【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】 第184回““ラジカル”とは哲学なのでR(アール) ! 軽量化をきわめたフレンチスポーツの雄”

  • 写真&文:青木雄介
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専用のフルカーボンホイールを装備。車重1082㎏にして、カテゴリー最速の最高速度285㎞/hを叩き出し た。

フランス生まれのスポーツメーカー、アルピーヌから最上位機種となる「A110 R」が発売された。「R」はラジカルの頭文字で、国内先行販売分の32台はすぐに完売。けれども、カタログモデルとして継続販売されていくらしい。これぞ“エンジンモデルあがりの1台”じゃないですかね。「買いだなぁ」と本気で思ったね(笑)

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布製ストラップなどレーシーな仕様が際立つインテリア。

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理由はミドシップのライトウエイトスポーツとして素晴らしい完成度だし、アルピーヌらしさが全開だということ。アルピーヌらしさとはなにか? と問われるなら、香りとコクが「濃厚な」ダージリンとは一線を画す、朝日を浴びて飲むハーブティーのような「爽やかさ」といった感じかしら(笑)。軽妙洒脱なフレンチスポーツ、その究極型としてスポーツカー好きの記憶に長らく残り続けていくに違いない。

まず、エンジンパワーを増してグレードの違いをヒエラルキーにする仕草がない(笑)。A110 Rがやったことといえば、ライバルよりほぼ300㎏は軽いボディをさらにカーボンに換装し軽量化。

ボンネットにルーフ、さらにホイールに至るまでフルカーボン。その上、エアロパーツで武装し、足回りはダブルウイッシュボーン式のまま20段階車高調整可能なZF製のコイルダンパーを装備した。フレームの強さは際立ち、足回りのしなやかさは当代随一。A110シリーズの美点である“軽さ”を際立たせた走りを、その名の通りにラジカルに追求している。

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サベルト社製6点式フルカーボンバケットシートは見た目に反して非常に快適。

結果、どんなクルマになったかというとコーナリングのコース取りの選択肢が増えたのね。A110 Sと比べると、同じコーナーでも「道幅が広がったんじゃないか」と感じさせるぐらいの違いがある。ステアリングは鋭いもののピーキーさは感じられないし、ミドシップの利点であるバランスのよさを強調した上で剛性を高め、限界性能が広がっている。まるで、水すましの表面張力のように路面に張り付き、高速移動。バレリーナのようなターンが身上で、接地面であるグリップの高さ(ミシュラン・PSカップ2)が生命線でもある。

この精緻なバランスをもってするなら、車両価格1500万超えも高いとはぜんぜん思わないですよ(笑)。どうしてもパワーが欲しいなら、それこそコンピューターを調整すればもう100馬力ぐらいは載せられると思うけど、ぜんぜんいらない。あえてパワーを上げないことに、ラジカルという思想的な価値があるからね(笑)

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ものものしいカーボンエアロビットで武装されている。 

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アクセルを踏み込めば、シフトアップと同時にブローオフバルブの咆哮がエモーショナルに響いてくる。エアロダイナミズムが効いてて、より高い速度域を走るためのスポーツカーとしてランクアップしているのがわかる。もう少し低回転のトルクが欲しいと思うところもあるけど、いかに速度を落とさずにコーナリングし、ラップタイムを稼ぎ出すかというクルマなので、余計なことはしなくていいんじゃないかな(笑)

A110 Rは軽量化という本分を追求しながら、フランスのスポーツメーカーとしての独自性も打ち出している。ハードコアなのに慎み深くて、めっちゃ陽性。諸兄、やっぱり“アガリの1台”って気がしますよ、はい。

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スワンネックのスポイラーにツインウォールテールパイプの組み合わせは、ほぼレーシングカー。

アルピーヌ A110 R

サイズ(全長×全幅×全高):4255×1800×1240㎜
エンジン:直列4気筒ターボ
排気量:1798cc
最高出力:300ps / 6300rpm
最大トルク:340 Nm / 2400 rpm
駆動方式:MR(ミドシップ後輪駆動)
車両価格:¥15,500,000~
問い合わせ先/アルピーヌコール
TEL:0800-1238-110
https://alpinecars.com/ja

※この記事はPen 2023年11月号より再編集した記事です。