トヨタのフラッグシップ、新しい「クラウン スポーツ」を青木昭夫さんと解剖する

  • 写真:齋藤誠一
  • ヘア&メイク:恩田 希(TRON)
  • 文:和田達彦

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あおきあきお:1978年東京都生まれ。「DESIGNTIDE TOKYO」のディレクターを経て、09年に「MIRU DESIGN」を始動。デザイナーのネットワークを活かし、デザインエキシビションやプロモーションイベントの企画、プロデュース、コーディネートを行う。

10月6日からオーダー受付が開始された「クラウン スポーツ」。年度内には「セダン」と「エステート」も販売開始が予定されており、2022年にデビューした「クロスオーバー」と合わせて、4種類の新型クラウンすべてが出揃うことになる。7、8日の両日には六本木ヒルズアリーナで『CROWN STYLE PARK』イベントが開催され、クラウン スポーツの発表やトークショーに加え、日本最大級のデザイン&アートフェスティバル『DESIGNART TOKYO(デザイナートトーキョー)』とのコラボによる空間インスタレーションによって、ブランドの世界観が披露された。DESIGNART TOKYO発起人であり代表を務める青木昭夫さんに、DESIGNART TOKYO 2023(10月20日〜29日)のオフィシャルカーでもあるクラウン スポーツについて感じたことを語ってもらった。

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取材は富士スピードウェイホテルで行った。ホテルの客室からは、サーキットまたは富士山の景色が楽しめ、写真の離れには専用ガレージ付きのヴィラが5室ある。

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「新型クラウンは、全体的にすごく変わったなという印象が強いですよね」と語る、青木さん。「往年のクラウンと言えば、間違いのないクルマ、成功者が乗る、ステータスがあるクルマの象徴でした。しかし時代が変わっていくなかで、若い世代の人からは“おじさんが乗るクルマ”という印象をもたれるようになってきた。そんな印象をガラリと変えましたね」。初めてクラウン スポーツを見た時、青木さんは直感的に「カッコいい」と感じたそうだ。

 

「まずフロントマスクを見て、シンプルにカッコいいなというのが第一印象でした。一見メインランプのように見える細いライトがウインカーで、その下にあるのがフォグランプに見えて実はメインランプ、というのは近年の流行のデザインだと思いますが、それでいてちゃんとアイデンティティがある。このトレンドのフォーマットの中ではいちばんカッコいいと思います」

 

また全体のフォルムにも感心したという。「造形的な部分を追求したフォルムですよね。特にリアフェンダーまわりが好きです。車両の幅自体は割とキュッとしていますが、リアフェンダーの流れるようなラインによって躍動感が演出されています。“ドライブに行くぞ”みたいな高揚感、ワクワクする気持ちにさせてくれる、スポーティなフォルムですね」

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富士スピードウェイホテルのフロントカウンターおよびラウンジ。

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新型クラウンでは、若手デザイナーがデザインの多くの部分を任されている。「『CROWN STYLE PARK』イベントのトークショーでチーフデザイナーの宮崎満則さんがそう話されているのを聞いて、とても感心しました。時代の風潮であったり、若い人がほしいものについては、若い人のほうが敏感です。そこを年功序列でやっていると、なかなか大胆に変えられないし、デザインに年功序列感があると全然カッコよくないんですよね」と青木さんは語る。

 

「僕自身も、2015年から『あさひかわデザインウィーク』のクリエイティブ・ディレクターをしたことで大きく成長できました。イベントの基礎をつくった旭川の家具メーカー、カンディハウス創業者の長原さんが『出る杭は育てろ』という方針の方だったんです。当時30代の僕によく任せてくれたなと思うのですが、おかげで大胆な企画にチャレンジできました」

 

そして、青木さん自身もそういう姿勢でいたいという。「才能がある若い人はたくさんいるので、そういう人たちに託して、若いうちにちゃんと実権を握ってもらって最前線の経験をさせることによって、さらに才能が開花して、僕らの世代が想像しなかったデザインが生まれます。新型クラウンにもそれが感じられるし、またそういう“若い人に任せていく大人のカッコよさ”みたいなものも、デザインに表れていると思います」

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併設する「富士モータースポーツミュージアム」は、メーカーの垣根を越えて約40台を展示。「歴史を追って変遷に触れられるのはいいですね。走りを追求したクルマの造形は非常に見応えがあります」と青木さん。

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デザインを一新するため、あえてクラウンに対する先入観がない若いデザイナーに任せるという大きなチャレンジを行った新型クラウン。「デザインは挑戦を恐れちゃダメだと思うんですよ。大人数に受け入れられようとしたら無難にならざるをえない。しかしフラッグシップを目指すものはそれではダメなんです。賛否両論分かれたほうがいいんです。業界をリードしようと思ったらリスクはつきもので、そのリスクを逆に楽しむぐらいでないと」

 

フラッグシップに求められるのは、売上よりもブランドバリューのイメージをいかに上げていくかということだと語る青木さん。「その牽引力があるから、ミドルレンジ、ボトムレンジの商品も売れていく。グローバル企業はみんな当たり前のようにやっていることですが、新型クラウンはそういうクルマだと思います。トヨタには他にもさまざまな人気車種がありますが、クラウンはラインアップの本流にあるクルマ。デザインと走る喜びを両立した、みんなが憧れるクルマになると思います」

 

家族でのキャンプが趣味で、おもに積載性を重視してステーションワゴンに乗っているという青木さん。「だから4種類の新型クラウンの中では、実はエステートが気になっています。でも子どもが中学校に上がって一緒にキャンプに行く機会が減ってきたし、もうちょっと走る楽しさを重視したいという気持ちもあるんです。乗る日の気分によってエステートとスポーツからどちらかを選べたら嬉しいんですけどね(笑)」

 

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「TROFEO ラウンジ」では、ホテルオリジナルのコーヒーや紅茶を楽しみながら、床から天井までの大きな窓から雄大な富士山の絶景を眺めることができる。

 

 

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グラマラスなリアまわりのボリュームが特に魅力的に見えるクラウン スポーツのデザイン。

 

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運転席側と助手席側とでアシンメトリーなデザインが特徴のクラウン スポーツのインテリア。「特にレザーシートの質感がよく、カッコいいと感じます」と青木さん。

   

トヨタ・クラウン(スポーツ)

サイズ(全長×全幅×全高):4720×1880×1565㎜
パワートレイン:2.5Lハイブリッドシステム
システム最高出力:172kW(234PS)
最大トルク:221N・m(エンジン)、202N・m(フロントモーター)、121N・m(リアモーター)
駆動方式:E-Four(電気式4輪駆動方式)
車両価格:¥5,900,000(税込)~
問い合わせ先/トヨタ自動車
TEL:0800-700-7700(9〜18時)


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