アンリ・マティス(1869-1954)は晩年に車イス生活になり、視力が衰えて筆も持てなくなった芸術家。そんな時期にマティスが出会ったのが鮮やかな色紙だった。下書きもせずハサミで図案を切り抜き、紙に貼る手法に活路を見出した。こうして躍動感に溢れパワフルな作品群が誕生。後世のグラフィックデザインにも影響を与え続ける偉大な仕事だ。
この切り貼り絵を代表するのが、1947年に出版された作品集「JAZZ(ジャズ)」。版画手法で印刷された切り貼り絵と、彼の手書き文による270部限定本である。実は本のタイトルの元案は「シルク(フランス語でサーカス)」だった。JAZZの名を提案したのは担当編集者で、最終的にマティスも同意したらしい。ジャズ音楽の即興演奏やパワーが、作品の新しさ(ジャズは当時の最先端音楽)や制作エネルギーを見事に例えたタイトルになっている。
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そんなジャズの切り貼り絵がこのたび、アパレルのジュンが運営するM TO R(ムウ ト アール)により長袖Tシャツとスウェットシャツに姿を変えた。コレクションの図案は3種類で、「道化師」「イカロス」「Two dancers」の有名どころ。とくにイカロスはGeorge Braziller刊の普及本(廃刊)で表紙になっているから、見覚えのある人も多いだろう。まさしく大人趣味のアートTシャツ&スウエットシャツである。
今年の2023年には東京都美術館で、約20年ぶりとされる大規模回顧展が開催されたマティス。しかし同展覧会ではJAZZの切り貼り絵の原本は展示されなかった(本は展示)。手仕事の痕跡を探れなかったのが実に残念だが、没後70周年となる24年2月からの国立新美術館『マティス 自由なフォルム』は、切り貼り絵を中心とする注目の展覧会になる。JAZZの原本を期待しつつ今回のプリントシャツを会場に着ていく……かはともかく、一着は手に入れたい魅力的なコレクションなのがマティス好きの素直な思いだ。
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M TO R
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【画像】永遠のグラフィック、アンリ・マティス「JAZZ」のアートシャツが新登場
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ファッションレポーター/フォトグラファー
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。
明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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