安藤忠雄/光の美術館で震撼する「ヌルの共鳴」。落合陽一の展覧会が清春芸術村にて開催中!

  • 文・写真:はろるど

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清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館『落合陽一展「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』展示風景

山梨県北杜市、西に南アルプスを望み、北には八ヶ岳が迫る風光明媚な地に位置する清春芸術村。1977年に創設者である吉井長三が、小林秀雄、今日出海、白州正子、谷口吉郎、正田英三郎、東山魁夷夫妻らと桜の季節にこの地を訪ねると、その美しさに魅せられて、1980年にアトリエ清春荘を設立する。そして翌年には集合アトリエ、ラ・リューシュを芸術家の育成の場として建設した。その後、清春白樺美術館が開館、ルオー礼拝堂が開堂するなど整備が行われ、2011年には安藤忠雄の設計によって光の美術館がオープンするなど、山梨県を代表するアートスポットのひとつとして人気を集めている。

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清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館『落合陽一展「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』展示風景

現在、清春芸術村の安藤忠雄/光の美術館では、メディアアーティストの落合陽一による展覧会、『ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続』が開かれている。ここで公開されたのが、新作の“有機的な変形ミラー”とLEDによる“ヌルのインスタレーション”だ。まず1階奥には高輝度LEDによる光の空間彫刻が設置され、その光学的性質を万華鏡のイメージのように変化させながら、鮮やかな光を放ちつつ、漆黒の闇を画面に広げている。空間全体に強く打ち鳴らせらた心臓の鼓動のような音といった、外界の音響変化に応じて呼応していく様子も目まぐるしい。

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清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館『落合陽一展「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』展示風景

 

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清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館『落合陽一展「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』展示風景

このLEDの空間彫刻のちょうど反対側の2階に展示されたのが、有機的変形機構を持つ鏡状の音響彫刻だ。シルバーの表面は伸び縮みする新素材のミラー膜にて構成されていて、LEDの作品と同様、外界の変化に合わせて変形し、その光学的・音響的性質を変化させている。滑っとした流体のような表面は人工物でありながら生き物のようでもあり、それが鏡として観客や周囲の景色を反射したかと思うと、突如伸縮しながら、何らかの液体を吹き出すような動きを見せる。そしていつしか観客はおろか、空間そのものを鏡の中に引き込むようにして展開していく。

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清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館 展示室には人工照明がなく、季節や時間とともに変化する自然光のみで作品を鑑賞することができる。

“有機的な変形ミラー”は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で落合がテーマ事業プロデューサーを手がけるシグネチャーパビリオン「null²(©Expo 2025)」の動く外装の実装実験を兼ねている。かつて見たことのないような表面の動きには度肝を抜かれるが、それも常に新奇性のある作品を作り続ける落合ならではのチャレンジングな取り組みの成果ともいえる。清春芸術村の環境を気に入り、「村の空気が良いから作品ができた」とも語る落合。ちょうど11月4日からは清春芸術村を中心とする山梨県北杜市の各所にて、『山梨国際芸術祭|八ヶ岳アート・エコロジー 2023』も開かれている。自然とデジタルはどのように親和するのかを追求する落合の「ヌルの共鳴」を、安藤忠雄/光の美術館にて震撼したい。

『落合陽一展 「ヌルの共鳴:計算機自然における空性の相互接続」』 

開催場所:清春芸術村 安藤忠雄/光の美術館
開催期間:2023年10月22日(日)~12月20日(水)
https://www.kiyoharu-art.com/