス24kWhの114kWhと、かなりの大容量。一充電走行距離がプラス78kmの501kmという。最高出力は300kW、最大トルクは664Nmに達する。
外観は、グリルと灯火類の意匠が変わった。とくに日本に導入されるのはスポーティな装いのSラインなので、グリルのデザインも標準モデルと異なる。
「シングルフレームグリル」とアウディが名付けたグリルは、標準モデルでは、全体がクロームでフロント部分を際立たせているけれど、Sラインでは輪郭もブラックアウト。引き締まった印象だ。
グリルにはまったアウディの「フォーリングス」というエンブレムも、今回、二次元的表現に改まった。これが新しいコーポレートアイデンティティなのだそうだ。
ドアを開けると、アウディならではの世界が眼にとびこんでくる。とくに印象的なのは、ダッシュボードの造型。いくつかの筐体が重ねてあるような凝ったデザインで、建築物を連想させる。
液晶モニターが3つ。いまでこそ、大型液晶モニターは”当たり前”のようになったが、先鞭をつけたのはアウディだ。e-tronが発表されたときは、未来のクルマだと感じたのを私は思い出した。
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シートにはあえて合成皮革を使用(こういう時代である)。といっても、蒸れるようなかんじはなく、からだは滑らないし、クッションは厚さを感じさせる。
体圧分布といって、シートに座った乗員の体重を一点に集中させるのでなく、うまく分散させることで、どこかが痛いと感じさせることはあまりなさそう。
リアシートも広々。外部からの音も抑えられているので、SUVだけれど、後席も居心地のいい空間になっている。急ごしらえの感じがいっさいないのは、冒頭に触れたアウディのよき伝統のようなものだろうか。
ピュアEVは、 操縦感覚も速いスピードで変わってきた。Q8 e-tronがたんにe-tronとして登場したとき、驚くほどの加速性が高かったが、スムーズさにおいては、今回たしかに「大幅」に変わった印象だ。
さきに触れたとおり、大容量のバッテリーを活かしての大トルクで、パワフルなのだけれど、それをダイレクトに感じさせるのでなく、走り出しから加速まで、パワー感でなく、気持ちよさに重点が置かれている。
乗り心地はあきらかに快適になっている。いっぽう、ハンドルを動かしたときの車両の反応は、速すぎず、もちろん遅さはまったくない。サスペンションがうまく働いて、安定した車体の動きを実現している。これもかなりよくなったと私は感じた。
全体の質感と、EVならではのスムーズな動きがうまくシンクロしているといえるQ8 スポーツバックe-tronは、一度体験してみる価値があるクルマだと思う。
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Specifications
Audi Q8 Sportback 55 e-tron quattro S line
全長×全幅×全高 4915×1935×1620mm
ホイールベース 2930mm
車重 2600kg
電気モーター2基 全輪駆動
最高出力 300kW
最大トルク 664Nm
駆動用バッテリー リチウムイオン 114kWh
一充電走行距離 501km
価格 1317万円
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