中国の研究チームが9月、動物の歩行を模倣するロボット「Origaker(オリゲーカー)」の開発でロボティクス分野の国際的な賞を受賞した。ロボットは折り紙のようにフレームを自在に折りたたみできる機構となっており、動物のような動きで草原から岩肌までさまざまな地形に適応する。柔軟にスタイルを変化させる本体フレームと4本のアームにより、くねくねと姿勢を変えながら、周囲の環境に対応する。大きさは30cmほどだ。
優れた適応性と移動性が高く評価され、ロボット工学分野の権威ある学術誌『ジャーナル・オブ・メカニズム・アンド・ロボティクス』編集委員会からこのたび、2022年度の最優秀学術論文賞を授与された。100以上の論文から、この分野で最も革新的かつ影響力のある論文として選ばれた。
キューブ状から犬型まで自在に変型
Origakerを開発したのは、広東省深圳市に位置する南方科技大学のロボティクス研究所所長であり、バイオミメティック・ロボティクス・インテリジェント・システム重点研究室の戴建生教授が率いるチームだ。
ボディは6本のフレームが関節で接続されており、接続の角度をモーターで変えることで多様な形態に変化する。最もコンパクト形状は、フレームをすべて折りたたんだキューブ状の状態だ。
フレームを展開すれば、ボディから水平に足が伸びる節足動物のような形態になり、高い安定性と移動能力を両立する。香港の日刊英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』によると、研究チームはこの形態を「垂直の障害物を乗り越えるのに適して」いると説明している。
狭い通路を抜け、多方向への移動もできる
さらに足を垂直に伸ばせば、犬のシルエットを想起させる哺乳類の形態となる。地面との高さを稼ぎ、代わりに幅が狭まった状態だ。チームによると哺乳類の形態は「比較的狭い通路を通り抜ける」際に最適だ。
ほか、フレームを六角形に展開すると、足が4つの別々の方向へ向いたカメのような形状となる。チームが爬虫類型と呼ぶこの形態は、「全方向へ移動性能が高い」のだという。
万一の転倒の際も、身動きが取れなくなってしまうことはない。姿を巧みに変えるOrigakerであれば上下の概念がなく、そもそも転倒や転覆が起こらないようだ。
動画ではこうした状態に備えた「セルフ・リカバリー」機能が紹介されている。カメのような爬虫類型の状態の際、手で意図的にひっくり返しても、5秒ほどの短時間で犬の形態に変化。問題なく歩行を再開する。
コンセプトから20年をかけて研究
サウスチャイナ・モーニングポスト紙によると、戴教授がコンセプトを提唱したのは20年以上前にさかのぼるようだ。人間の細胞の分裂と組み換えに着想を得て、柔軟にスタイルを変えるロボットの研究に着手したという。
ガジェット情報サイトのGiガジェッツは、Origakerの名称が日本の折り紙に由来すると紹介している。折り紙を折るようにフレームを重ね合わせて変型することで、分解や再組み立てをすることなく、複数の作業モードに切り替えられることが利点だ。
建設現場や僻地の探査で活躍?
サウスチャイナ・モーニングポスト紙が動画を公開すると、ロボットと生体を組み合わせたような独特の動きで注目を集めた。将来的に実社会で活用される可能性があるのでは、との指摘から、買えるのなら実際に欲しいという声まで、多様なコメントが寄せられている。
「もし大型のものを製作できれば、実際の建設や探査作業に使われる可能性は無限大だ!」「不気味でありながら、美しくもある。いいね」「(雑多なガジェットが集まる海外通販サイトの)AliExpressのどこで買えますか?」
生体模倣型ロボットの開発に大きく貢献
そのほかコメント欄は、各種SF作品の変幻自在なキャラクターを彷彿とするという声で賑わっている。『トランスフォーマー』シリーズの宿敵「デストロン 」や、『スターゲイト』の敵役「レプリケーター」などを想起させるとの声が聞かれる。
一方で中国の科学技術サイトである科学网は、Origakerをめぐる一連の研究が、次世代の生体模倣型ロボットの開発に向けた強力な基盤を築いたと評価している。見た目にもインパクトがあるOrigakerだが、より大型の個体を開発することができれば、災害救助など厳しい環境で威力を発揮する可能性もありそうだ。
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@gigadgetsofficial This shape-shifting robot can mimic different animals to adapt and move through various terrains. Origaker is a bio-like, multi-mimicry quadruped robot that can change its structure to imitate different animals. Inspired by and named after origami, the robot can adapt and move through various terrains by constantly changing its configurations. Developed by a research team at the Southern University of Science and Technology in Shenzhen, China, Origaker is the first robot of its kind that can switch between different working modes without disassembly and reassembly, making it a highly versatile and adaptable robot that could be used in various applications, even in difficult and hazardous environments. #gigadgets #engineeringlife #scienceiscool🤟🤟 #roboticstok #innovations ♬ Technology (middle) - TimTaj
人間の手元から離れても、リモート操作で指示通りに変型する。
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