ヴィクトリアズ・シークレットがセクシー路線に回帰…その理由とは?

  • 文:山川真智子

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多様性を打ち出したインクルーシブ路線の頃のヴィクトリアズ・シークレット。

ヴィクトリアズ・シークレットは、かつて女性用下着で一世を風靡したファッションブランドだ。特にセクシーなモデルを広告塔として起用したファッションショーで、大きく売り上げを伸ばした。近年は若い世代を取り込むため、性的イメージを払拭し、インクルーシブ(互いの違いを認め共生すること)路線に転換。ところが今年になって、再度セクシー路線に戻る動きを見せている。

時代は変わった…セクシー・イメージを封印 

90年代のヴィクトリアズ・シークレットは、ゴージャスでセクシーな数々の下着を発表。エンジェルと呼ばれていたグラマーで完璧な体型のモデルたちが、それらを身に着け、ショーのキャットウォークを闊歩していた。デイリー・メール紙で執筆する、元ヴォーグ誌の編集者でジャーナリストのフィオナ・ゴルファーは、エンジェルたちは、多くの女性たちの憧れでもあったと述べている。

しかしセクシーさを前面に押し出したきらびやかなショーには批判も多く、2018年を最後に自己検閲的に終了。代わってMeToo、ボディポジティブ、ダイバーシティ、ジェンダー・アイデンティティなどを意識したマーケティングが始まった。

CNNによれば、ヴィクトリアズ・シークレットは、トレンドに乗った新興企業を好む若い消費者を獲得しようと、この2年間、過度に性的なイメージを一新することに費やしてきたという。LGBTの権利擁護活動をする女子サッカー選手のミーガン・ラピノー、トランスジェンダーモデルのヴァレンティナ・サンパイオなどを起用し、「新しい」ヴィクトリアズ・シークレットを打ち出していた。

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社会的評価は得たが…売り上げ減少で危機感

CNNによれば、こうしたインクルーシブ路線への転換はいくつかの成功を収め、評論家からも好意的に評価されたという。しかし問題は、それが売り上げに結びつかなかったことだった。今年度の売上高は62億ドル(約9290億円)と前年度から5%減少し、2020年の75億ドル(約1兆1237億円)を大きく下回る見込みだ。

収益改善のために、ヴィクトリアズ・シークレットはセクシー路線回帰の動きを見せている。投資家向けのプレゼンテーションで、ブランド・プレジデントのグレッグ・ユニは「セクシーさは包括的でありうる」と発言。セクシーとインクルーシブのブレンドは可能だという見方を示した。

英断を歓迎! コア層が求めるものとは?

ゴルファー氏は、ブランド側は細くてかっこいいモデルが敬遠されると思うかもしれないが、いまでも女性たちが求めているのは夢だと指摘。エンジェルたちと同じゴージャスなブラやショーツを身に着けることで、自分もセクシーな気持ちになれるのであり、それがかつてのヴィクトリアズ・シークレットの仕事だったと述べている。

さらにゴルファー氏は、そもそも地上で最もセクシーなブランドの脱セクシー化など、風俗店に讃美歌の本を売れと頼むようなものだと主張。結局のところヴィクトリアズ・シークレットは、コアな消費者に敬遠される今日のボディポジティブなイメージよりも、セックスアピールを優先することに決めたのだとし、この決断に万歳と叫びたいとしている。

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以前よりおとなしめだが、セクシーさを優先した今年のCM。

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スーパーモデル級を起用していた過去のファッションショー

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LGBTで同性愛者でもあるミーガン・ラピノーが起用された際の本人のツイート。

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インクルーシブ路線の頃。

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トランスモデルのヴァレンティナ・サンパイオ。

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