日本初となるイヴ・サンローランの大回顧展が国立新美術館で開催されている。1958年にクリスチャン・ディオールの急逝を受け、ディオールのデザイナーとして21歳で鮮烈なデビューを飾ったサンローラン。1962年には自身のブランドを立ち上げ、2002年の引退まで世界のファッションシーンをリードした「モードの帝王」の表現が、イヴ・サンローラン美術館パリの特別協力により、クチュリエとして手がけた衣服とそのデザイン画はもちろんのこと、舞台芸術などにも及んで網羅されている。
展示は「0 ある才能の誕生」に始まり、「11 イヴ・サンローランと日本」までの計12章とドキュメンタリー映像を上映するシアターで構成。ルック110体も含め、アクセサリー、ドローイング、写真など計262点が展示され、デザイナーとしての人生とその創造の全貌に迫ることができる。

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ファッションは時代遅れになるが、スタイルは永遠である。
1962年に自身のメゾンから初めて発表した春夏のオートクチュールコレクションが、船乗りの作業着に着想した紺のピーコート、白のプリーツパンツ、ミュールを合わせたコーディネートによって幕を開けたことに象徴されるように、同年の秋冬コレクションではイギリスの将校の防水コートに想を得たトレンチコートを、1967年にはアフリカの宣教師のユニフォームをモチーフにしたサファリ・ジャケットを発表したように、男性服の、それもユニフォームをベースに洗練された女性服を創出したサンローラン。展示室の壁面に言葉が示したように、ファッションではなくスタイルとしての表現に取り組み、デビュー時からその評価は高まり続けた。


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創造の原動力となったのは、尽きない好奇心。
この展覧会のハイライトのひとつが、「9 アーティストへのオマージュ」のコーナーだといえるだろう。展覧会メインビジュアルとなっている「カクテル・ドレス——ピート・モンドリアンへのオマージュ」を筆頭に、ゴッホやブラック、マティス、ボナール、ピカソなどの表現の「引用」を通して、画家たちへのオマージュをデザインに込めた。
私の目標は巨匠たちと自分を比較することではなく、最大限彼らに近づき、その才能から学ぶことでした。(展覧会図録より)
生前にそう語っていたように、引用を通して画家たちの表現に迫り、その平面作品に描かれたものを身体がまとう衣服へと展開するなど、サンローランは多様なアプローチでデザインの新たな次元を探求していた。

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1958年にディオールの跡を継ぎ、62年からは自身のブランドでオートクチュールのコレクションを発表し続けたイヴ・サンローラン。もちろん天性の才能とバイタリティが、「モードの帝王」と呼ばれるまでになった創造の背景にあったのは間違いないだろう。しかし、何よりも尽きぬ好奇心こそがサンローランを突き動かしたのではないだろうか。興味を持った対象を観察し、想像を広げ、手を動かして視覚化する。デッサンが衣服となって人がまとい、動き出したとき、再び創造へのモチベーションに火が着く。展示を通して、天才クチュリエの創造のサイクルを感じ取ってほしい。

イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル
開催期間:2023年9月20日(水)〜12月11日(月)
開催場所:国立新美術館 企画展示室1E
東京都港区六本木7-22-2
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時〜18時
※毎週金・土曜日は20時まで
※展示室入場は閉館の30分前まで
休館日:火
入館料:一般¥2,300
https://ysl2023.jp