オラファー・エリアソンの京都にちなんだ作品も発表! アート・フェア「Art Collaboration Kyoto」が開幕

  • 写真・文:中島良平
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1994年にロサンゼルスで創業し、東京を含む世界16都市に展開するBLUMと、2019年にロサンゼルスでオープンして意欲的に作家プロデュースに携わるMatthew Brownが共同で展示。中央の陶芸作品は浜名一憲、奥の壁面には左からジュリー・ボーフィス、アスカ・アナスタシオ・オガワ、マグダレナ・スクピンスカのペインティング作品が並ぶ。

「コラボレーション」をコンセプトに、2021年に京都でスタートしたアートフェア「Art Collaboration Kyoto(ACK)」が、10月30日までの3日間、開催されている。会場は国立京都国際会館(ICC Kyoto)。市内でも何ヶ所かで連携プログラムが展開しているので、作品の購入を求めて会場を訪れるのに加え、この期間だけの作品体験の場があることも魅力的だ。ICC Kyotoから見ていきたい。

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「同時代性」をテーマに、起業家・投資家の植島幹九郎が2022年2月にスタートした「UESHIMA COLLECTION」の展示風景。展示作家は、手前の彫刻作品を手がけた金氏徹平ほか、ジャデ・ファドジュテミや岡崎乾二郎、松本陽子、山田康平など全9名。ギャラリーの展示販売以外のこうした展示も多彩で見応えがある。

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国内外のギャラリーが共鳴する26のブース。

ACKが提示するコラボレーションは、国内と海外、行政と民間、美術とその他の領域など、さまざまな領域に及ぶ。ICC Kyotoに設けられるのは、日本のギャラリーと海外のギャラリーが共同でブースを運営する「ギャラリーコラボレーション」と、京都にゆかりのある作家や京都にインスパイアされた作品と出会える「キョウトミーティング」のふたつのセクション。

「ギャラリーコラボレーション」には国内外から53のギャラリーが参加するのだが、ACK以外の日本のアートフェアには参加していないようなメジャーなギャラリーも名を連ねていることもあり、ふたつのセクションともに初回から大きな反響を得ている。

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昭和12年に京都で創業した思文閣と、パリのギャラリー、クレヴェクールのブース。小野竹喬や藤田嗣治と、エルンスト・ヨウジ・イェーガーなどが参加し、クレヴェクールの創業者であるアクセル・ディビは、「これこそ洋の東西、時代の新旧をまたいだコラボレーションです」と声を高める。
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小山登美夫ギャラリーは、取扱作家の菅木志雄が韓国・ソウルのジョヒョン・ギャラリーで今年12月に個展を開催する予定もあり、同ギャラリーと共同で参加。中央に菅の作品を設置してブースを設営した。

 

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清澄白河を拠点とするハギワラ・プロジェクツが組むのは、ロンドンのCLAAS REISS。出品作家は、ガブリエル・ハートリー、イェンス・フロバーグ、ダニエル・グレアム・ロクストンの3名。クラース・ラーイスは、「ペインティングをメインに扱う双方の画廊から、自然と打ち消し合わずにハーモニーを奏でる作家の作品が集まった」と笑顔を見せる。

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キョウトミーティングにも豊かなバリエーションが展開。

京都出身や在住の作家はもちろんのこと、京都の数ある美術大学出身者や、あるいは京都の哲学にインスパイアされた作家など、幅広く京都にゆかりのある作家たちを紹介する「キョウトミーティング」のセクション。東京のギャラリーも多く出展し、さまざまなメディアの作品が展示されているが、一番の話題は、やはり先ごろ高円宮世界文化賞の彫刻部門で受賞したオラファー・エリアソンがこのセクションに出品していることだろう。ギャラリーは、ベルリンで1994年に創業したneugerriemschneider。京都の禅寺の庭園に表現された円環の哲学から大きな影響を受け、モチーフに円などを採用するエリアソンの作品を活動初期から扱ってきたギャラリーだ。

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オラファー・エリアソンの作品展示風景より

一方で、京都を拠点に制作を続ける作家たちの作品も充実している。大阪のアートコートギャラリーでは、「具体」の呼び名で近年再評価の著しい具体美術協会の最後の展覧会に出展した福本潮子の藍染作品と、宙空や自然現象をテーマに、ステンレスやチタンの構造美を立体作品に用いる西野康造の立体作品が共鳴する。キョウトミーティングのセクションにおいても、多様なメディアで制作された注目作品の数々が出品された。

 

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アートコートギャラリーの展示風景より
 
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「BEYOND GLITCH」のテーマで企画されたパブリックアートの作家に名を連ねた潘逸舟は、自らのアイデンティティに裏付けられた作品を発表。作家をマネジングするギャラリーANOMALLYは、ジャカルタのROH、パリのFitzpatrick Galleryと参加。ディレクターの浦野むつみは、ひとつのブースで異なるギャラリーの作家の作品が並び、想定外の化学反応が起こるACKの独自性は海外のギャラリストの間でも話題だと語る。

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伝統ある神社仏閣など、連携展示のロケーションも多彩。

ICC Kyoto内のギャラリーの展示も充実しているが、街中の連携プログラムに目を向けるとさらに表現が広がる。京都芸術センターを会場に山中Suplexとの共催で行われているのは、台北を拠点とするアーティスト・コレクティブ・鬼丘鬼鏟(ゴースト・マウンテン・ゴースト・ショベル)による個展『時間的臨摹(じかんのりんぼ)』。来場者は米国製の暗視ゴーグルを装着し、真っ暗闇の空間で歩き回りながら自由にパフォーマンスを鑑賞する。いや、単なる鑑賞ではない。自分がどれだけの広さの部屋で、どれだけの範囲をあるているのかも確信も持てないまま歩き回り、パフォーマーと鑑賞者の垣根がなくなり、鑑賞しながら自分が作品の一部になっていることにふと気付かされる。出演者の身体が動き、音や光(圧倒的に闇だが)を駆使した30分ほどで、暗闇との向き合い方も変わってくるはずだ。

 

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京都芸術センター外観

平安神宮に向かうと、普段は一般公開していない尚美館がインスタレーションの会場になっている。作家は、近年活躍の著しいCOIN PARKING DELIVERY。世界的人気キャラクターであるピンクパンサーをテーマに、TIP drawing(Transformable intellectual property drawing / 変形知的財産)によって制作した作品が展示されている。

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COIN PARKING DELIVERY × PINK PANTHER“ANIMISIM”/“アニミズム” 左に横たわるのがCOIN PARKING DELIVERY。TM&©︎ 2023 MGM / ©︎ CPD

国内外を問わずアートフェアの数が増え続ける現在、独自のプログラムで着実に存在感を高めるACK。アートコレクターはもちろんのこと、これからアートを知っていきたい層までも楽しませ、満足させるこのフェアを秋の京都巡りの目的地に加えてみてはいかがろうか。

Art Collaboration Kyoto 2023

開催期間:2023年10月28日(土)〜10月30日(月)
会場:国立京都国際会館
京都府京都市左京区宝ヶ池

https://a-c-k.jp/